徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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ドイツ:世論調査(2018年3月16日)~大連立をそこそこ支持

2018年03月17日 | 社会

昨年9月の連邦議会選挙から半年、ようやくドイツに新政府が誕生しました。政府成立にかかった時間は史上最高となりました。「大連立(Große Koalition = GroKo)」と呼ばれるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)とドイツ社会民主党(SPD)の3党連立政権第3弾となります。3月16日にZDFのポリートバロメータという世論調査では、国民がこの新政府についてどう考えているのかが主なテーマです。

大連立

3期目の大連立政権となることをいいと思う人は45%、よく思わない人は38%、「どうでもいい」は15%。
参画している政党内でも特にSPD内では大連立に対する見方が厳しく、大連立支持はたったの58%です。連立契約に賛成か反対かで寸前まで党内を二分する議論がされただけあって、党内の分断がまだ修復されていないようです。

大連立を「停滞」と見なし、メルケル首相を敵視する右翼ポピュリズム政党であるAfDの支持者たちの大連立支持率は当然一番低いのですが、それでも9%の人が支持しているのがちょっと驚きです。

政府の顔ぶれには45%の人が「満足」と答えており、「不満」と答えた31%を上回っています。また、政府内の協働が「うまくいく」と答えた人が半数で、「うまくいかない」の44%をわずかに上回っています。

大連立政権がドイツの問題解決に重要な貢献をするかどうかについては、意見が真っ二つに分かれ、「はい」も「いいえ」も48%の横並びになっています。「ドイツの問題」をどれだけ切実に感じているかで見方が変わるのではないかと思います。切実に感じていれば、大連立政権には大して期待できない、大きな変化は望めないというふうに考えるのが自然でしょう。切実さがなければ、大連立政権でも「まあ、そう悪くはならない」と考えられるのではないかと。

大連立政府が次の連邦議会選挙まで持つかどうかについては、70%の人が「持つ」と答えています。

大連立が長期的にSPDに悪影響をもたらすかどうかについては、「害がある」の50%が「メリットがある」の41%を上回っています。SPD支持者の間でも「害がある」という回答が49%で、「メリットがある」の45%をわずかに上回っています。

 

メルケル首相

今回で任期4期目に入るメルケル首相ですが、首相選出の投票では必要票数をわずか9票上回っただけの得票で、連立与党内の34人が彼女に投票しなかったことになり、権力基盤は盤石とは言い難いです。

メルケルが再び首相になることを55%の人が肯定的に見ており、否定的な41%を上回ってはいるものの、その差は小さいと言えます。ただし党内支持率は85%で、盤石と言えます。

メルケル首相4期目に対する見方を支持政党別に見ると:

CDU/CSU 85%
SPD 55%
AfD 16%
FDP 46%
左翼政党 33%
緑の党 53%

メルケル首相は意外にも緑の党の支持者にも人気があるようですね。

貧困問題

新しく厚生相に就任したイェンス・シュパーン(37、CDU)が「ハルツ4(就労可能者のための生活保護)の受給者は貧乏ではない」と発言したことで物議を醸し、彼にハルツ4の基本支給額で1か月生活することを求めるオンライン署名運動に約14万筆が集まっているほど、ハルツ4が現在ホットな話題なので、ポリートバロメータでもそれが生きるために必要なものに十分かどうかという質問がなされました。

「十分ではない」という回答が55%で、「十分」と答えた37%を大きく上回りました。

支持政党別に「十分」という回答の割合を見ると、保守(CDU/CSU)、右翼(AfD)そして自由民主党(FDP)にその割合が随分と多いようです。貧困に対する理解が少ないのでしょうね。

 

貧困問題とは少しずれますが、男女間の収入格差をなくすことを掲げる3月18日のEqual Pay Dayに合わせて先日ドイツ連邦統計局が発表したところによると、2017年度のドイツにおける男女間の収入格差は21%で、女性は男性に比べて時間当たり4.41€少ない給料をもらっているとのことでした。その傾向は旧西独の方で強く、22%でしたが、旧東独では男女格差は7%だけでした。

世論調査では、「女性と男性は同じ業務に対して同じ給与をもらっているか」という質問に対して87%の人が「いいえ」と答えました。

連邦議会選挙

もし、次の日曜日が連邦議会選挙なら、どの政党に投票しますか:

CDU/CSU(キリスト教民主同盟・キリスト教社会主義同盟) 32%
SPD(ドイツ社会民主党) 19%
AfD(ドイツのための選択肢) 13%
FDP (自由民主党) 9%
Linke(左翼政党) 11%
Grüne(緑の党) 12%
その他 4%

1998年10月以降の連邦議会選挙での投票先回答推移:

 

政治家評価

政治家重要度ランキング(スケールは+5から-5まで):

  1. ヴォルフガング・ショイブレ(元財相)、+2.0(↑)
  2. ジーグマー・ガブリエル(元外相)、+1.5(↓)
  3. アンゲラ・メルケル(首相)、+1.4(→)
  4. チェム・エツデミール(元緑の党党首)、+1.0(↓)
  5. ホルスト・ゼーホーファー(CSU党首・新内相)、+0.3(↑)
  6. サラ・ヴァーゲンクネヒト(左翼政党党首)、+0.3(↑)
  7. マルクス・ゼーダー(新バイエルン首相)、+0.2(↓)
  8. クリスティアン・リンドナー(FDP党首)、+0.2(→)
  9. アンドレア・ナーレス(SPD新党首)、+0.1(↓)
  10. マルチン・シュルツ(SPD前党首・前欧州議会議長)、-0.1(↓)

