詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

めまい

2014年08月18日 | 
トントントンと音のする
ビルの外付け階段が
真夏の空に黒くくっきりと映え
壁に映る階段の線路の形の影と交差し
くるくるくるくる回転する
白い雲の切れ端も混ざって
くるくるくるくる回転する
夏の命の濃さに目が眩んで
私がくるくるくるくる回転する
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2014年08月18日 | 
暑いのが苦手なので
夏は嫌いだとずっと思ってた
今朝まで
だけど今朝
流しで洗い物をしていたとき
少しだけ開けた窓の外から
精一杯の力で鳴く蝉の声が聞こえる
そう思った途端
青空にもくもくとどこまでも高く白く
広がっていく入道雲が見えた
夏休みへの期待が広がっていく
小学生の頃の私
その期待の中に広がっていた
海の匂い、宿題、かき氷、きらきら光っている未来
大人になってもやっぱり夏が好き
そう言っていた友だちを思い出した

夏とは、何に付けられた名前なのだろう
夏とは、四季のひとつで
春の次、秋の前にやってくるものである
では一体、夏と名付けられた何がやってくるのだろう
私には、思い出がやってきた
何かの季節を好きになる本当の理由は
思い出すことにあるんだ

それでもやっぱり暑さは苦手で
家に閉じこもっていたけれど
夕方になり
傾いた日が部屋の中までやってきて私を誘うので
ようやく買い物に出ることにした
思ったよりさわやかな風が
額の髪を後ろへなびかせ
汗を蒸発させていく
体が伸びやかになる
西日がまぶしい
あまりの心地良さに
少しさみしくなる
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トマトが熟れるのを待っている

2014年08月18日 | 
トマトが熟れるのを待っている

中に濁った光を宿して
たっぷりと大きな緑の宝石みたい
地下から汲みあげた水分がふくらませた
地球のしずく

トマトが熟れるのを待っている

待つという軌道にのっている間は
落ちることがない
矢のようにひとつの方向へ
まっすぐに飛んでいける
そんな気持ちになれる

トマトが熟れるのを待っている

私が育てたトマトではない
買い物に行く道で
ビルの間の猫の額の小さな畑に
びっくりするほどみずみずしい
なめらかでつややかで
重たく垂れた玉を見つけたのだ

それからは通る度
熟れ具合を確認する
目にすれば得をした気分になる

トマトが熟れるのを待っている

待つことの楽しさに
いつまでもこのままでと願い始めてしまう
丸くふとった実の手応えを
ずっと感じていたくなって
ずっとどこかへの途上でいたいと思って
ずっと目的地を胸に
持っていたいと思って
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする