この『マドンナ』(初版2005年、電子書籍版2014年発行)は何と言うか「おじさんの小説」です。
表題作他「ダンス」、「総務は女房」、「ボス」、「パティオ」の短編5編が収録されてますが、どれも40代の中間管理職男性が主人公で、「マドンナ」は若い女性部下に懸想する話、「ダンス」はダンサーになるという息子の将来に悩む話、「総務は女房」は暇と言われる総務課に休憩がてら配属されて、そこにはびこる悪を見逃すか否か悩む話、「ボス」は女性の新任部長の下で部次長を務め、彼女にライバル意識を燃やす男の話、「パティオ」はパティオと呼ばれる「港パーク」の集客改善を担当する男と人のいないパティオで読書をする老人の話。
残念ながら、あまり主人公に感情移入はできない話ばかりですが、退屈とかつまらないという程ではなく、男性作家の書くエッセーを読むような感覚で興味深く読むことができました。特に感動したとか、面白いと思ったということもありません。なんとなく「ふーん」と納得した感じです。男性読者ならもっと共感とかあるのかも知れませんが、私にとってはこの短編集はいまいちでした。
女性を主人公にした短編集である『ガール』の男性版なのでしょうか。