MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2395 若者に結婚してもらいたいなら

2023年04月13日 | 社会・経済

 2月28日に厚生労働省が公表した統計によると、昨年1年間に国内で生まれた赤ちゃんの数は初めて80万人を割り込み、7年連続で過去最少を更新したとされています。この数字は、これまでの推計よりも10年以上早いペースで少子化が進んでいることを示しており、危機的な状況と指摘する専門家も多いようです 

 国内におけるこうした少子化の動きをとらえ、政府は子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」を今年の4月に発足させました。厚生労働省や内閣府に分かれていた関連部署に民間や自治体の人材も加え、行政の縦割りを廃し、430人体制で子育て支援の充実や虐待防止、貧困対策などに迅速に対応するということです。

 なぜ、日本の少子化はこれほどまでに急激に進んだのか。欧米などに比べ未婚の親から生まれる子供(いわゆる「婚外子」)の数が少ない日本では、若い世代の未婚化や晩婚化の進展がその大きな理由の一つに挙げられているようです。結婚した夫婦から生まれている子供の数に(以前と)大きな変化がないことからも、どうやらその仮説の信憑性は高そうです。

 実際、この日本では未婚率の上昇傾向に歯止めがかからない状況が続いています。1985年と2015年を比較では、30代前半の男性の未婚率は28.2%から47.1%に大きく上昇しており、同世代の女性の未婚率も10.4%から34.6%へと3倍以上に増えている状況です。

 こうした中、ポータルサイトのBIGLOBEが今年の2月に全国の18歳から25歳までの男女500人を対象に実施した結婚と出産に関する調査では、回答者のうち「将来結婚して、子どもがほしい」と回答した割合は44.9%、「将来結婚というかたちにこだわらなくても子どもはほしい」とした9.4%を加えても約半数だったとされています。

 一方、「将来結婚はしたいが、子どもはほしくない」は9.6%、「将来結婚もしたくないし、子どももほしくない」が36.1%に達しており、結果、「将来、子どもがほしくない」というZ世代は実に45.7%に及んでいたということです。

 因みに、「将来、子どもがほしくない」と回答した男女209人に「子どもがほしいと思わない理由」について質問したところ、「お金の問題」と回答した割合は17.7%で、「お金の問題以外」は42.1%、「両方」が40.2%という結果に。そこで彼らに、「お金の問題以外で子どもがほしいと思わない理由」について質問(複数回答)した結果、「育てる自信がないから」が52.3%、「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」が45.9%、「自由がなくなる(自分の時間を制約されてたくない)から」が36%と上位を占めたとされています。

 さて、人口減少への危機が叫ばれながら、結局20年以上も改善の見込みが立たなかった日本の少子化問題。政府が本気で少子化対策を進めようと考えているならば、「打てる手はすべて打つ」というくらいの覚悟が必要でしょう。

 まずは(とりあえず)若者に結婚をしてもらうこと。そのためのひとつのアイディアが、3月5日の日本経済新聞(日曜版)のお悩み相談コーナー「なやみのとびら」にあったので、小欄にその概要を残しておきたいと思います。

 相談の内容は、「30歳を過ぎた未婚の末娘が、友達が(次々)結婚したことなどにより最近イライラして暴言を吐くようになった」というもの。回答者はメディアをまたにかけるプロデューサーの湯川玲子氏です。

 30代になった初めて自分の人生に向き合い、結婚に加えて、仕事のキャリア(多分)など現実的な不満や不安にいっぱいいっぱいになっている娘さん。それを親にぶつけ暴言を吐けるのは、「親は自分を愛してくれる存在だ」という絶対的な確信があるからだと、湯川氏は回答に綴っています。

 「以前は優しい娘だった」という相談者の言葉からは、「親の言うことを聞き、我儘を我慢して生きてきたのにこんなに不幸なのは全て親のせいだ」という(娘さんの)身勝手な論理がスケスケに透けて見える。彼女は「いい年をして甘えている」としか言いようがないというのが、こうした状況に対する氏の見解です。

 そこで、「結論から言えば、娘さんには家を出て独り暮らしをしてもらってはどうか」というのが、氏が示すこの相談に対する解決策です。

 イライラするのにはいろいろな理由があるのでしょうが、まずは彼女の一番のストレスとなっているであろう「結婚できない」について。一人暮らしを始めさせることは、二つの方向から効果があるのではないかと氏は話しています。

 その一つ目は、孤独を経験すること。一人で生活を始めると必ず孤独を味わうことになる。そうなって初めて人は、「誰かと一緒に暮らしたい」という(人としての)根源的な欲望に火が付くと氏はしています。

 そしてもう一つは、結婚の前提となる男女の関係に持ち込みやすい点。一人暮らしであれば、例えば合コンやバーベキューの帰りなど、何となくイイ感じになってお泊りになって、それを切っ掛けにお付き合いが始まるという定番が容易く展開できると氏は言います。

 独り暮らしは、自立生活のスキルを磨き自信をつけるためのベストの方法でもある。本当に娘の将来を考えるのであれば、家から出て行ってもらうしかないというのが氏の提案です。

 もしも、あなた(相談者)に、娘を家から出すことに心理的な抵抗があるとすれば、それは(娘の安全を考える親心よりも)「この先、老後の世話を娘に見てほしい」という無意識の願望があるからなのではないか。実は娘さんの暴言の根底には、その親の意図を肌で感じて、「自分の将来は親の介護だけのノーフューチャーで、それがやりきれない」という気持ちが潜んでいる気もすると氏は言います。

 だからこそ、「親の面倒は見なくてもいいから、一人暮らしをして自分と向き合ってほしい」と覚悟を決めて言い放つことが重要だというのが氏の指摘するところです。

 さて、「少子化対策」の話でした。若い世代が結婚して家庭を持つことを(自分の問題)としてリアルに受け止められないのは、(確かに)いつまでも親の庇護を受けながら実家暮らしを続けているせいではないかというのが、私もこれまで感じてきたところです。

 私自身の経験からいっても、一人暮らしの自由さは不安の裏返し。やりくりの心細さや孤独の中で、家族のありがたさを知る機会ともなるでしょう。もちろんそうした生活の中で、ともに寂しさを抱えた男女が巡り合うことも多いはずです。

 多くの若者が田舎から出てきた昭和の昔と違って、大人になっても実家暮らしが当たり前の現在の若い世代は、親から自立する貴重なチャンスを失っていると言えるのかもしれません。

 そうした中、若者が自立するために行政ができることと言えば、例えば独り暮らしをしようとする若者への住宅の提供や、学生アルバイトの待遇改善など。少なくとも、お役所によるお見合いパーティーの開催やマッチングアプリの提供などよりも効果があるような気がします。

 結婚の前提となるのは、(まずは)成人として精神的に独り立ちすること。「真の親離れ、子離れは、お互いにとって健全な関係と幸福への道なのだ」と話す湯山氏の指摘を、私も興味深く読んだところです。

 



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