朝日新聞DIGITAL(2017.10.28)
「事実上の解党」の道をいったん選んだ民進党が存続を正式に決めた。2019年参院選に向けて、民進から分裂した立憲民主党や希望の党との連携を模索する。ただ、立憲は合従連衡に否定的な姿勢を貫く。希望も党内にあつれきを抱え、先行きはおぼつかない。
27日に民進党本部であった両院議員総会は、出席議員の怒りで満ちあふれた。
希望への合流を進めた前原誠司代表が約60人の衆参議員を前に、政略の失敗を陳謝。一方で、「東北などでは民進党のままの方が勝ったと思うが、全体を考えた」と弁明を始めると、出席者の怒りに火がついた。
「東北で勝てる人たちもみんな落選した。それは違う!」
「途中で引き返せなかったのか」
前原氏と近かった菊田真紀子衆院議員でさえ、途中退席し、記者団に「(前原氏が)何を言っても言い訳にしか聞こえない」と切り捨てた。総会は約3時間半に及び、党存続への方針転換が決まった。
民進は衆院が解散された9月28日の両院総会で、事実上解党してまず衆院民進が希望に合流するとの前原氏の方針を了承。結果的に衆院選で立憲、希望、無所属に3分裂し、党内には46人の参院議員のほか、無所属で当選した衆院議員18人が残った。
このうち、希望との合流協議に当たった前原氏や玄葉光一郎元外相らを除く13人が民進に党籍を置きつつ、衆院内会派「無所属の会」を結成。しがらみにとらわれず、「分断された立憲、希望と連携する結節点になる」(会派代表の岡田克也・元民進代表)ことをめざす。
今回の党存続への方針転換の狙いも、希望が失速するなか、前原氏の方針で「衆院選後に希望に合流する」としていた参院民進が丸ごと残ったことを生かし、自公政権に対抗するための結集軸をつくり直すことにある。
強みは、100億円を超えるとされる党の資金と地方組織の存在だ。まずは立憲や希望と国会で統一会派を組むことや、参院選での比例票上乗せを狙う統一名簿の実現を模索するとみられる。
ただ、参院では「党の資金をいったん国庫に返納して、新党で一から出直すべきだ」(ベテラン議員)など、党の存続に否定的な意見も根強い。進め方次第では一気に瓦解(がかい)する可能性もある。(岡本智、斉藤太郎)
■希望、火種抱える
衆院選敗北を受け、小池百合子代表が「バッジを付けられた皆様方でお決めいただきたい」と執行部人事を丸投げした希望。27日の両院議員総会で共同代表はあえて置かず、ベテラン議員を首相指名候補に充てるとの結論に至った。
だが、小池氏の求心力が低下するなか、早くも党内対立が顕在化した。
2日前の両院議員懇談会で年内に正式な執行部を発足させるため、規約を見直したうえで代表選を行うための暫定的な執行部を作る方針を確認。樽床伸二代表代行とともに党内調整を任された、大島敦・前民進党幹事長が共同代表に就く案が有力視されていた。
ところが、民進色が前面に出ることを嫌う結党メンバーを中心に、「色が薄い」などの理由から玉木雄一郎氏を推す動きが浮上。若手議員らも25日夜に都内で会合を開き、玉木氏を推す方針を決めた。
党内対立を抱え、樽床氏らは共同代表をひとまず空席としたうえで、大島氏を幹事長兼政策調査会長とすることに。首相指名候補はこれといった決め手のないなか、党内最多の当選8回で小選挙区を勝ち抜いた2人のうち、55歳で年長の渡辺周・元防衛副大臣にしたが、樽床氏らの提案には「反対」の声も上がった。
共同代表選びをめぐる駆け引きは、11月末に予定される共同代表選の構図にも影響を与えることが必至だ。結党メンバーのなかには前原民進代表の合流を待ち、新代表選びを本格化させるべきだとの声もある。
27日の両院総会直前の会合でも、党の基本姿勢をめぐって議論が紛糾。「与党の補完勢力の疑いをずっとかけられている」(小川淳也氏)、「安保法制を容認しない方向性が大事だ」(大串博志氏)との声が上がった。(別宮潤一、野村周平)
■立憲「従来と同じことしたら…」
「合併して、政党を大きくするのは時代遅れだ。再編にはくみしません」
立憲の枝野幸男代表は27日、東京都内での講演で改めて野党再編と距離を置く姿勢を示したうえで、「(19年の)参院選は立憲民主党で戦う」と宣言した。
枝野氏が再編に否定的なのは、1996年の旧民主党結成以降、自由党や維新の党などと合併して拡大した路線が失敗したとみているからだ。講演でも「妥協し、主張がクリアにならなかった。『非自民』で大きな固まりを作る限界が来た」と指摘した。
「20議席取れれば上出来」という当初の想定を超えた衆院選での躍進の理由は、党の立ち位置を鮮明にしたことにあると分析する。「いまが人気のピークだと思うが、従来と同じことをしたらもっと下がる」
参院選での野党協力についても、「ギリギリ許されるのは、(政権に)漁夫の利を得させないすみ分けだ」と現時点では慎重だ。