有川浩尽くしはまだまだ続いています。
『阪急電車』(幻冬舎文庫)は阪急電車今津線にまつわる短編集。宝塚駅から西宮北口駅、そして折り返し西宮北口駅から宝塚駅まで、一駅ごとに一つのエピソードが綴られています。それは、寝取られた女性の結婚式への討ち入りであったり、その彼女の立ち直りの過程であったり、図書館通いする男女の学生の出会い・恋の始まりであったり、祖母と孫のたわいもないやりとりであったり。様々なエピソードが有機的につながって、今津線沿線の群像のようなまとまりがあり、電車という舞台ならではの雑多さが見事なタッチでほのぼのと描き出されています。
エピソードはどれも日常的にありそうな話ですが、それぞれのエピソードの主人公たちが各々何らかの【気づき】を得てちょっぴり前に進んでいく感じは、読んでいて気持ちがよく、有川浩の鋭い観察眼と人々の営みを温かく見守る視線が現れています。癒される作品ですね。お勧めです。