小池百合子都知事の支援を受けた現職の石川雅己氏(75)が5選を果たした2月5日の千代田区長選挙。与謝野馨元官房長官の甥で自民党都連(のドンこと内田茂地元都議)が推す新人の与謝野信氏(41)との「代理戦争」として注目を集めましたが、結果は(ご存じのとおり)東京大改革を掲げる小池知事側の圧勝に終わりました。
選挙戦を終えた石川氏は、テレビの速報で当選確実が伝えられると「今回の勝利は小池知事の支援のたまもの。ともに次の政治ステージに向け知事と力を尽くしていきたい」と語ったということです。
また当の小池知事も(選挙期間中の演説で)「代理選挙などと言われているが、その通りだ。この戦いに勝って、東京大改革を進めさせてほしい」などと語っており、自民都連との対決姿勢をより鮮明にさせていた姿が印象に残ります。
2月6日の産経新聞によれば、石川氏の選挙ポスターは小池氏とのツーショット。キャッチフレーズも小池知事の「都民ファースト」にならった「区民ファースト」で、スタッフは(小池氏知事のイメージカラーである)緑のジャンパーを着用するなど、「小池カラー」を前面に押し出した選挙戦であったことが窺われます。
さて、今回の選挙で5選を果たした石川氏は、1995年まで青島幸男都知事の下で港湾局長や福祉局長を務めた剛腕の元東京都職員として知られています。石原慎太郎都知事が就任した1999年に東京都を去り首都高速道路公団に天下った後、2001年に千代田区長選挙に無所属で出馬し以降4回連続で当選してきた、都民の感覚から言えば(いわば「都政改革」とは正反対のポジションにいる)バリバリのコンサバと言ってもよいかもしれません。
「週刊現代」誌などには、そんな石川氏を区長に引っ張ってきたのは内田氏だったという記事も掲載されています。記事によれば、(再選を重ねるうち)千代田区内の大型開発プロジェクトに口を出す内田氏に反発するようになった石川区長は次第に内田氏を無視するようになり、最終的に「都連のドン」の怒りを買って今回に繋がる対立構造が生まれたということです。
いずれにしても、報道のされ方などを見る限り、これだけ話題になったにもかかわらず、今回の区長選挙において(区民の間で)区政のありかたなどに関する議論が深められたとういうような印象を(ほとんど)持つことはできませんでした。
「敵の敵は味方」という言葉もありますが、いずれにしても権力闘争としての政治の世界では「勝ち負け」こそが重要で、(「区民ファースト」を標榜する割には)住民不在のまま話題ばかりが先行するのはやむを得ないことなのかもしれません。
2月6日の日経新聞では、『小池旋風で「区政」吹き飛ぶ』との記事を掲載し(そうした視点から)今回の千代田区長選挙の総括を試みています。
内田茂氏への対抗心から小池氏が参戦し(7月の都議選の前哨戦と位置付けられたことで)異常な盛り上がりをみせた今回の千代田区長選挙。それが投票率の上昇につながった点はプラスだったけれど、その陰で区政の課題は注目されなかった印象が拭えないと、記事は厳しく指摘しています。
千代田区は極めて特殊な自治体だと記事は説明しています。資本金1億円を超す企業が1600社も立地し、住民も富裕層が多い。一般会計の予算規模は2016年度で558億円と、10年前に比べて100億円以上も膨らんでいるということです。
丸の内、大手町、秋葉原などを抱えて昼間は80万人以上の人々でにぎわう千代田区は、実際は、夜間の人口が約5万9千人と13分の1にまで急減する23区のなかでも断トツに少ない自治体です。
こうした(毎日起こる)人口変動は、千代田区政に二面性を強いていると記事はしています。例えば、日常の防災対策。5万9千人の区民の安全を守るためには、区内の居住者だけでなく、当然80万人の「昼間区民」も念頭に置かなければならないのは言うまでもありません。
石川区長は(豊富な財源を背景に)医療費を18歳まで無料化し、待機児童をゼロにするなど少子化対策を推進してきたということです。それが近年の(千代田区の)人口回復の一因でもあるようですが、世帯の半分が単身という千代田区ならではの事情もあって、在宅介護をどう充実するのかという課題も生まれていると記事は指摘しています。
戦後の特別区制が始まって今年で70年。記事によれば、他道府県では市町村の仕事である上下水道や消防などを東京の区部では都が担っているが故に、23区の権限は限定的で、口の悪い人からは「半人前」と言われているようです。
思い起こせば石川区長は、2001年に東京都と対等な立場を求めて千代田市構想を打ち出し、都に対して権限や財源の移譲を強く求めてきました。記事の指摘を受けるまでもなく、そんな石川区長と小池都知事が呉越同舟の蜜月ぶりを見せている現状に(不思議な)違和感を覚えるのは私だけではないでしょう。
都政大改革の掛け声のもと、千代田区民は一体何を選択したのか。
地域の生活を支える基礎自治体の代表を選ぶ選挙に、(思いっきり)政局を持ち込む小池知事の姿勢に何とも残念な気持ちになったのは私だけでしょうか?今年7月2日に予定されている東京都議会選挙に向け、都民はもう少し冷静になってみる必要があるのではないかと、この記事から私も改めて感じたところです。
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