再処理工場の稼働申請
日本原燃は7日、青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場の稼働に向け、その前提となる新規制基準への適合性審査を原子力規制委員会に申請しました。
再処理工場は、政府・電力会社が高速増殖炉「もんじゅ」とともに核燃料サイクル計画の柱と位置づけており、全国の原発再稼働の前提となる施設。未確立の技術でトラブルが続き、原発以上に危険と指摘される同工場の審査申請の背景には、国民の強い反対の声を無視して、原発の再稼働を進める安倍政権の暴走があります。
規制委は昨年12月18日、再処理工場など核燃料サイクル施設の新規制基準を策定。過酷事故への対応などを盛り込みました。
原燃は、新基準に対応するとして、移動式ポンプや放水設備の配備、防水扉などの設置のほか、想定する地震の揺れ(基準地震動)を450ガルから600ガルに見直し、一部設備の耐震補強工事などを進めています。工場完成は今年10月をめざしているといいます。
原燃は再処理工場のほか、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料加工施設などについても申請しました。
核燃料サイクル
原発の使用済み核燃料からウランやプルトニウムなどを取り出し、再び燃料として利用する仕組み。国策として進められてきました。
撤退しかない
- 核燃料サイクル立地反対連絡会議代表委員・共産党青森県議 諏訪益一氏
新規制基準は過酷事故を想定していますが、一度過酷事故が起これば、もはや制御できないということを東京電力福島第1原発事故は教えているのです。
再稼働、本格稼働を前提とした新規制基準は、新たな安全神話を生むだけです。選択すべきは、原発、核燃サイクルからの撤退以外にありません。防災計画、避難計画も、過酷事故が発生したら、機能しないと指摘されています。そういった問題も解決していないで、適合性審査の申請は許されるものではありません。
解説
完成時期20回も先延ばし
再処理工場は、全国の原発で発生した使用済み核燃料を集め、燃え残りのウランと、生成したプルトニウムを取り出す「放射能化学工場」です。使用済み核燃料に含まれるさまざまな放射性物質(高レベル放射性廃棄物=「死の灰」)も同時に取り出されます。
1993年に着工し、97年に完成予定でしたが、事故やトラブルが続出し、完成時期を20回も先延ばしせざるを得ませんでした。世界各地の再処理工場では爆発事故などが相次ぎ、工程自体、確立されていないことを示しています。
また、再処理工場など原子力施設が集中する下北半島の東側の海底には長さ約84キロの「大陸棚外縁断層」があり、その南側の活断層とつながって、M(マグニチュード)8級の地震が発生する可能性が指摘されています。
取り出したウランとプルトニウムからつくる混合酸化物(MOX)燃料を燃やす「もんじゅ」も事故続きで稼働の見通しが立っていないどころか、廃炉が焦眉の課題となっています。
また、高レベル放射性廃棄物は、地中に埋める(地層処分)としていますが、そのめどはありません。
しかし、安倍政権は、今月に閣議決定しようとしている「エネルギー基本計画」案で、核燃料サイクル政策を「着実に推進する」と明記しています。至る所で行き詰まった核燃料サイクルを無理やり進めれば、いっそう深刻な事態を引き起こすことになりかねません。
(「原発」取材班)