イオンがPB改革
不評の「安さ重視」から転換
セブン&アイ追い上げ図る
08:21
フジサンケイビジネスアイ

イオンがPB改革 不評の「安さ重視」から転換 セブン&アイ追い上げ図る
(フジサンケイビジネスアイ)
流通最大手のイオンがプライベートブランド(PB=自主企画商品)
「トップバリュ」の改革を急いでいる。
これまではPBの基本となる「安さ」に重点を置いた商品を展開してきたが、
PBにも「高品質」や「おいしさ」を重視するように
変化した消費者のニーズに十分対応しきれておらず、
高付加価値型のPBで先行するライバル、
セブン&アイ・ホールディングス(HD)に後れを取ってきた。
イオンは当面、鮮度にこだわった刺し身や牛肉などを切れ目なく売り出し、
顧客に品質の変化を実感してもらい、
ライバルの追い上げを図る構えだ。
「お客さまの(ニーズの)変化に十分対応することができず、全部が問題だった」。
イオンの総合スーパー(GMS)事業を担うイオンリテールの岡崎双一社長は
7月8日、東京都内での会見で反省の弁を述べた。
イオンは、昨年4月の消費税増税に伴って消費者が節約志向を強め、
価格を重視した消費行動を取ると想定。
メーカー品よりも価格が1、2割安いトップバリュをそろえて
顧客を取り込もうとしたが、どの店でも
トップバリュの商品ばかりが目立つ売り場となった結果、
「買い物をする楽しみに乏しい」(千葉県内の60代の主婦)
といった来店客の不評を買った。
客足は遠のき、GMSを展開するイオンリテールの15年2月期の既存店客数は
前期比で4%弱減り、連結営業利益は90.8%減の
25億円と激減した。
◆生本マグロに自信
増税の影響を見越した戦略が、結果に結びつかなかった反省もあり、
今年度はPBの魅力改善を具体化する商品を矢継ぎ早に投入している。
その象徴が、6月にトップバリュの一つとして売り出した
「奄美生まれ生本マグロ」だ。
品質や価格で天然物のマグロに引けを取らない商品として
自信を持っており、イオンリテールの土谷美津子取締役は
「築地の仲卸しや料理店の方など、
プロに太鼓判を押してもらった味です」と胸を張る。
一つの商品だけでは改革が実を結ぶわけでは当然なく、
2の矢、3の矢と魅力ある商品を次々と提供しなければ
顧客は変化を実感できない。
このため今春以降、「ギリシャヨーグルト」や
「五島塩のローストビーフ/ローストポーク」といった
付加価値を高めたトップバリュの新商品を続々投入してきた。
今月6日には、環境配慮の認証を受けたノルウェーの施設が養殖した
サーモンのPB品「グリーンアイ 生アトランティックサーモン」の取り扱い店を、
従来の約400店舗からグループ約1,200店舗に広げた。
オランダに本部を置くNPO、水産養殖管理協議会(ASC)の認証表示がある刺し身や
切り身として販売。ASC認証は
稚魚の乱獲や水質汚染、劣悪な労働条件などを防いでいる養殖施設に与えられる。
「認知度はまだ低いが(ASC表示のある商品は)今後伸びるはずだ」
(土谷氏)と期待する。
イオンは今秋以降も、継続的に高付加価値型のPB商品を売り出し、
変革を強くアピールしたい考えだ。
一方で、既存の加工品のトップバリュ商品も対象に、
大規模なスクラップ&ビルドを進める。
トップシェアを持つナショナルブランド(NB)商品に近い高品質で開発した既存品も含め、
リニューアルしても販売目標に届かないと判断した場合は
販売を取りやめる方針だ。
厳しい基準で見直した結果、
相当の数のトップバリュ商品が今年度中に姿を消す可能性もある。
◆徹底した顧客目線へ
「GMS改革はまだ道半ば」(イオンの岡田元也社長)と認めるように、
遅ればせながらもイオンが攻守両面でPB改革を進める間に、
ライバルのセブン&アイは先を行っている。
地域ごとに異なる食文化などに合わせて「ご当地」の味付けのメニューを売り出したり、
売れている商品でも絶えず味の改良を重ね、
価格以上の価値を生み出すのに余念がない。
それによって既存顧客のリピートを増やしながら、
新たな顧客の開拓にもつなげている。
セブン&アイの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)は
「安かろう、まずかろうでは今は売れない。
質の追求でPBに革命を起こした」と語り、
他社との絶対的な差異化をセブンは図ることができたと自負する。
改革に向けたイオンの取り組みは、
トップバリュの中長期的な方向性を描き切れていないなど
物足りなさも残す。ライバルも
あの手この手を繰り出す中で、
消費者の足を自らの店舗に向かわせるには、
徹底した顧客目線への転換が欠かせない。
イオンのPB改革が成功するかどうかは、
消費者に寄り添った商品や売り場づくりを
いかに早く実現できるかにかかっているといえそうだ。
(永田岳彦)
http://news.goo.ne.jp/article/businessi/business/fbi20150823000.html
