徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:海棠尊著、『新装版 ナイチンゲールの沈黙』(宝島社文庫)

2016年06月29日 | 書評ー小説:作者カ行

『ナイチンゲールの沈黙』(上・下)「チームバチスタ(田口&白鳥)」シリーズ第2弾は随分前に人に借りて読んだことがありますが、上下巻をまとめた新装版が出ていたので自分で買って読んでみました。この作品が元は『螺鈿の迷宮』と一つの話だったのが、複雑になり過ぎたために二つの物語に分離して完成されたもの、ということは覚えていたのですが、話の筋はすっかり忘れていました

タイトルのナイチンゲールが暗示する通り、歌姫のお話です。とは言え職業歌手ではなく、歌の上手な看護師ですが。この歌姫看護師浜田小夜の担当は網膜芽腫の子どもたち。看護師長猫田の差配で不定愁訴外来の田口公平が彼らのメンタルサポートをすることに。患児の一人はすでに中3の牧村瑞人で、彼の父親は治療の承諾を拒否し、呼び出しにも応じない、ネグレクト。そんなある日瑞人の父親が殺され、しかもバラバラに解剖されてしまった!

捜査を担当する加納達也、通称デジタル・ハウンドドッグはデジタル・ムービー・アナリシス(DMA)という技術を駆使して検挙率を挙げている警察庁からの出向者。この方は他の海棠作品にも登場します。彼の補佐をするのは玉村誠警部補。このキャラは独立した作品『玉村警部補の災難』にもなっている味わい深い人物です。

メインの田口&白鳥コンビばかりでなく、様々な人物が色々なところで活躍するのが海棠ワールドの面白いところだと思います。『ナイチンゲールの沈黙』は海棠ワールドの中では重要なエピソードです。

この『ナイチンゲールの沈黙』は単独のミステリーとしてはちょっと?なところがあります。小夜の歌が聞く人に共感覚を呼び起こし、彼女のイメージをそのまま伝えることができる、という能力をどう捉えるかにも好みが分かれるところなのではないでしょうか。ミステリーとしての緊張感は『チームバチスタの栄光』や『アリアドネの弾丸』に比べると劣っていると感じました。

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