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きょうの潮流

2017-11-10 | コラム

アントニオ・サマランチ元国際オリンピック委員会会長が、日本のあるスポーツマンを評したことがあります。「スポーツ界のリーダーである以上に極めて優秀な外交官だ」▼卓球の故・荻村伊智朗さんのことです。1950年代に男子シングルスで2度世界を制し、日本の団体5連覇の立役者。その生き様を伝える明治大学の公開講座が9日、都内でありました▼“外交官”ぶりは中国と米国を結びつけた71年の“ピンポン外交”に始まります。91年には国際卓球連盟会長として世界選手権での北朝鮮と韓国の統一コリア結成に奔走。10回以上も北朝鮮に足を運び、政治の壁を越え、実現にこぎつけました。統一チームが女子団体で優勝した際は、両国の人々が朝鮮民謡のアリランを大合唱する光景が広がりました▼98年長野五輪招致のため、ともに仕事をした元日本オリンピック委員会職員の春日良一さんは語ります。「荻村さんは選手時代にスポーツが人々の融和をもたらすと実感し、一貫してスポーツによる友好、国際平和を目指していた稀有(けう)の人」▼いま北朝鮮問題をめぐり緊張が続いています。政治の世界では、対話や外交的解決が後景に追いやられ、軍事力行使容認の空気さえ漂います。その中でスポーツができることは大きくないのかもしれません▼しかし、来年2月には平昌(ピョンチャン)五輪が控え、2020年は東京、22年北京と東アジアでの五輪が続きます。スポーツが果たす“平和の外交官”の役割がこれほど求められているときはありません。

 

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