業界最大手の東京海上日動火災保険が、自動車保険金の一部での不払いを長年放置していた問題で、永野毅(ながの・つよし)社長が行った釈明に虚偽説明の疑いがあることが28日、赤旗紙が入手した内部資料などでわかりました。同社の説明をうのみにした金融庁の責任も問われます。(矢野昌弘)
同社が「“不払い”との認識は今もない」(2月7日、永野社長の会見)と居直る口実に持ち出すのは「運用変更」というものです。
同社によると、「臨費」と呼ばれる保険金の一部を契約者の請求がなくても支払う方式に「運用変更」したのは、2003年7月からとしています。(図)
つまり、同年6月以前については、請求がなければ払う必要はなく、払う義務がある保険金でも請求がないものは不払いにあたらないという主張です。
しかし同社関係者は本紙に「そもそも自動車保険の販売当初から運用変更などない」と証言。「運用変更」の裏づけ資料の開示を求める報道機関に、同社は開示を拒んでおり、説明の信ぴょう性が問われています。
記述も日付も
赤旗紙が入手したのは、「連絡‥自動車保険対人・人傷における臨時費用対応の確認」と題する同社の社内連絡(03年10月2日付)。同社が「運用変更」を裏づける社内文書として、金融庁に提出したものです。
ところが、この文書には「運用変更」を示す記述がありません。「お支払いしていない事案についてその理由を確認し(中略)報告願う」などと、記録の徹底を求める内容にすぎません。
しかも03年7月の「運用変更」を連絡した文書なのに、文書の日付は同年10月2日。明らかな矛盾です。
05年に不払いの調査を命じた金融庁の責任も重大です。
当時の調査で、同庁は「請求が無かったため、本来支払われていなければならないものを支払っていなかったこと」と不払いを定義。
この定義でいけば、今回発覚分も不払いに該当します。
ところが、同庁は東京海上日動の「運用変更」を了承。これが、02年4月~03年6月に発生した不払いの放置につながったのです。
「詭弁」と批判
支払い業務に詳しい別の損保関係者は「問題となっている臨費は、主な保険金とセットで払うもの。別建てで請求しなければ、払えないものではない。同社の説明は、詭弁(きべん)だ」と批判します。
東京海上日動の関係者は「除外していた期間は、不払いが特に多い時期だ。件数が他社より突出した責任を経営陣が問われないように、支払いができることを知りながら後づけで運用変更を装っているだけだ。金融庁はおざなりな調査で済ませず、契約者への説明責任を果たさせるべきだ」と指摘します。
赤旗紙の取材に、東京海上日動は「運用変更があったことは間違いございません。その根拠となる資料等は社内文書であるため開示できません」として、証拠を示していません。
日本共産党の大門実紀史参院議員は11月の参院財政金融委員会で、同社の不払いを追及し、麻生太郎金融担当相は、調査を約束しています。
東京海上日動の不払い 発覚したのは自動車保険の「臨時費用(臨費)」とよばれる保険金18万2436件分。2002年4月~03年6月に発生したもの。不払い総額は40億円(利息含む)にのぼります。「臨費」は人身事故の見舞いなどを補償するものです。同社によると、1割超の不払いを払うことができていません。