安倍政権は、「給与制度の総合的見直し」で、国家公務員に対して新たに恒久的な賃下げをねらっています。この賃下げは地方公務員や独立行政法人など約625万人の賃金に直結し、地域経済に深刻な影響を与えることが、日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)の試算で明らかとなりました
安倍政権や人事院がねらう「給与制度の総合的見直し」には、地域間格差がさらに拡大するという大きな問題があります。
民間労働者も
昨年8月の人事院報告では、12県を選んで国家公務員給与と民間賃金を比べ、民間賃金が2~3%低いと指摘。公務員に対するさらなる賃下げを求めていました。この賃下げ分を原資にして、民間賃金が高い都市に地域手当としてつけるというもの。今でも18%にも及ぶ地域間格差が、さらに広がる恐れがあります。
しかも、今回の賃下げは民間労働者の賃金に悪影響を与え、地方経済に深刻な影響を与えます。
国公労連の試算では産業連関表を使い、国家公務員の賃下げを3%と仮定し、国家公務員、地方公務員、国立病院機構、国立大学法人に限って試算。29県について、地方経済へのマイナス波及効果を算出しました。
「見直し」の根拠として比較対象となった12県での影響は、非常に大きいものがあります。(表参照)
例えば岩手県では、給与削減額は72億3千万円となり、減額による直接消費支出減は43億3千万円にのぼります。公務員賃金の削減は他産業の賃金に波及し、公務員と民間を合わせた賃金減少額は93億円にも。その結果、岩手県全体の総消費支出は66億7千万円も減ることになります。
賃下げによる総消費支出減少額は12県で699億円にものぼり、地域経済を直撃します。
自治体も批判
ただでさえ経済が疲弊している地方からは、大きな批判の声があがっています。
国公労連は3日、人事院と交渉を実施。沖縄の代表は「中小企業団体中央会から『公務員賃金を上げてもらわないと地域経済が疲弊して困っている。もっと運動しないのか』と言われた」と発言しました。
交渉を控えた人事院前行動では、国公九州ブロックの代表が「自治体や経済団体への要請や懇談にとりくんでいる。九州市長会のメンバーからも給与制度の総合的見直しについて『おかしい』という声が上がっている」と紹介しました。
国公労連の盛永雅則顧問は「公務員の賃下げがおこなわれれば、今でさえ低い最低賃金までもが固定化されてしまう」と、民間労働者への悪影響を批判します。
比較対象とされた12県はいずれも最低賃金がもっとも低い水準のところで、民間賃金が低い地域です。最低賃金は少しずつ引き上げられてきましたが、地域間格差は広がっています。
盛永顧問が言います。「公務員の賃下げは民間労働者の賃上げの流れに逆行するものであり、経済はますます冷え込みます。自治体や経済団体との懇談に旺盛にとりくみながら、賃下げを許さない世論をつくりたい」