労働者派遣法の見直しを議論している労働政策審議会・労働力需給制度部会で27日、同法を大改悪する法案要綱が了承されました。労働者側からだされた意見を検討課題にするという極めて異例な形での了承となりました。労働者側の反対を押し切って取りまとめた建議すらないがしろにするもので、法案要綱の欠陥が浮き彫りになっています。
労政審の部会は1月29日、審議をまとめた報告を厚労相に建議。厚労省は建議にもとづいて法案要綱を作成しました。ところが、法案要綱には、建議で示された「派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限ることを原則とする」との内容がありませんでした。
労働者側は、この原則が法案要綱に盛り込まれていないのは問題だと批判し、明記すべきだと主張。鎌田耕一部会長は、意見をふまえ「臨時的・一時的」の考え方をどう示すか、厚労省に検討するよう求めました。
また、建議では派遣労働者の雇用安定措置として、(1)派遣先企業への直接雇用の依頼(2)新たな就業機会の提供(3)派遣会社での無期雇用―などを講じるとしています。しかし、法案要綱では「派遣先への直接雇用の依頼」はなく、雇用の機会の確保にとどまっています。
派遣先が3年を超えて受け入れる際、建議では、民主的な手続きによる過半数代表などから意見聴取し、違反があった場合、労働契約申し込みみなし制度を適用対象とするとしています。しかし、厚労省は、過半数代表の選出方法は省令にゆだねるとしています。派遣先企業にとって派遣期間を延長しやすい内容です。
解説
派遣の無制限拡大狙う
労働者派遣法を大改悪する法案要綱は、派遣を無制限に拡大し、企業が派遣を恒久的に使い続けられるようにするものです。
派遣は、これまで派遣先企業で働く正社員の代わりにしないとする「常用代替防止」を原則としてきました。このため、派遣は「臨時的・一時的」な労働に限るとされています。
現行法では、「臨時的・一時的」との原則を保障する制度として二つの柱があります。
一つは、原則1年・最長3年とした期間制限です。法案要綱は、これを事実上撤廃。派遣先企業が同一業務で受け入れられるのは3年としていますが、人を入れ替えれば継続して受け入れ可能です。派遣労働者も課を異動すれば、同じ派遣先企業で派遣のまま働かされ続けます。
もう一つが、「専門26業務」と一般業務による業務区分です。事務用機器操作やファイリングなどの「専門26業務」は「常用代替」のおそれが少ないとして、専門的な知識・技術を必要とする業務に限定して認められ、派遣期間の制限はありません。法案要綱では、これを撤廃し、あらゆる業務で派遣を無制限に拡大するものです。
法案要綱は、使い捨て自由の派遣労働を固定化し、正社員から派遣への置き換えに拍車をかけるものです。