1993年~1995年にかけて書かれた『ボディーガード工藤兵悟』シリーズは『ナイトランナー』『チェイス・ゲーム』『バトル・ダーク』の3編で完結していたのですが、17年後の2012年に復活し、第4巻『デッド・エンド』が加わりました。
商品説明
世界の戦場で戦ってきた工藤兵悟は、その優れた格闘術と傭兵経験を活かしてボディーガードを生業としている。ある日、工藤の元に、水木亜希子と名乗る女が現れた。かつての仲間の紹介で、依頼を持ちかけられた工藤だったが、直後彼女を狙う男たちに襲撃されてしまう。依頼は、謎に包まれた機密文書と彼女自身を死守すること--期限は3日間。だが、彼女を追ってきた敵は、世界最大の諜報機関CIAだったのだ。警察とCIAを敵に回し、工藤は彼女を守り抜くことはできるのか。傑作冒険サスペンス。
商品説明の通りハードボイルドで、著者の格闘家としての知識・体験が存分に生かされたシリーズと言えます。「傑作」と言えるかどうか迷いがありますが、読者をけん引していく筆力は確かで、時間を忘れて一気読みしてしまうだけのエンタメ性の高い作品であることは確かです。
いろいろと迷いはあるものの、結局闘いの中で最も生き生きする男・工藤兵悟の物語。
第2弾の『チェイス・ゲーム』では、傭兵時代の戦友であるアル・ソラッツォが、マフィアに追われ、工藤に助けを求めてきます。工藤はこれを断り、山岳ゲリラ戦を得意とするアルを、山中に逃したのですが、今度は彼が住処とするバー『ミスティー』のバーテンダーの黒崎と第1弾で工藤に助けられて以来、そのバーで働くようになった水木亜希子が人質に捕られ、マフィアからアルを3日間で探し出すように脅迫を受けてしまう。
監視役のマフィア二人を伴ってアル追う羽目になった工藤を裏切り者として返り討ちにするアル。アルは追いかけっこを楽しんでいる様子で、工藤と二人のマフィアを片付けようとはしない。マフィアがアルを追う理由は何なのか、工藤はアルを捕まえて人質を解放できるのか。
一方、『ミスティー』に軟禁状態になっている黒崎と水木亜希子もただ大人しく待っているばかりではありません。こちら側の見張り役を担っているマフィアたちも一枚岩ではなく、それなりの騒動が起こります。
第3弾の『バトル・ダーク』では、国際ジャーナリストの磯辺良一が誘拐されます。自身の著書である『イスラムの熱い血』のせいで、イスラム組織を名乗る犯人たちから死刑宣告を受けるものの、なぜか暗殺ではなく誘拐され、百万ドルの身代金が出版社に対して要求されます。磯辺を警護していた傭兵時代の旧友ウォルターから、人質の救出を依頼された工藤兵悟は、最初は断ったものの、結局引き受けて警察とは別に独自の捜査を始めます。
警察は対誘拐犯マニュアルに従って捜査し、犯人の検挙と人質の救出を第一に考えており、その方法が国際テロリストには全く通用しないというウォルターたちの見解を全く認めないという頑迷さを発揮し、磯部の監禁場所を包囲して大きな犠牲を出してしまいます。
工藤は十分な武器を調達してから、『ミスティー』のバーテンダー・黒崎と水木亜希子を後方支援として磯部の監禁場所へ向かい、戦いのプロである敵と壮絶な戦いを繰り広げることになります。
「特殊防諜班」シリーズでも登場した退役軍人で秘密裏に武器商を営むラリーがここでも武器と情報の提供者として登場します。シリーズを跨ぐ安定の脇役ですね。
17年後に出た続刊の『デッド・エンド』では、時代は変わって、『ミスティー』は店をたたみ、工藤はマンションを買って独り暮らしし、相変わらずボディーガード業を営んでいますが、警備の仕事自体も減っており、懐具合がかなり厳しい状態。
そんな時カジンスキーというロシア人から高報酬の仕事の依頼を受ける。その内容は、工藤の同僚兵士だったマキシムを殺した敵からカジンスキーの命を日本滞在中の3~7日間だけ守りぬけというもの。マキシムが殺されるような敵に自分が対峙できるのか年をとった工藤は躊躇するもののボディーガードとしてのプライドを賭けて仕事を真っ当しようとします。
その敵とは、『曙光の街』シリーズのヴィクトル。彼の襲撃を3回防いだ後、ヴィクトルの方から工藤に接触し、驚くべき情報を提供する。ヴィクトルの真の意図は何か?
『デッド・エンド』は以前の3巻よりも格段に面白いストーリー展開です。戦闘シーンもそちらの専門家に言わせれば、かなり磨きのかかったもののようです。私は戦闘シーンは深く考えずに軽く読み流してしまい、ストーリー展開とキャラ描写を楽しむ方なので、判断しかねますが。
ヴィクトルの登場する『曙光の街』シリーズは未読なので、近いうちに読もうと思います。
今野敏は多作なので、なかなか作品を制覇できませんね。
安積班シリーズ
隠蔽捜査シリーズ
警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ
ST 警視庁科学特捜班シリーズ
「同期」シリーズ
横浜みなとみらい署 暴対係シリーズ
鬼龍光一シリーズ
奏者水滸伝
マル暴甘糟シリーズ
その他