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数字で語る!「スピーチの心理学」[1]

2015年09月06日 14時06分49秒 | 学習支援・研究
孫正義、ジョブズ、鈴木敏文……数字で語る!「スピーチの心理学」[1]

08月29日 10:21
プレジデントオンライン


数字で語る!「スピーチの心理学」[1]
(プレジデントオンライン)
PRESIDENT 2015年3月30日号 掲載


コミュニケーションとしての数字の強み・特徴を知っている名経営者は、
話すときも上手に数字を駆使している。
具体性、翻訳、比較……名経営者のテクニックを学ぼう。

数字を語るな数字で語れ
「会計の数字は飛行機の操縦席にあるメーターみたいなもの。
実態を表していなければ正しい方向に操縦はできない」(『稲盛和夫の実学』より)

数字にまつわる名言を残した著名な経営者は多い。
その発言を集めていくと気がつくことがある。

例えば「10秒考えてわからないものは、それ以上考えても無駄だ」(孫正義)、
「素晴らしい計画は不要だ。計画は5%、実行が95%だ」(カルロス・ゴーン)
というように、優れた経営者はメッセージに
「たくさん」とか「何度も」といったあやふやな表現ではなく、
具体的な数字で語っているのだ。

しかも、数字の「3」を用いる傾向がある。
「発明には3つのパターンしかない」(孫正義)、
「iPhoneには画期的なポイントが3つある」(スティーブ・ジョブズ)。

「3」という数字に強みがあるのだろうか。

「伝えたいメッセージが10あるとします。
でも、それを文書で読ませるなら別ですが、
談話や講演で伝える場合、
10では多すぎて受け手の頭に入らない。
メッセージを3つに絞ることで
ひとつひとつの意味が強調できるし印象にも残る。
その意味で3は重要な数字だと思います」
と語るのは、多くの企業人が学ぶ
グロービス経営大学院の東京校で論理思考系科目を担当する鈴木健一氏。

数字はコミュニケーションのひとつの手段である。
数字をキーワードのように使うことで、
聴き手の注意を集中させるのだ。

しかし、実際に数字を使って説得力のある話やプレゼンを行うのは、
そう簡単なことではない。

「ウチの学生の大半は経営者になることを目標にしており意識は高い。
でも、その6割近くは数字を使ったコミュニケーションは苦手と答えます」と語る。
鈴木氏はその苦手意識を払拭するコツがあるという。

「苦手だと思うのは、はじめに数字ありきの発想があるからです。
統計などを基にしたグラフや表を集め、
それを分析したうえで説得しようとするからつまらなくなる。
数字を言葉に置き換えることはもちろん大事ですが、
言葉を数字に置き換えることもそれ以上に重要。
その発想の転換で、数字は
聞く側の興味をそそる『活きた』ものになっていきます」

先駆的なシステム開発で注目される
アイズファクトリー社長の大場智康氏もこう語っている。
「大切なのは数字『を』語ることではなく、
数字『で』語ること」
(プレジデント誌2013年12月2日号)

鈴木氏の講義では、その感覚を身につけるため、
経営とは関係がない数字に関連する課題を出すことがある。
たとえば「愛の値段はいくら?」というものだ。

物語があれば数字は面白くなる
「愛」という言葉で受ける感覚は人それぞれだろう。
愛に値段はつけられないという人がいるかもしれないが、
それでは回答にならない。
愛する相手へのプレゼント代ということも考えられるが、
これも単純すぎる。ここでは
「愛」という抽象的な概念を具体的な値段に置き換えて
回答することが求められるのだ。

メディアではよく独身女性が
結婚相手に望む年収の調査結果が取り上げられるが、
これも愛の値段ではない。
年収1億円あれば愛がなくても結婚する女性はいるだろうし、
200万でもいいという人もいる。

鈴木氏が回答例として取り上げたのはアクサ生命が
調査したデータを基にしたレポート。
働く女性(25〜44歳)が男性に求める年収を問うて出た平均額は
552万円。アクサ生命の調査はこれにとどまらず、
「心から愛せる相手が現れたとして、
その年収がいくらなら結婚できますか?」というデータも集めた。
その平均は270万円。
つまり552万円から270万円を引いた282万円を
「愛」の値段と解釈するわけだ。

「これがベストの回答というわけではなく、
多様な回答があっていい。
ただ、ここで私が言いたいのは、
こうしたストーリーラインで数字をとらえる感覚が大事だということです。
ストーリーがあれば数字は面白くなりますし、
説得力のある話もできるわけです」

数字に慣れ、言葉を数字に
翻訳できるようになるとデータ分析自体が面白くなってくる。

「私は授業で御手洗冨士夫(キヤノン会長)さんの
『数字なき物語も、物語なき数字も意味はない』」
という言葉をよく引用するのですが、
数字は目的とそれに向かう手段を結びつけるストーリーを生むのです。
売り上げや販売の数字を目標に掲げて社員を鼓舞する経営者がいますが、
それでは人は動かない。
数字でストーリーラインを示し、
人を納得させることが重要なのです」

数字は物語にリアリティを生む。
数字力を身につけると発するメッセージに
説得力が加わるのだ。

▼名経営者たちのメッセージ“具体的な数字で語れ”
スティーブ・ジョブズ
●アップル
「今までに売れたiPhoneは400万台。
400万を200日で割ると、
1日平均2万台のiPhoneが売れたことになる」
(『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』より)

孫正義
●ソフトバンク
「ビジネスプランは1000通り作ってからこい」
(『孫正義 名語録』より)

似鳥昭雄
●ニトリ
「正確な日時や金額など、数字の入っていない会話は、
ビジネスの会話ではありません。それは遊びです」
(プレジデント誌09年3月30日号より)

(相澤光一=構成)

http://news.goo.ne.jp/article/president/bizskills/president_16002.html