山梨の花を探して、楽しんで

山梨の豊かな自然に育まれている植物、特にその季節に咲く花について書いてます。

キタダケオドリコソウなのか?

2022-02-13 11:58:00 | 似てる花の見分け方
今日のお題はこの2つのオドリコソウです。
いずれも昨年はじめていった北岳で登る時と降りる時に違う場所で写したものです。


北岳の花の本持っていくので安心して北岳固有種について深く勉強していかなかったのが問題で、降りたあとになってキタダケオドリコソウという種があるのを知りました。環境省の準絶滅危惧種で山梨県では指定されていませんが南アルプスで接している静岡県では絶対危惧II類です。ただ2004年調査時も

わりと新しく見つかったものらしく私の持っている古い図鑑には掲載されていません。また山梨県の絶滅危惧種にも選ばれていないのでネットで情報を探したところ以下のような特徴が書かれていました。
1、植物体全体に紫色を帯びる部分がない。葉腋や萼が紫色を帯びない。
2、花が長さ3〜4cmとやや大きく、淡黄色
3、花期が7〜8月と遅い
by HP 「野の花賛花」一部他のサイト情報を追記。
ここの写真が改訂版「日本の野生植物」に掲載されたと書かれていました。

環境省の準絶滅危惧種で山梨県では指定されていませんが南アルプスで接している静岡県では絶対危惧II類です。ただ2004年調査時も今回の調査(2020年版)でも生息を確認できなかったと書かれていました。
この資料の235ページに掲載されていますが、山梨と静岡の標高1400〜2300mに生息し、花色は白色または淡紫紅色と書かれています。花の色の見解がネット情報とは異なってます。

さてお題の写真です。比較のために近くの里山の麓でたくさん咲いているオドリコソウの写真を載せます。標高500mくらいの場所で咲くのは3月末〜4月です。



ポイント1の紫色ですが、上は茎、下は葉や花にも紫色があります。
お題の写真の二つ目もやはり同じような紫色がわかります。
咲いていたのは7月で花色も淡黄色で標高は詳細にはわかりませんが広河原で1500mなのでそれより高いところで写しているので問題はないとおもいますが違うのかなと考えています。
もうひとつの最初の写真は二つ目よりもさらに高い場所で撮影したもので同じ7月です。写真を拡大しても葉などに紫色が見られないのでもしかしたらそうかなと考えてます。ただ写真がこの一枚しかなく葉腋の部分がはっきり見えないので今年しっかりと見てきて判定したいと思います。








ミスミソウの仲間

2022-02-12 18:52:00 | 似てる花の見分け方
山梨でもセツブンソウが咲き始めました。
めちゃくちゃ花が早かった昨年に比べたら遅いですがほぼ例年なみかなと思います。
さて今日のお題はセツブンソウと一緒に2月我々山野草ファンを楽しませてくれるミスミソウです。





私は山梨ではじめて自然に咲くミスミソウを見ました。それがここ県の自然記念物に指定されている畑熊のミスミソウです。自然記念物の植物は全部で28ヶ所あるそうです。
昔の記録によるとこの芦川渓谷にはあちこちにミスミソウがあり、その中で一番群生していたここが選ばれたようです。芦川渓谷といえば川の高低差を利用した発電所が印象的ですが、明治の頃、ここを通りがかったイギリス人牧師の発案によるものだそうです。なんと山梨で最初の発電所で明治33年から稼働しているそうです。すごいです。
セツブンソウが咲いている場所が芦川渓谷にもあるので早春を感じられる貴重な渓谷ですね。

さて本題に戻ります。
今日のお題はミスミソウか、スハマソウかということなのです。
ミスミソウは山梨県絶滅危惧IB類、環境省準絶滅危惧種です。そのレッドデータブックの記述をみるとミスミソウの中にスハマソウを含めているようです。いわゆるミスミソウ属ということですね。実際 日本のレッドデータ検索システムでも多くの都道府県で絶滅危惧種とされていますがはっきりとスハマソウやオオミスミソウ、あるいはケスハマソウを含むとしているところも多いようです。全国的に生息しているのですが盗掘や環境変化でどんどん減っているようです。
ということで山梨県もミスミソウにスハマソウが含まれているのだと考えました。なのでお題はどちらかということです。

まず昔の記録を見てみました。
山梨の植物誌@1981では、「少」とされてますが、スハマソウやオオミスミソウの記述がミスミソウに含まれています。特長として、葉の先が円いものがスハマソウ、葉が大型のものがオオミスミソウと書かれていました。また下部町でスハマソウを採取とも書かれていました。両方生息が確認されていたようです。

