いなくなるということ

先日ガンで亡くなった友人のご自宅へお線香をあげにお邪魔した。
もうずいぶんとまえから一緒に暮らしている人がいると聞いて
いたが、お会いするのは初めてで、言葉のかけようがなかった。
やっと籍を入れたのが先月１５日という。亡くなったのが
その約１５日後と言うことになる。

友人は写真の中で笑っていた。実感がわかない。そこにいて
「こんちは、どうしました？」と出てきそうだ。

頭の中では人が死ぬということは、ひとつの相であると考えている。
がしかし、知った人間がいなくなってしまうということは、とても悲しい。
私の”考え”など関係なく悲しい。
何も出来なかったことが悲しいわけではない。出来るはずもなかったのだし。
そこにあった存在がいなくなるのが悲しい。

別の友人で”ボランティア”をよくやっている人がいる。
その人のサイトでとても珍しい病気をもって生まれた日本人の赤ちゃんを助けたい
と訴えていた。募金を募ったり、その友人自身も街頭にたったりしたという。
私はそのことを評価しない。その赤ちゃんは生まれたこと自体が奇蹟で
現代医療がなかったら生まれることすら出来なかった。
それを生かしていくテクノロジーはいったいなんなんだろう。
その募金のお金があればアフリカなどの子供達が何十人と救えるだろう。
ここに横たわるのは圧倒的な貧富の差、テクノロジーの差なのだろう。
その友人はアフリカには目を向けずなぜたったひとりの赤ちゃんに目を向けたか。
そのことが私には理解できず、友人を評価できない。

これは知っているまたは身近な人間とそうでない人間の差なのだろうか。
私も亡くなった友人には悲しさを覚えるが、アフリカの子供達のことを
同様に思うことが出来ない。
たぶん、私もボランティア友人も同じ次元なんだろう。
ただ、私にはその赤ちゃんもアフリカの子供達も同次元に見えている。

私は地球レベルで世界を見ることは出来ない。
この狭い私の世界を平面的に見るのが精一杯なのだ。
それでも、それを解った上で、私は亡くなった友人を想う。