沖縄県名護市の辺野古崎と大浦湾で、日米両政府が県民の圧倒的多数の反対の声を無視して強行している米軍新基地建設。その予定海域に、活断層の可能性のある断層の存在が、防衛省の作成資料と地質研究者への取材で分かりました。(山本眞直)
大浦湾を震源とする地震や津波が発生すれば、海上構造物の破壊、海域汚染による環境破壊で貴重なサンゴやジュゴンの藻場などの生息に破壊的な影響が懸念されます。
問題の断層は、辺野古崎の埋め立てによるV字形滑走路の先端部に迫る、直近の長島と中干瀬の間で確認されている海底地形の落ち込み部分(図)です。
地震・津波の被害免れず
海域に深刻な環境破壊も
沖縄・辺野古の米軍新基地予定海域にある断層については、2007年8月に那覇防衛施設局(当時、現沖縄防衛局)が作成した、新基地建設のための環境影響評価方法書の辺野古沿岸域の「地層断面位置図」、「推定地層断面図」(図)に明示されています。
推定地層断面図には長島と中干瀬の間に海面から60メートルほどの深さでの落ち込みが示されています。この落ち込みについて方法書は「断層によると考えられる」と書き込んでいます。
専門家が指摘
『琉球弧の地質誌』(沖縄タイムス)の執筆者の一人、加藤祐三琉球大学名誉教授(理学博士)は、方法書の位置図と断面図を分析したうえで同断層は「活断層の可能性がある」と指摘しました。
決め手は、「落ち込み」のある地質が、地質年代で第四紀の琉球層群であり、ここに「落ち込み」がある場合は「活断層の可能性がある」からです。
加藤名誉教授は、同海域の陸上部に走る二つの断層に注目。名護市の西海岸から辺野古崎に走る「辺野古断層」、同市田井等から大浦湾沿岸の二見に走る「楚久(そく)断層」です。
同教授は大浦湾の海底地形図で、辺野古断層、楚久断層のそれぞれの海底延長に、これらにつながる谷や斜面の海底地形が追跡できること。これらが合流する地点のまっすぐ南東延長に方法書に示される谷状の琉球層群の落ち込みが認められることをあげ、「したがってこれらの海底地形は陸上の断層とともに活断層である可能性が考えられる」と指摘します。
建設は不適切
加藤名誉教授は力説します。「長島の北東400メートルほどに活断層の可能性のある断層がある。これを震源とする地震、津波が発生すれば人工構造物の破壊は免れず、海域の深刻な環境破壊をもたらす新基地建設は不適切だ」