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女は二度決断する

2018-04-27 22:54:24 | 映画

一番はダイアンクルーガーの素晴らしい演技だ。引き込まれていく。
「家族 」「正義 」「海」なるサブタイトルの三部作になっている。

ドイツハンブルグ。
トルコ系移民の多い街の夫の事務所が爆破される。カティアはスパに行くため、事務所に子どもを預けていた。
一瞬にして、愛する夫と息子を爆破事件で失うカティア(ダイアン)

失意のなか浴室で両手首を切り自殺しかけたときに友人の弁護士ダニーロから容疑者が逮捕されたとの電話。
弁護士は絶対有罪にすると法廷で懸命に闘うのだが、被告側の弁護士ハーバーベッグはさらに巧妙な論陣を張ってくる。
カティア が失意の時、気を休めるため薬物を摂った事実から、被告側はカティアの薬物鑑定を主張する。カティアの証言は薬物中毒で信憑性が疑わしいというのだ。また被告夫妻は犯行時にはギリシャのホテル宿泊していたと、宿帳が提出される。アリバイだ。しかし即座に彼等がネオナチの一味であり、ホテルの支配人は極右政権党のメンバーだとの証拠を提示される。
被告の父親の決定的な証言もあり、判決は決まったかにみえた。

されど何と無罪。疑わしきは罰せずの原則だが、無実ではないと付論する。法廷劇も見もの。
司法としては、二審に委ねたのか、もう少し明確な証拠を求めたかったのだろうか。
カティアの失望、落胆は想像に難くない。
復讐の行動に繋がっていく。

カティアは単独ギリシャに向かう。
海辺のホテルをベースに犯人夫妻が泊まったというホテルを探す。突き止めて従業員にスマホで犯人夫妻の写真を見せ、ギリシャ人しか泊まらないとの証言をひきだす。

ついにキャンピングカーでギリシャの海岸で釈放され自由を楽しんでいる犯人夫妻の居場所を突き止め、復讐を企てるのだが…。


ダイアンは、カティアの言い知れぬ失意、荒んでいくハート、バランスを取り戻していく姿、優しさ、希望、焦燥、心の動きを見事に表現する。

ギリシャにて、彼女は弁護士の上告の勧めに感謝し、上告期限の八時に落ち合い、美味しいパンを食べる約束を交わす。


されど彼女の心理は…。


素晴らしい作品だが、ラストシーンをどう理解するのか。私には不可解だ。
識者はラストシーン後に流れる歌に救われる、とか言うが、全然私には正直分からない。一度断念したかにも見えたし、彼女は生理用品を買ったのだから、人間の複雑な心の動きか。
私も失意に包まれてしまった。

全編に流れるメタファーを気にすると映画が理屈ぽくなるので、そこまではコミットするつもりはさらさらないが、よく計算されて役者の演技力を最大限に引き出し、ドキュメンタリー的な映像を観てるような気にもさせてくれる。

テアトル新宿で他の映画を観ないで武蔵野館でこの作品にして良かった。
おそらく、時間が経過しても心に残り続ける作品の一つになるような気がする。

ギリシャの海辺のシーンで、マリアカラスを思い出したり、海辺のホテルでは、カトリーヌドヌーブの「海辺のホテルにて」を思い出してしまうという、余り作品に関係ないこと。を想起してしまった。

ドイツの移民政策の実態、深刻な問題の一側面をみさせられたのかもしれない。