総務省の人口推計によれば、2022年10月1日時点の日本の総人口は1億2,495万人。実はそのうちの約三分の一に当たる3,624万人(29%)は65歳以上の高齢者で、75歳以上の(いわゆる)後期高齢者に限っても、1936万人と既に15.5%に達しています。
そして、今から約1年半後の2025年以降、日本の人口のボリュームゾーンである団塊の世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上となり、日本人の5人1人が「後期高齢者という人類史上かつて経験したことのない超高齢社会を(しばらくの間)我々は生きていくことになります。
そうした時代の流れを踏まえてか、日本銀行が今年6月に行った『生活意識に関するアンケート調査』によると、「1年前と比べて景気は悪くなった」と答えた人は回答者全体の約半数(49.6%)。「1年後の景気は悪くなる」と回答した人も約三分の一(32.4%)に及び、多くの日本人が未来に希望を抱けなくなっている状況が現実のものとなっています。
今から半世紀以上も前の1960年代、テレビの黎明期に人気漫談師として一世を風靡したのが「東京ぼん太」師匠。唐草模様の風呂敷包みを背負った「おのぼりさん」姿がトレードマークだった彼の決め台詞は、「夢もチボーもない…」というものでした。
時代はまさに上り調子の高度成長期。(団塊の世代を中心とした)多くの地方の若者たちはそれでも希望に溢れ、集団就職の列車に乗って続々と都会へと押し寄せてきていました。しかし、そんな彼らも後期高齢者となり未来に希望を抱くことが難しくなった昨今、彼らの子や孫たちの将来にはさらに絶望的な時間が待っているというのでしょうか。
そうした折、(今から少し前)6月1日の日本経済新聞の経済コラム『大機小機』に「令和日本の夢、実現の鍵はDX」と題する一文が掲載されていたので、参考までにその概要を小欄に残しておきたいと思います。
人口減少のただ中にある日本。周囲を見回せば、知らぬ間に目につくのは外国人ばかりとなり、しかも所得が増えないこの国が一体どこに漂着するのかが不安になると、筆者はコラムの冒頭に綴っています。
かつて、日本の夢は所得を倍増させ、欧米の生活水準に追いつくことだった。この夢を目指し国民は懸命に働いたが、欧米に並んだ瞬間に目標を見失い、結果として停滞に迷い込んだというのが現状に対する筆者の見解です。
例えば、政府は人口減への対策を講じるが、青の内容は札束で頬を張るに近い。発想が「産めよ殖やせよ」の延長線上にしかないままでは、成果は期待できないと筆者は言います。日本経済が停滞しているとはいえ、世界的な基準では依然として豊かで社会の不満は大きくない。そうした中、国民の真の願望を察知し即応しなければ、少子化対策は空振りするだろうということです。
「本筋」は、経済面以外の夢を描くことにある…筆者はこのコラムでそう指摘しています。現代的な豊かさの尺度は生活の質に移った。自由時間や家族との時間をより充実させること、これらを得るため、多くの国民は義務的に働くというのが筆者の認識です。
そこに解決策はないのか。問題を解くカギはデジタルトランスフォーメーション(DX)、すなわちデジタル技術の応用と、そのさらなる深化にあると筆者はここで話しています。
コロナ禍を経て、国民はDXにより通勤地獄から解放されることを知った。必要に応じて職場に出向くだけでほぼ全ての仕事が完了する。製造現場の多くは自動化でき購買はネット化できる。これは、役所との関係も同様だと筆者は言います。
教育の世界でも、(毎日学校に通わずとも)基本的な知識はオンラインで教えられることに我々は気づいた。教員は応用や実験を指導すればいいのであり、「教育資源の再配分」が必須となるということです。
時代は既に「将来の人材のベースはデジタルにある」ことを銘記すべき段階に来ている。そのためには、まずはデジタル技術を活かし、社会システムそのものをデジタルを前提としたものに改めていく必要があると筆者はしています。
例えば、診断に人工知能を多用することで医療は革命的に姿が変わる。それを阻むのは主に旧来の規制であり、制度を刷新すれば、地方でも高度医療を享受できるようになるというのが筆者の見解です。
同様に、DXを生かせば仕事、消費、教育、医療など、大都市を離れても何不自由ない生活が実現する。広い家と豊かな自然環境も得られ、(とすれば)もう一人家族を増やしたいということにもなるだろうということです。
さらにDXが進めば、大都市の人口が分散するという防災上の利点も生じると筆者は話しています。困るのは都市部で財を築いた既得権者だけに近い。デジタル技術によって社会のシステムは大きく変わり、既存の価値観にも革新的な変化がもたらされるだろうということです。
願わくばこの日本の将来を、若者たちが将来を語れる「夢も希望もある」世の中にしたいもの。夢を描き、実現に向けた具体策を講じるのが政治であり、ぜひとも質的な豊かさを追求してほしいとこのコラムを結ぶ筆者の指摘を、私も興味深く読んだところです。
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