親の仕送りに頼れずアルバイトに追われ授業に出られない。返せる見通しがなく、怖くて奨学金を借りられない―。高すぎる大学学費をめぐり、若者の悲痛な声が絶えません。安倍晋三政権は「高等教育の無償化」方針を掲げ、関連法案を国会に提出しましたが、対象となる規模は限定的で、しかも財源は逆進性のある消費税の増税です。これでは誰もが安心して学べる環境の実現など困難です。学生や親を苦しめている大本の高学費の引き下げをはじめ、給付奨学金の抜本的拡充などに本気で踏み出す改革が急務です。
学生も家計も負担は限界
入学1年目に大学に払う学費は国立で約82万円、私立で平均133万円にのぼります。国立ではいくつかの大学が値上げに動き、私立も値上げがとまりません。
高学費の深刻な実態は、さまざまな大学に通う学生でつくる「FREE 高等教育無償化プロジェクト」が今月公表した約1500人からの学生アンケート結果で、改めて浮き彫りになりました。
バイトする学生は9割以上で、バイトで睡眠と学習の時間が削られたとの答えは、それぞれ5割を超えました。深夜バイトの頻度が増え体調を崩した人もいます。くたくたで授業に出られないなど学業に支障が出ている人も多数います。高学費のため進学をあきらめようとした経験があった、ごく身近な人が進学を断念したと記す人も数多くいました。苦境は低所得世帯の学生にとどまらず、親の年収が1000万円近い学生からも厳しさを訴える声が上がります。
労働者福祉中央協議会の教育費負担についての親へのアンケートでは、優先的に実現を望む項目のトップは「大学などの授業料の引き下げ」72・4%と圧倒的でした。学生生活を壊し、若者の希望を奪うだけでなく、親の暮らしも圧迫している高学費問題をどう打開するかは、政治の姿勢が問われる重要課題の一つです。
しかし、安倍政権には、解決しようという姿勢がありません。「無償化」を言いながら、国会で審議中の「大学等修学支援法案」では、学生や親が切実に願う学費引き下げについて全く触れていません。
日本政府は2012年、国際人権規約の「中等・高等教育の漸進的な無償化」条項の留保を撤回し、無償化をすすめることを世界に向けて約束しました。その責任を果たす上でも、高すぎる学費の引き下げは、待ったなしです。
法案では、修学支援できる大学の「機関要件」を設け、「産業界等の外部人材の理事への複数任命」など学生と無関係の条件を盛り込もうとしています。国の決めた要件にあわない大学の学生を支援から除外するやり方は大問題です。
若者の未来を開くために
「無償化」財源に消費税10%増税をあてる安倍政権の方針は、国民の願いに反します。負担減の対象にならない学生・保護者には消費税増税分の負担ばかりがのしかかります。経済的困難に拍車をかけることは許されません。
日本共産党は大学学費の半減と、給付奨学金制度の抜本的な拡充を速やかにすすめることを提案しています。消費税に頼らなくても、大企業・大資産家に応分の負担を求めれば財源は確保できます。若者が安心し、希望を持って学べる政治への転換が求められます。