汚染対策理解せず設計?
6000億円余を投じて東京都が整備してきた豊洲新市場予定地(江東区、東京ガス工場跡地、約40ヘクタール)で、いまも地下水や空気から基準を超える有害物質が相次いで検出されています。原因の徹底検証が求められる中、都の土壌汚染対策工事の新たな欠陥が17日、赤旗紙の取材で明らかになりました
860億円投じたが
専門家によると、土壌汚染対策工事では、汚染物質を封じ込めるために、地中に土木(止水)シートを敷いて、その上に盛り土などを行うのが通常だといいます。豊洲の工事現場の写真などをもとに赤旗紙が取材したところ、都中央卸売市場は土壌汚染対策工事の際に、砕石層(厚さ約50センチ)の上に土木シートを敷いていなかったことを認めました。
中央卸売市場はシートを敷かない理由について、「(汚染)土を入れ替える対策を講じているし、地下水をきれいな水に入れ替えているので、汚染物質は除去されている」からだと説明しました。
関係企業に問い合わせたところ、40ヘクタールに土木シートを敷く場合、工事費は数十億円程度と試算しています。
都は汚染対策工事に860億円を投じたにもかかわらず、汚染土壌が広域的に残されていることが、市民団体や日本共産党都議団の指摘で判明。地下水や地下空間の空気から基準を超える有害物質のベンゼン、ヒ素、水銀が検出されている原因は、都の対策の欠陥による疑いが濃厚です。
「都の汚染対策は欠陥だらけです」と指摘するのは、土壌汚染対策に詳しい1級土木施工管理技士の野村二郎氏(56)=仮名=。野村氏はダム止水、トンネルをはじめ地下工事、地盤改良、土留めなどの難工事を担当してきたベテランです。
野村氏は「土壌汚染対策では通常、汚染地下水の上昇を止めるために砕石層を敷き、その上に土木シートを敷いて粘土層を一定の厚みで盛り、その上に盛り土をします。シートを敷かないで工事をすれば、工事車両や建機の重量で上から押されて、盛り土と砕石が混じってしまう。設計者が、工事の目的を理解していなかったのではないか」と、疑問を投げかけました。
3項目の検証を
また野村氏は、土壌汚染対策の柱である地下水管理システムを10月に本格稼働したにもかかわらず水位低下の効果が薄い問題などについて、3項目を検証するよう提案。具体的には、(1)40ヘクタールもの広い市場用地で、揚水井戸が58本というのは少なすぎる(2)防潮護岸の止水壁(3層構造遮水壁)工事が不十分で、海水が市場用地の地下に浸水している疑いがある(3)安全性を確認するためには、再度地質ボーリング調査を行い、汚染土壌のサンプルの採取と盛り土の土質を調べる―ことです。
野村氏は言います。「土壌汚染が残されている以上、築地市場を豊洲に移転することは無理です。都は『食の安全・安心』を最優先して、築地市場を再整備する方針に転換すべきだと思います」