『ビブリア古書堂の事件手帖 扉子と不思議な客人たち 』はスピンオフの短編集で、ビブリア古書堂店長の篠川栞子と五浦大輔の娘扉子(7)に栞子が語り聞かせる過去の事件の概要という形が取られています。
母親同様に本の虫で、本に関することには妙に感が働く扉子になんとか本の世界ばかりではなく、本物の人との関わりに興味を持ってほしいという栞子の苦心と、そんなこととはつゆ知らず屈託なく「ご本」を信奉する(つまり母の伝えようとしていることがまったく通じていない)扉子のはつらつさが面白い対照をなしており、ふふっと笑わずにはいられない語り口です。
極端な人見知りをする栞子に対して、本好きの人はみんな善人と思い込んで、誰かれなく物おじせずに話すことができ、かつ「じゃあ、私はご本を読むから」とあっさり人を置いてきぼりにできる扉子は外見と本好きという点を除けば全く違うキャラで面白いです。扉子が将来どんな人生を歩んでいくのか楽しみになるような、心温まるスピンオフでした。
そういえば、本編の方の書評を書いていなかったことに今気づきました(笑)本編は7巻あり、古書にまつわる探偵物語みたいな感じですね。特に稀覯本には数百万円の価値があったりするので、それを巡る争いも起こりますので、十分に「事件」がおこる環境です。古書に関する知識と古書業界に関する知識がふんだんにちりばめられ、特に古書に関する知識が謎解きの重要なキーとなることが多いです。そうした緊張感溢れる事件の合間に店長の栞子と店員の五浦大輔のなんとももどかしい一向に進展しない関係(ほぼ五浦大輔の片思いみたいなのに、後の方になると栞子の方も結構?)も見ものです。まあ、最終的に二人は結婚するわけですけど、「まあ、うぶだこと」と思わずニヤニヤしてしまうのもこの作品の魅力の一つではないかと思います。