5月1日はメーデー・デモなどで各地で物騒な暴動が起こったりすることもありますが、同じ日の行事とは思えないのほほんとした話題を今日はご紹介したいと思います。
ドイツ全国に広がっている風習ではありませんが、私が住みついているライン川流域を始めとするドイツ西部では5月1日(またはすでにその前日)に白樺の木を意中の女性の住む家の玄関前あるいは窓の下に立てる習わしがあります。送り主が分かるように樹皮に名前を直接彫ったり、ハート形の札に名前を書いて、木に括り付けます。そのように立てられた木をマイバウム(Maibaum、【五月の木】)と呼びます。マイエン(Maien)とも言われます。上の写真はその一例です。ボン近郊のケーニヒスヴィンターという小さな町で撮影されたものです。
余談ですが、私自身はマイバウムを一度も貰ったことありません。昨日、ダンナが街でマイバウムを見かけて、「ごめん、今年もマイバウム忘れちゃった」などと言い訳してましたが。一緒に住み始めて22年、結婚18年目になってまあ今更ですよね( ´∀` )
毎年森から不法に白樺切り出されることが絶えないとか。こうして立てられたマイバウムは1か月後、6月1日に送り主が引き取りに来ることになっています。ものがものですので、意中の彼女に前以て意向を聞いておくことが多いようです。やはり突然そんなものを家の前に立てられたら邪魔で迷惑ですし、求愛行為に等しいものが1か月間も人目に曝されるとなるとかなり恥ずかしいものがありますよね。
贈り主がマイバウムを引き取りに来た際に、意中の彼女の母親から食事に招待されたり、父親にビールの箱詰めをお返しされたり、あるいは意中の彼女本人からキスをもらったりするそうです。
地域によっては村の独身男性全員で村の独身女性の住むところに片っ端からマイバウムを立てるところもあるようですが… 一人の女性のためにする方が可愛げがありますよね。
さて、このマイバウムの起源は諸説ありますが、まだゲルマン人がキリスト教に改宗する以前の森の女神を祀る儀式が元になっているのではないかと言われています。この愛の告白としてのマイバウムがある地域は限られていますが、5月1日に木を飾って、町の広場に立てるという慣習はノルトライン・ヴェストファーレン州、フランケン(バイエルン州北部)、バーデン・ヴュルッテンベルク州、東フリースラント、オーストリア、チェコにも見られます。
キリスト教改宗後の中世辺りでは非キリスト教的な風習は徹底的に弾圧されたため、マイバウムも地域によっては名称を変えマリエンバウム(Marienbaum、【マリア様の木】)またはプフィンストバウム(Pfingstbaum、【ペンテコステの木】)と言われ、木を立てる時期にもずれがあります。北欧では夏至の日に行うことが多いようです。
下の写真はミュンヘンのヴィクトゥアリエン市場に立てられたマイバウムです。バイエルン州のシンボルである青と白で飾り立てられています。こちらの方はお祭りの一環として立てられているので、上の写真のような愛の告白的な意味合いは全くありません。
今年は5月1日が日曜日に当たってしまいましたが、ペンタコステが近く(5月15・16日)、祭日が多いので、嬉しい限りです。日本でもゴールデンウィークですね。素敵な日々をお過ごしください。