東京電力・福島第1原発の事故当時、現場トップにいた吉田昌郎所長の調書が公開されました。その中身は衝撃でした。「完全に燃料露出しているにもかかわらず、減圧もできない、水も入らない」お手上げ状態に。本人も一番思い出したくない場面だったといいます。
電源もすべて失い、「絶望した」。最悪の事態が迫るなか、現場は混乱し極限の状況に。「放射性物質が全部出て、まき散らしてしまうわけですから、我々のイメージは東日本壊滅です」
同時に公表された関係者の証言からも恐ろしさが伝わります。当時、政府と東電の間で対応した細野豪志首相補佐官は、原子力安全委員長や東電幹部の「もう手はない」という発言に愕然(がくぜん)とします。菅直人首相は「リスクを完全にカバーできる安全対策はあり得ない」
ひとたび大事故を起こせば、制御できず被害が際限なく広がる原発。いかに人類と共存できないか。いまだに事故の原因は解明されていませんが、その危険性と恐怖を如実に示したところに、吉田調書の核心があります。