次第に落ち着きが見られるようになった新型コロナの感染拡大。一方、それとタイミングを合わせるかのように次々と明るみに出る「持続化給付金」を巡る詐欺事件の数々に、世の真面目なおじ様方やおば様方は驚きを隠しきれないようです。
6月2日には2億円の不正受給疑惑でコンサルタント会社社長ら3人が、さらには東京国税局職員を含む男女7人が逮捕されました。6月13日には、過去最大規模となる約1800件、およそ10億円の給付金をだまし取ったとされる容疑者が、インドネシアで身柄を確保されています。
このような報道を前にして、今年90歳を迎える私の母親も「それにしても、最近の若い人たちは…」と、非難とも落胆ともつかない言葉を口にしてはばかりません。
ちょっとばかりのお金を儲けるためにそんなことでズルをして、(世間や自分に)恥ずかしいと思わないのか。つまらない誤魔化しで一生を棒に振るなんて、親御さんも泣いているだろうと、給付金詐欺に絡んだ若者たちの感覚を理解できない様子です。
もともとこの持続化給付金に関しては、素早い給付を優先するがゆえに「審査がザル」との声も多く、当初から不正受給が横行する可能性が指摘されていました。そうした中、ここにきて急に摘発が続いているのは、元締の下に多くの紹介者が存在するという組織的な犯行の横行に、警察が業を煮やしたためとも言われています。
摘発されている多くの事件の場合、コンサルタント名乗る詐欺の首謀者がセミナーなどを主宰し学生や主婦を勧誘。「手元資金不要」「合法」「必ず儲かる」などの売り文句の下で、さらにネットなどを通じて裾野を広げていくといった形をとっているようです。
具体的にどうするかと言えば、元締が申請に必要な確定申告書を用意して電話でネット申請の方法を指南するというもの。こうして申請者が100万円を受け取れば、紹介者が10万円、元締が20万~40万円を取り、場合によっては「さらに儲かる」と甘言を弄して全額を巻き上げるケースなどもあるようです。
問題は、「給付金は誰でももらえるもの」とそそのかされたが故に、申請者の多くに罪の意識がないこと。怪しい話だと薄々は感じながらも、できればこのままやり過ごしたいと、(ひやひやしながらも)黙ってじっとしている人も(きっと)多いことでしょう。
制度を所管する中小企業庁は、これまで支給された持続化給付金約5.5兆円、約424万件のうち、5月26日時点で不正認定されたのは個人と法人合わせて1218件で、総額は約12億2600万円に上るとしています。
また、同庁は(かねてから)不正申請者が自ら返金を申し出た場合は刑事告訴などは求めない姿勢をとっているため、既に2万件、160億円を超える自主的な返金を受けているということです。
これを「氷山の一角」と見るかどうかは人それぞれでしょうが、犯罪を取り締まる立場の警察庁の発表を見ると、事態はもう少し深刻なもののように映ります。
警察庁の資料によると、持続化給付金の給付金の不正受給による被害額は5月末までに32億円を超えており、3700人以上が既に容疑者として摘発されているということです。摘発者を年代別に見ると、最も多いのが20歳代で全体の62%を占め、これに10歳代を含めると、摘発された容疑者の実に約7割が10代20代の若者で占めるとされています。
6月12日の日本経済新聞の記事(「給付金詐取横行 SNSで組織化」)によれば、国民生活センターには2020年5月の制度開始直後から、若者得お中心に「友人の誘いに乗って受給申請してしまった」「給付金を返還したい」といった相談が相次いでいるということです。
いわゆる「儲け話」のひとつとしてSNSなどで友人や先輩などの身近な人から勧誘された。犯罪の認識のないまま軽い気持ちで不正受給してしまったが、一体どうすればよいかといったケースが後を絶たないとされています。
「みんながやっていること」「自分だけ馬鹿を見るのはイヤ」「相手はお役所、上手くいけばラッキー」…深く考えることなく、「乗り遅れたくない」といった軽いノリで犯罪に手を染めてしまった若者が多いことは想像に難くありません。
もちろん一方には、生活に窮する若者が増えているという現状もあるのでしょう。しかし、それ自体は何の言い訳にもなりません。思えばこの日本の社会で、決まりを守って真面目に暮らすのはいつから「カッコ悪い」ものになったのか。
損をしないように「うまく立ち回りたい」と考えるイマドキの若者たち。彼らにルールを守ることの大切さを教え、範を示せるのは、結局のところ親世代に当たる団塊ジュニアしかいないような気もします。
「見つからなければいい」ということで本当に良いのか。この際、お父さんやお母さんの(遅すぎた)戒めに、大いに期待したいところです。
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