稲田朋美防衛相が、沖縄県名護市辺野古で工事を強行している米軍新基地が完成しても、緊急時の米軍による民間空港の使用ができなければ、普天間基地(同県宜野湾市)は返還されないと述べたことが、沖縄県議会などで大問題になっています。安倍晋三政権は普天間基地の返還について「辺野古(の新基地建設)が唯一の解決策」と主張してきました。しかし、稲田氏の発言は、新基地ができても他の条件が満たされない限り、普天間基地も返還されず、継続使用される危険を示しています。
民間空港使用も返還条件
日米両政府が2013年4月に合意した「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」は、普天間基地の「返還条件」として、米軍キャンプ・シュワブへの「移設」=辺野古の新基地建設をはじめ、8項目を列挙しています。
その一つが「普天間飛行場代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善」です。新基地の滑走路の長さ(1800メートル)では離着陸できない米軍機のため、民間空港を使用できるようにするという意味です。
稲田氏は6月6日と同15日の参院外交防衛委員会で、米軍による緊急時の民間空港の使用について「米側との具体的な協議やその内容に基づく調整が整わないことがあれば、返還条件が整わず、普天間飛行場の返還がなされない」と初めて明言しました。普天間基地は残るという重大発言です。
米政府監査院(GAO)の今年4月の報告書は、辺野古の新基地の滑走路を「短い」とし、緊急時に使用できる沖縄県内の空港を特定するよう求めています。
稲田氏は米軍が緊急時に使用する民間空港については「現時点で具体的な内容に決まったものがない」(6月6日の参院外交防衛委)と言います。しかし、沖縄県は、普天間基地の滑走路の長さ(2800メートル)から推定し、那覇空港(滑走路3000メートル)が対象になると警戒しています。
那覇空港の米軍使用は「沖縄の基地負担軽減」にも逆行します。翁長雄志知事が今月5日の県議会で「(米軍には)那覇空港は絶対に使わせない」と答弁したのは当然です。
普天間基地に代わる新基地建設の方向が日米両政府で正式に確認されたのは、1996年12月のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)最終報告です。同報告は「危機の際に必要となる可能性のある代替施設の緊急時における使用について研究を行う」としているだけで、普天間基地の返還条件として緊急時の民間空港の使用は挙げていません。
沖縄県に一切説明をせず
2006年5月に現行の新基地建設計画を決めた「再編実施のための日米のロードマップ(行程表)」も「民間施設の緊急時における使用を改善するための所要」を「検討」するとしていますが、「返還条件」とは明記していません。
なぜそれが「返還条件」になったのか、政府は沖縄県に一切説明していません。普天間基地が残るのであれば、政府の理屈からしても、新基地建設工事強行の理由は成り立ちません。
新基地建設工事の即時中止、普天間基地の無条件返還がいよいよ求められます。