日本の平和主義からの逸脱 事件を軍事力強化の口実に
安倍晋三首相は1日、過激組織「イスラム国」による後藤健二さん殺害に対する声明で、「テロリストたちを絶対に許さない。その罪を償わせる」と表明しました。この発言が国際社会で大きな波紋を呼んでいます。
安倍首相はその後、「『罪を償わせる』ということは、彼らがおこなった残虐非道な行為に対して、法によって裁かれるべきと考える」(2日の参院予算委員会)と発言を事実上、修正しました。
しかし、「罪を償わせる」発言について、米国のメディアは、安倍首相が「イスラム国」に「復讐(ふくしゅう)」を誓ったものとして驚きをもって報じています。
ニューヨーク・タイムズ紙2日付は「安倍首相は日本の平和主義から逸脱し、復讐を誓う」という見出しの記事を掲載し、この中で、「首相の復讐の誓いは、軍関係者さえも驚かせた」と指摘。「安倍首相は、戦後の平和主義を捨てて、世界でより積極的な役割を日本に担わせようとしている」と述べました。
ワシントン・ポスト紙(電子版)は3日、人質事件に対する安倍政権の対応をただした日本共産党の小池晃参院議員の質問を引用。安倍首相が集団的自衛権の行使を目指していることを指摘し、「日本の国家主義者らは人質事件を軍事力強化の口実に使うかもしれない」との識者の声を紹介しています。
「罪を償わせる」発言が「復讐を誓う」という印象を与えることを米メディアの報道は浮き彫りにしました。
空爆開始以降、「イスラム国」による欧米人拘束・殺害事件が相次いでおり、武力・暴力による対応が報復の連鎖を巻き起こしています。そうした流れを増幅する安倍首相の発言は思慮を欠く発言です。
首相は「国民の安全に万全を期す」と語りますが、自らの発言が国民を危険にさらしているという認識はありません。