不評の「安さ重視」から転換
セブン&アイ追い上げ図る
08:21
フジサンケイビジネスアイ

イオンがPB改革 不評の「安さ重視」から転換 セブン&アイ追い上げ図る
(フジサンケイビジネスアイ)
流通最大手のイオンがプライベートブランド(PB=自主企画商品)
「トップバリュ」の改革を急いでいる。
これまではPBの基本となる「安さ」に重点を置いた商品を展開してきたが、
PBにも「高品質」や「おいしさ」を重視するように
変化した消費者のニーズに十分対応しきれておらず、
高付加価値型のPBで先行するライバル、
セブン&アイ・ホールディングス(HD)に後れを取ってきた。
イオンは当面、鮮度にこだわった刺し身や牛肉などを切れ目なく売り出し、
顧客に品質の変化を実感してもらい、
ライバルの追い上げを図る構えだ。
「お客さまの(ニーズの)変化に十分対応することができず、全部が問題だった」。
イオンの総合スーパー(GMS)事業を担うイオンリテールの岡崎双一社長は
7月8日、東京都内での会見で反省の弁を述べた。
イオンは、昨年4月の消費税増税に伴って消費者が節約志向を強め、
価格を重視した消費行動を取ると想定。
メーカー品よりも価格が1、2割安いトップバリュをそろえて
顧客を取り込もうとしたが、どの店でも
トップバリュの商品ばかりが目立つ売り場となった結果、
「買い物をする楽しみに乏しい」(千葉県内の60代の主婦)
といった来店客の不評を買った。
客足は遠のき、GMSを展開するイオンリテールの15年2月期の既存店客数は
前期比で4%弱減り、連結営業利益は90.8%減の
25億円と激減した。
◆生本マグロに自信
増税の影響を見越した戦略が、結果に結びつかなかった反省もあり、
今年度はPBの魅力改善を具体化する商品を矢継ぎ早に投入している。
その象徴が、6月にトップバリュの一つとして売り出した
「奄美生まれ生本マグロ」だ。
品質や価格で天然物のマグロに引けを取らない商品として
自信を持っており、イオンリテールの土谷美津子取締役は
「築地の仲卸しや料理店の方など、
プロに太鼓判を押してもらった味です」と胸を張る。
一つの商品だけでは改革が実を結ぶわけでは当然なく、
2の矢、3の矢と魅力ある商品を次々と提供しなければ
顧客は変化を実感できない。
このため今春以降、「ギリシャヨーグルト」や
「五島塩のローストビーフ/ローストポーク」といった
付加価値を高めたトップバリュの新商品を続々投入してきた。
今月6日には、環境配慮の認証を受けたノルウェーの施設が養殖した
サーモンのPB品「グリーンアイ 生アトランティックサーモン」の取り扱い店を、
従来の約400店舗からグループ約1,200店舗に広げた。
オランダに本部を置くNPO、水産養殖管理協議会(ASC)の認証表示がある刺し身や
切り身として販売。ASC認証は
稚魚の乱獲や水質汚染、劣悪な労働条件などを防いでいる養殖施設に与えられる。
「認知度はまだ低いが(ASC表示のある商品は)今後伸びるはずだ」
(土谷氏)と期待する。
イオンは今秋以降も、継続的に高付加価値型のPB商品を売り出し、
変革を強くアピールしたい考えだ。
一方で、既存の加工品のトップバリュ商品も対象に、
大規模なスクラップ&ビルドを進める。
トップシェアを持つナショナルブランド(NB)商品に近い高品質で開発した既存品も含め、
リニューアルしても販売目標に届かないと判断した場合は
販売を取りやめる方針だ。
厳しい基準で見直した結果、
相当の数のトップバリュ商品が今年度中に姿を消す可能性もある。
◆徹底した顧客目線へ
「GMS改革はまだ道半ば」(イオンの岡田元也社長)と認めるように、
遅ればせながらもイオンが攻守両面でPB改革を進める間に、
ライバルのセブン&アイは先を行っている。
地域ごとに異なる食文化などに合わせて「ご当地」の味付けのメニューを売り出したり、
売れている商品でも絶えず味の改良を重ね、
価格以上の価値を生み出すのに余念がない。
それによって既存顧客のリピートを増やしながら、
新たな顧客の開拓にもつなげている。
セブン&アイの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)は
「安かろう、まずかろうでは今は売れない。
質の追求でPBに革命を起こした」と語り、
他社との絶対的な差異化をセブンは図ることができたと自負する。
改革に向けたイオンの取り組みは、
トップバリュの中長期的な方向性を描き切れていないなど
物足りなさも残す。ライバルも
あの手この手を繰り出す中で、
消費者の足を自らの店舗に向かわせるには、
徹底した顧客目線への転換が欠かせない。
イオンのPB改革が成功するかどうかは、
消費者に寄り添った商品や売り場づくりを
いかに早く実現できるかにかかっているといえそうだ。
(永田岳彦)
http://news.goo.ne.jp/article/businessi/business/fbi20150823000.html