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きょうの潮流

2017-09-03 | コラム

この夏、多くの歴史ドキュメンタリーが放送されました。戦後72年たっても新たに掘り起こされる戦争の実相。アジア全体で2000万人以上の人を犠牲にした過去は、簡単には過ぎ去らないことを教えてくれます▼その一つ、NHKスペシャル「731部隊の真実」。1949年に旧ソ連で開かれた軍事裁判の音声データを発掘し、人体実験について証言する731部隊の当事者の肉声を初めて世に出しました▼人体実験を主導したのは、旧帝大を中心とするエリート医学者たちでした。全国から集められ、組織された医学者たち。番組は命を守るはずの彼らが、なぜ人道に反する戦争犯罪に手を染めていったのか、その構造と背景に迫ります▼驚いたのは膨大な研究費です。軍と結びつくことで、今の額で2億5千万円もの研究費を手にした教授。裁判では、「昭和15年度は大体1000万円(現在の約300億円)近い予算が使われた」との証言も。番組はその歴史が改めて問われているとして、大学と軍事研究のあり方が議論される日本学術会議に焦点をあてました▼3月、日本学術会議は「軍事目的のための科学研究は行わない」とする過去2度の声明を継承することを決定しました。一方で防衛省の軍事研究助成に応募した大学は22件。研究代表者には選ばれなかったものの、採択された研究課題に4校が協力します▼科学は何のためにあるのか。人間が人間として越えてはならない一線とは何か。あぶりだされた過去は、まさに今の問題です。

 

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