アガサ・クリスティーのポワロシリーズの最初の3作を合本にした電子書籍を買い、最初の1作『The Mysterious Affair at Styles(スタイルズ荘の怪事件)』(1920)を読みました。この作品はアガサ・クリスティーのデビュー作でもあります。
Hercule Poirot(エルキュール・ポワロ)の友人であるArthur Hastings(アーサー・ヘイスティングズ)が語り手で、彼が第一次世界大戦中に負傷し、イギリスに帰還した際に旧友のJohn Cavendish(ジョン・カヴェンディッシュ)の招きに応じてエセックスのスタイルズ荘に滞在することになった時に起こった事件ージョンの義母Emily Inglethorp(エミリー・インゲルソープ)の毒殺事件ーの解決に至る経緯を物語ります。富豪のエミリーは20歳年下の男性と再婚して間もなく、ある朝発作を起こして亡くなります。ストリキニーネによるものと診断されますが、ストリキニーネが夜のコーヒーに入れられたのか夜中のココアに入れられたのか、あるいは彼女が常用していた薬の中に入れられていたのか、そして、夜に飲んだものに入れられていたのであれば、通常即効性であるストリキニーネがなぜ朝になって効果を発揮したのか、それともストリキニーネを少量含有する薬の意図しない過剰摂取による事故死なのか、など疑問点が多くあり、ヘイスティングは近くに滞在していたポワロに警察沙汰にする前に助言を求めますが、検死の結果結局警察沙汰になり、まず最初に夫であるAlfred Inglethorp(アルフレッド・インゲルソープ)に遺産目当ての殺人容疑がかけられます。しかし彼のアリバイが証明されたため、容疑者候補から外されて捜査が進められます。捜査の中でジョンの部屋からストリキニーネの瓶を始めとする怪しげな物証が見つかったため、ジョンが逮捕・起訴されます。ポアロはその間必死で「ミッシングリンク」を探して真犯人逮捕に尽力します。
この作品にはアガサ・クリスティーの薬学の知識が存分に生かされているばかりでなく、複数の人の思惑や行動が錯綜したために様々な物証の解釈が複雑となっているため、真相がなかなか見えて来ない(疑わしい人が複数)ので、最後まで緊張感があってミステリーを楽しめます。裁判描写の緊迫感も魅力の一つです。また、ジョンとメアリーの冷え切った夫婦仲を改善するためにジョンの逮捕を容認したというポワロのオチもユーモラスです。
書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『And Then There Were None(そして誰もいなくなった)』(HarperCollins)
書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Endless Night(終わりなき夜に生まれつく)』(HarperCollins)
書評:アガサ・クリスティー(Agatha Christie)著、『Croocked House(ねじれた家)』(HarperCollins)
ポワロシリーズ