図鑑の差別ポイントも同様で「円い」ではなく「鈍頭〜円頭」でした。なんとなくわかりますね。
そのポイントだと間違いなくお題はミスミソウです。

ではスハマソウはどんな感じで円いのでしょうか?   図鑑を見てみました。
図鑑では面白いことに
ミスミソウは本州中部以西と九州北部
スハマソウは本州、四国
という分布が持っている三種ともに書かれていました。中部以西なら山梨は含まれないですね。
写真や絵を見る限り、差別ポイント葉の先はたしかにとがっていないというか、先は目立たないです。
ただ山に咲く花には「中間体があって葉での区別は難しい」とも書かれていました。それ以外の区別ポイントはどの図鑑にも書かれていないのでそこで見分けるしかなさそうです。

気のなったので山梨の他の場所で見たミスミソウを確認しました。全部で四ヶ所。山梨の生息地はレッドデータブックでは4メッシュですが、その3メッシュとメッシュ外の1メッシュものです。一ヶ所は自分の写真ではないので掲載できません。






そのうち、二番目のものだけがスハマソウといってもよい気がします。ただ冬越しの葉でかなりくたびれているので花後の新葉を確認してみて考えたいです。

見分けポイントはわかりましたがもう少し多くの種類を見たいものです。
1972にスハマソウが確認されたとする下部町もRDB2018の生息メッシュに含まれていますが生息場所を知りません。また昔の市町村誌を読むと大月市や南部町にも生息していたようです。特に南部町は甲府盆地とは環境が違うのでどっちが生息しているのか気になります。当然今も生息しているかどうかも不明です。ネットで見かけた鮮やかな色合いミスミソウも気になります。冬の時期  あまり探しに行く花もないし、根生葉は冬も残っているのでもう少し情報を集めて新たな場所を探してスハマソウを追っていきたいと思います。

個人の考えながら記述している忘備録です。最後まで読んでいただいてありがとうございました。
間違えや気づきなどありましたら遠慮なくお寄せください。









マイズルソウとヒメマイズルソウ

2022-02-09 16:07:00 | 似てる花の見分け方
今日のお題はこれマイズルソウです。


数年前マイズルソウにヒメと名がつくものがあることを知りました。
命名でよくある「ヒメ」という接頭語、小さいものを指していることが多いですが
芽がでて伸びていくときも小さいわけで見分けにくいものも多いです。成体を並べて比べればわかるのでしょうが実際には一緒に生息してないことも多く難しいです。

前置きが長くなりました。
まずヒメマイズルソウはYlistに標準として載っていました。
そこに示されていた成書の平凡社「日本の野生植物」によれば特長は、
◯葉が細長い
◯葉の裏面、茎の上部、花序に柱状の突起毛が多い
◯葉縁に微小な鋸歯がある
姿が優しいので「姫」とつけたとありました。
ただ平凡社の図鑑に載っていた両方の写真を見比べても特にヒメの葉が細いと感じませんでした。
なので葉が細長いはポイントにしないほうがよさそうです。残りは毛と鋸歯です。
マイズルソウは毛について、茎に毛がないとだけ書かれていました。残りの葉の裏面や花序についての毛の記載はなく、ないのか、あるいは別の毛があるのかわかりません。なので「茎の上部に毛がある」はポイントにします。
葉縁の微小な鋸歯はよく見るマイズルソウは縁はスッとしているのでポイントになりそうです。微小というのがどのくらいかはわかりませんが、、。

さてお題の写真ですが右の花の葉の一番上の尖っている部分に小さな鋸歯があるように見えます。これが「微小な」なのでしょうか?
別の山の写真を探してみました。
花序や葉柄、そして葉裏に毛がたくさんあるのがわかります。葉縁は毛がたくさんあるのはわかりますが微小な鋸歯かどうかはここまで拡大していてもわかりませんでした。最初の写真の鋸歯のように見えたのは裏面の毛だったのかもしれません。ただこの2つとも特長からヒメということになります。稀と書いてあったのに、、、
他を探してみるもなかなか見つからない。最近あまり撮ってないせいだ。
はじめて見た時の写真を見つけました。長野県の北のほうの山です。


上は花序に毛がありませんが葉の縁に小さな小さな鋸歯がありました。
下は花序や葉裏には毛がなく、葉縁も鋸歯はなさそうです。これが一番マイズルソウですね。

稀なヒメマイズルソウを見つけるポイントを明確にしたら、ヒメっぽいものばかりが見つかったという意外な結末になりました。今年もう少しマイズルソウをよく観察してはっきりさせようと思います。







