世間ではイギリスのEU離脱の話題でもちきりです。日本語メディアでもかなり取り上げられているので、私なんぞが出張って私見を述べるまでもないと思いますので、地味ですがドイツで本日発表された2015年度憲法擁護庁白書について書きたいと思います。
憲法擁護庁白書は自由民主主義的原則にとっての脅威について報告するもので、政治的過激派、テロリズムあるいはスパイ行為による危険を明確にします。2015年度白書の概要(Kurzfassung des Berichts)は内務省サイトからダウンロードできます。
ドイツ連邦刑事庁は2015年、38,981件の政治的動機による犯罪を確認しました。これは前年比19.2%増加です。うち民衆扇動罪は13,687件(35.1%)。2014年の12,543件(38.4%)に比べて絶対数は増えているものの、政治的動機犯罪全体に占める割合は減少しています。それに対して暴力行為の割合が明らかに増えています。どの方向性であれ、過激派シーンは人気が高まっており、暴力犯罪も激化しているとのことです。
「…外国人排斥的な扇動が我々の社会の中心に到達するのが心配される。憲法擁護庁は警戒を強め、連邦および州の公安機関との協力を密にしている。」とドメジエール内相。
右翼の犯罪
右翼過激派をバックグラウンドとする犯罪は21,933件(2014年:16.599件)で、うち暴力行為は1,408件に上り、2014年度から42.2%増加しています。外国人排斥的な暴力行為は918件(2014年:512件)で、「政治的動機犯罪」の定義を2001年に導入以来の最高記録となりました。
左翼に対する暴力犯罪は252件で、前年比82%増。それ以外の政敵に対する暴力犯罪は82件、36.7%増。
殺人未遂は8件ありました(2014年:1件)。
左翼の犯罪
左翼過激派をバックグラウンドとする犯罪は5,620件(2014年:4,424件)で、うち暴力犯罪は1,608件(2014年:995件)。左翼過激派による警察や公安局に対する暴力犯罪は1,032件に登り、前年比62%増加しました。また右翼などの政敵に対する暴力も883件で、前年の約2.3倍でした。
国あるいは国の象徴に対する暴力犯罪は572件(2014年:326件)でした。
殺人未遂は8件(2014年:7件)。
外国人による政治的動機犯罪
外国人過激派による犯罪は1,524件、うち暴力犯罪は235件でした。このカテゴリーでは前年比24.3%減少しましたが、暴力犯罪に限った減少率は9.3%に過ぎません。
殺人未遂は3件(2014年:6件)。
ドイツからシリアやイラクの戦闘地域に向かうイスラム原理主義者の数は減少しましたが、国内のサラフィー主義者は18.7%増加し、過去最高の危険人物数となりました。
「公安当局は引き続きシリア・イラクへの出国計画を徹底的に阻止する構えだ。現地で戦闘経験を積み、最悪の暴力行為を体験しかつ自らも行った人たちは、ベストケースで幻滅して、ワーストケースで非常に過激化してドイツまたはヨーロッパに帰還してくる。彼らが我々の社会に戻る道を探している場合は我々の支援を必要とする」とドメジエール内相。