経済

ドイツ経済の絶好調ぶりは世論調査にも表れており、昨年秋の数値よりもさらに良くなっています。

ドイツにおける一般的な経済状況:

いい 67%
悪い 5%
どちらでもない 27%

自分自身の経済状況:

いい 67%
悪い 6%
どちらでもない 26%

 

参照記事:

ZDF Politbarometer, 16. März 2018, "Verhaltene Zustimmung zur Großen Koalition(大連立の支持率は大きくはない)"

Pressemitteilung Nr. 099 vom 15.03.2018, "Verdienstunterschied zwischen Frauen und Männern in Deutschland 2017 bei 21 %(2017年のドイツにおける男女間の収入格差は21%)"


ドイツ:2017年連邦議会選挙結果


書評:ダン・ブラウン著、『Origin(オリジン)』(Transworld)

2018年03月17日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

ダン・ブラウンの最新作『Origin(オリジン)』(Transworld)は昨年10月に発売されてすぐに電子書籍で買っておいたのですが、あまりにも本を買いだめし過ぎてて、結局日本語の翻訳が出る頃になってようやく読むに至りました。

ダ・ヴィンチ・コード』や『インフェルノ』でお馴染の宗教象徴学者ラングドン教授を主人公にしたシリーズ第5弾。舞台は主にスペインのビルバオとバルセロナで、謎の死(ラングドンの元教え子で人類最大の謎を解き明かす映像を発表するはずだったエドモンド・カーシュがイベントの最中に額を撃ち抜かれて死亡)があり、ラングドンが解くべき謎(映像発表のための47文字のパスワード)を美人さん(未来のスペイン女王にしてグッゲンハイム美術館のイベントで司会役を担当するアンブラ・ヴィダル)と共に王室警備や現地警察及びカーシュを殺害したキラーに追われながら解くというお馴染のパターンが展開されています。

宗教と最新科学の関係をテーマとしているところは、シリーズ第3弾の『ロスト・シンボル』に共通しています。ただし、今回ラングドンが解くべき謎は象徴学とはおよそ関係のない47文字の詩の一節をそのまま使ったというパスワードなので、別に彼が活躍しなくてもよかった感じがします。そろそろシリーズとしては限界なのではないかと思いますね。

またサイエンス色が濃いため、ミステリーと言うよりはSF小説という印象の方が強いです。現在のAIの発展には目を見張るものがありますが、本作品に登場するウインストンというイギリス英語を話すAIはまだ「未来の可能性」に過ぎません。このウインストン・チャーチルから名前を取ったAI「ウインストン」が重要な役割を果たすので、SF色が濃厚になるわけです。

さて、エドモンド・カーシュは世紀の発見の発表前に、その影響力を検討するために宗教界のトップスリー(キリスト教、ユダヤ教、イスラム教)の代表者たちと会談してます。その3人のうちの2人が殺されてしまいます。カーシュ自身はアヴィラという元海軍司令長官に殺害されるのですが、アヴィラは「The Regent(摂政)」を名乗る者から受けた指示を実行しただけなので、背後関係は不明です。アヴィラはイベント開始直前にスペイン王室からの電話での指示で参加者名簿に加えられたらしいので、カーシュ殺害に王室がかかわっているのか、現国王と親しく、またカーシュと会談して殺されなかったキリスト教司教ヴァレスピノが関わっているのか否か。王室内部から陰謀論ニュースサイトに情報を流しているらしい「monte@iglesia.org」とは誰なのか、などラングドンの得意とする象徴学とは全く関係のない謎が多く散りばめられており、ラングドンの特性にこだわらなければミステリーとして十分に楽しめる作品です。実在するロケーションや団体を綿密に取材して作品に登場させているところも魅力の一つです。

また、カーシュの発見である人類最大の問い「我々はどこから来たのか、どこへ行くのか」に対する回答も興味深いです。宇宙のエントロピーの新理論?( ゚Д゚) ただこの関係で作中に引用されているスタンフォード大学の物理学者ジェレミー・イングランドは、作品発表後ウォールストリート・ジャーナルに「ダン・ブラウンが神を否定するために自分を引用するのは不本意」と表明していますけど。イングランド自身は敬虔なオーソドックスのユダヤ教徒です。彼のその宗教的立場はそのまま作品に反映されているので、そこは問題ないと思いますが、イングランドの理論からインスピレーションを受けたコンピュータサイエンティストのカーシュが出した結論はまさに神を否定するものなので、それがイングランドのお気に召さなかったということなのでしょう。そこはフィクションだから大目に見たらいいのにと思わなくもないですが。それに、カーシュの結論はともかく、ラングドンの立ち位置は宗教自体を否定するものではなく、既存の創世記の記述は間違いであっても、違った形で、人間の理解の及ばない形での「創造」はあったのではないかと匂わせるものなので、原理主義者には受け入れがたいスタンスでしょうけど、必ずしも無神論ではありません。

それにしても、ダン・ブラウンはまだラングドンを書くつもりなんでしょうか?

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