徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:辻村深月著、『冷たい校舎の時は止まる』上・下(講談社文庫)

2018年05月07日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『冷たい校舎の時は止まる』上・下(講談社文庫)は辻村深月のデビュー作であったノベルズ版を加筆修正した作品です。『ロードムービー』に収録されている『雪の降る道』を先に読んでいるとデジャヴュを感じますが(みーちゃんとヒロくん、そしてスガ兄が大きくなって再登場)、こちらが先で、『雪の降る道』はスピンオフ作品なのでしょう。

主人公の名前が著者と同じ【辻村深月】なので、もしかしたら本人の高校時代の実体験をベースにしたお話しなのかなと思えなくもないです。

ある雪の日に普通に登校したはずの高校生男女8名がなぜか彼ら以外誰も居ない校舎に閉じ込められることでストーリーが始まります。どうやら2か月前、学園祭最終日に屋上から飛び降り自殺した生徒の精神世界に巻き込まれたらしく、その生徒はこの8人の中の一人らしいという推測を立てますが、みんなの記憶がいじられているらしく、一体自殺したのは誰だったのか、みんな顔も名前も思い出せない状態で苛立つ中、一人、また一人と記憶を取り戻してその世界から去っていきますが、その後には血塗れになった人形や、壊れた人形などが残されるため、残った子たちは否応なくいつ自分の番が来て、何が起こるのか不安になります。この世界の「ホスト」はみんなに自殺した生徒を思い出させ、責任を感じて欲しいようですが… 果たしてこの「ホスト」とは誰なのかーというサスペンスたっぷりのミステリー小説です。

ただ、彼ら彼女らが対峙する過去の体験やそれに対する心情、自責の念や自己否定感などのテーマは重く、結末は一応ハッピーエンドと言えるでしょうが、そこに至るまでに重さにめげてしまう人もいるかもしれません。

また、エピローグで鷹野博嗣(たかの ひろし)が深月を苦しめた角田春子の姿を遠い西の街で見かけるというくだりはなんだか納得がいかないシーンです。それの意味するところは何か、と不信感しか抱けませんでした。残念。

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