ハナワラビの仲間たち

2022-02-08 14:14:00 | 似てる花の見分け方
今日のお題はこれです。お昼に散歩した際に撮ったものです。

ハナヤスリ科のハナワラビの仲間です。

山梨県植物誌にはこの7種が載っていました。
◯エゾノフユノハナワラビ
◯フユノハナワラビ
◯オオハナワラビ
◯ナツノハナワラビ
◯ナガボノナツノハナワラビ
◯ヒメハナワラビ     山梨県IB類   環境省二類
◯ミヤマハナワラビ  山梨県IA類  環境省IA類
またSNSでアカハナワラビを見かけたのでそれも加えて8種ですね。

まず希少種の2種は亜高山帯や高山帯に咲くとされているものでともに独特の葉っぱの形をしています。
両方見たことがありますがこれは容易に見分けられます。
残りの6種ですが、夏に咲くものと冬に咲くものの2タイプに分かれます。
夏型は名前にナツがつく2種、残りの4種は冬型です。
手持ちの図鑑などに載っていないのでネットで調べたらぴったりのサイトが見つかりました。

これによると、
葉柄や羽軸に毛がないもの      フユノハナワラビ
残り3種は葉っぱの形や葉の鋸歯の様子で区別できます。
さてお題の写真ですが、羽軸に毛があるのがわかります。そこで葉のアップも撮っておきました。

鋸歯が細かいことがわかります。なのでオオハナワラビだと思います。オオハナワラビは山梨の植物誌には1000〜1500m稀と書かれていますが、うちのまわりは400mくらいなのでちょっと違いますね。
この葉のふちが茶色くなってますが、全体的茶色くなったものもあり、葉が茶色くなるだけでアカハナワラビと考えるのは危なそうです。

もっと高い山で見かけたこれはエゾフユノハナワラビでした。これは植物誌の記載(1500〜2200m)にあってました。
こちらも稀なんだそうです。

残りの2種を見かけるともっとすっとわかるのかもしれません。過去いくつか写真を撮ってますので探して確認してみます。いつか引用させていただいたサイトのようなものを作れるといいなぁと感じました。

(追記)探したらすぐに2種見つかったのでアップしておきます。



共に10月に同じ山で撮ったものです。
上は葉にかすり模様のようなものがあり、鋸歯の感じからアカハナワラビと思います。
下は鋸歯の感じはフユノハナワラビなのですが、葉が少なく雰囲気が違いすぎます。おわかりの方はぜひ教えてください。周辺にたくさんありました。

 






野生絶滅の種 サルメンエビネとトキソウ

2022-02-07 14:41:00 | 貴重な花
山梨県の野生絶滅4種の過去の資料や図鑑をみてみました。

サルメンエビネは山梨県植物誌などの1981年頃の資料に記載がないので、その後見つかりそして確認できなくなったものと推測していました。実際レッドデータブック(以降RDB)には御正体山で1988年に確認されたがその後生育は確認されていないと書かれていました。図鑑で見るとサルメンといわれる独特な花が印象的です。エビネに比べて越冬葉がかなり大きいようなので、今の時期に葉っぱを見つけるのがよさそうです。場所は針葉樹林帯の下部からブナ帯にかけ、落葉樹林の林下。水がしたたる沢沿いの斜面や苔むした岩が点在するようなかなり涼しい場所に生息と書かれていました。花期は5〜6月。関東では東北よりも標高の高い1200mあたり(日本の野生ランなどの記述)。エビネと同じようであれば、あくまでも個人的な見解ですが、暗いというよりは今の時期に日当たりがいいような山の南向きの斜面や小さなピーク周辺かなとも思います。ただ過去の情報からいっても発見の確率はとても低い気がします。

トキソウはすでにRDB2005年でも野生絶滅とされており長い間生息確認されていない種のようです。尾瀬などで見られるように山地の日当たりのいい湿地に生息するといわれています。RDB2018によれば「山梨の植物誌@1982」に八代町大口山にあると書かれていたが今回の調査でも見られなかったと書かれていました。先日2019年に小林岳さんが市町村誌などの情報をまとめられた「山梨県植物分布誌」を見たら、たかんた、破魔射場、富士山、大口山と四ヶ所が書かれていました。
ここからは個人的な見解です。トキソウは小さくあまり目立たなく、また湿地帯は自由に歩きまわれるわけでもないのでやはり花が咲いていないと探すのはかなり難しいのではと感じます。花期は長野県での撮影記録を見る限り7月中下旬かなと考えてます。いわゆる湿地だけでなく、草原の中の小さな水が溜まるような場所でも生息しているようなので、昔あったとされる場所で今でも日当たりがよく草が茂っているような場所を幅広く探していくとどこかに少し生き残ってるかもしれないと考えています。 今年は二ヶ所歩いてみようと思います。

次回からはIAのメッシュ1で私が判別がつきそうなものをご紹介します。