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売れ続ける車と下がり続ける株価-マツダ

2015年09月14日 13時28分08秒 | 学習支援・研究
マツダ、売れ続ける車と下がり続ける株価
2015/9/14 5:30

3勝20敗――。
この1カ月間のマツダ株の星取表だ。
上昇した日を勝ち、
下落した日を負けと数えると大幅な負け越しだ。
この間の株価下落率は2割強に達し、
日経平均株価や他の自動車株と比べてもその下落ぶりは突出している。
一方で本業の新車販売はというと、
国内外で順風満帆。売れ行きは明らかに同業他社をしのぐ。
このギャップはどこから来るのか――。



写真:画像の拡大
売れれば売れるほどマツダは豪ドルの影響を受けやすくなる
(マツダのSUV「CX―5」)


「飛んで火に入る夏の虫になっちゃったよね……」(マツダ幹部)。
マツダは8月31日から9月4日の5日間、
久しぶりとなる個人投資家向け説明会を福岡市、仙台市、
札幌市、名古屋市、大阪市で開催した。
全国行脚の強行軍を担当したのは
財務本部長の藤本哲也執行役員だ。
株価が下げ止まらず個人株主の不満が高まる中でのIR行脚。
居心地が悪かったであろうことは想像に難くない。
 
足元の新車販売は好調だ。
4~6月を見ても同業他社の多くが
2ケタ減と苦戦する国内販売でマツダは
多目的スポーツ車(SUV)「CX―3」の新車投入効果もあり44%増と気を吐いた。
7月の国内販売(速報)も35%増と勢いは続く。
海外では堅調な欧米に加え、景気減速感が強まる中国ですら、
マツダの販売は8月まで7カ月連続プラスと伸びている。

なぜ株価が下げ続けるのか。
背景には3つの要因が絡んでいる。
最大の理由は、実はマツダには
制御不能な外部要因だ。

原油価格下落により豪ドルが急落しているのだ。

豪ドルは11日時点で1ドル=85円程度と約3年ぶりの安値圏にある。
マツダは為替抵抗力を付けようと海外生産を強化し、
米ドルやユーロの感応度はそれぞれ年間営業利益ベースで13億円、
18億円まで下がった。しかしオーストラリア向けは輸出対応のままだ。

豪州ではSUVの「CX―5」が同セグメント(補足:Cセグメント?)で
販売首位になるなど販売が伸び、
シェアは1割弱(1~7月)とトヨタに次ぐ2位の座につける。
販売が伸びた結果、幸か不幸か、
対豪ドルでの感応度は年25億円と最近では最も高い水準にあり、
米ドルやユーロも上回っている状況だ。
3カ月で10円近く進んだ豪ドル安は、
このままだと年200億円以上の営業減益要因になりかねない。

第2に一部の投資家が不透明要因として懸念しているのが、
タカタのエアバッグ問題だ。
タカタは今期に入ってからも5月に米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)と
全米で約3,400万個(その後2340万個に修正)のエアバッグを
リコール(回収・無償修理)することで合意しており、
完成車メーカー各社は4~6月期決算で相次ぎリコール費用の追加引き当てを行った。
しかし「マツダだけがまだ追加引き当てをほとんどしていない」(米ヘッジファンド)。
今後いつ、どの程度の規模で引き当てが生じるのか。
明らかになるまでマツダ株は買いにくいとの指摘も増えてきた。

第3に、マツダが今、株主構成の変革期にあるという遠因もある。
米フォード・モーターが2010年に筆頭株主の座を降りてから、
マツダの筆頭株主は米資産運用大手のアライアンス・バーンスタイン、
同フランクリン・テンプルトン・インベストメンツなど
いわゆるバリュー投資家だった。
だが業績回復に比例した過去2年の株価上昇を受けて
両社とも徐々に株を売却しており、
足元では上位10株主から姿を消したもようだ。

マツダ株を買っていたバリュー投資家が姿を消しつつある一方、
登場し始めているのがグロース投資家だ。
欧州の年金を運用するあるファンドは
「成長株としてマツダに投資している」という。
だが実はマツダの増益率は次第に鈍ってきている。
3期連続で営業最高益を見込む今期の増益率は前期比4%増。
15年3月期の11%増、14年3月期の3.4倍と比べると勢いは落ちる。

「バリュー投資家が去る流れと
グロース投資家が入ってくる資金フローの勢いに、
差があるのではないか」。
ある外資系アナリストは
株価下落の背景に需給のギャップがあると分析する。

マツダ株が勢いを取り戻すのはいつか。
市場関係者の多くは
「新車販売など本業は好調。
押し目買いが絶対どこかで入ってくる」とみるが、
下げがきついうちは手を出しあぐねているのが実情だ。
当面は豪ドル安やタカタ問題といった外部の懸念材料を、
国内外の販売実績を上げ続けるという腕力で
はねのけられるかどうかにかかっている。
(奥貴史)

http://www.nikkei.com/markets/kigyo/editors.aspx?g=DGXMZO9163585011092015000000&n_cid=TPRN0001

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