米軍が戦争反対や在日米軍基地撤去を求める運動を、諜報(ちょうほう)・監視活動の対象にしていることが、日米共同演習の資料でわかりました。市民が行う平和的なデモや集会も、米軍が敵視して日本政府に取り締まりを要求すれば、準備段階から「犯罪」として捜査対象になる―安倍内閣が成立を狙う「共謀罪」法案の危険な内容が、日米演習からも浮かび上がります。
「過激グループ」実際は市民の平和的行動
12年日米演習諜報関連資料
資料は、2012年1~2月に、伊丹駐屯地(兵庫県)で実施された米陸軍と陸上自衛隊の日米共同方面隊指揮所演習「ヤマサクラ61」の米軍側の作戦命令の「諜報」についての付属文書。日本国内で「過激グループ」がどのような行動をとるかについて推定する「情報(諜報)見積」です。
「過激グループ」といいながら、資料に掲載された写真をみると―。02年6月2日に名古屋市で、市民団体や宗教者、学者、労働組合、政党の代表者がよびかけて、約5000人が参加した「ストップ・ザ・有事法制! 憲法を守ろう6・2愛知県民集会」や、01年9月11日のアメリカ同時多発テロをきっかけに、「戦争のない世界を」と京都市で始まった「ピースウォーク」などを掲載していました。
資料では、「日本の軍隊と在日米軍基地の駐留に反対し、日本の領土からの撤去」「社会を維持するための環境の保護とあらゆる人々に対する戦争反対」が「過激グループ」の「モットー」だとして敵視しています。「過激グループ」のかかわる運動に、「PKO協力法」(1992年成立)に反対し国会や自衛隊基地を取り巻いた全国的な平和運動や、95年の沖縄での米兵による少女暴行事件をきっかけにした米軍基地縮小を求める運動、自衛隊のイラク派兵に反対する運動などを列挙しています。
「“共謀罪”を4度目も廃案にさせるAll京都」の世話人として地域で署名活動にとりくむ里中悦子さん(59)は、京都市の「ピースウォーク」に参加した一人です。
「9・11のとき、悲しみと怒りをもって、『戦争をさせたくない、こんな世の中にしたくない』という思いで、ゆるやかにつながって個人が発信していこうと、ピースウォークを始めました。それさえも過激な運動と同一視し、敵対するもののようにとらえるのは、お門違いです。治安維持法のときも、政府は一般市民を対象にしていないといっていました。『共謀罪』も同じ手法だと思います」