
商品説明:
単身赴任中の父と3か月を過ごすため、高校生の瀬里琉唯(るい)は母・妹とともにウクライナに来た。初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。しかし新型コロナウイルスの影響で一家は自宅から出ることができない。帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。
琉唯という17歳の女子高生の視点で描かれているため、背景の分析のようなものは一切なく、「見たまんま」の情景描写が続きます。激しい爆撃・銃撃の中逃げまどい、英語も少ししかできず、わずかの挨拶程度のウクライナ語を知っていても満足に通じず、途中家族ともはぐれてしまった焦燥感と恐怖が真に迫っています。
著者は実際にウクライナから帰国した人たちに聞き込むなどして、現実のシーンを可能な限り忠実に再現したとのことなので、ウクライナ現地の状況の一端が知れるルポルタージュとしても読み応えがあるのではないかと思います。
九死に一生を得た瀬里一家にポーランド国境で身柄を引き受けに来た在ポーランド日本大使館員の言葉が空虚に響くエンディングも非常に説得力があるものでした。
在外邦人の保護のために大使館はさほど動かないし、「多少の漏れ」があってもたいして気にしない。全て「自己責任」で済ます風潮がそのまま作品にも現れていて、納得するものの、救いがないので読後感はそれほど良好ではありません。
小説を読んだというよりはノンフィクションドキュメンタリーを読んだ感覚の方が強いです。

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