新型コロナウイルスの感染拡大を受け、国内の医療機関の経営を支援するため、病床確保対策や医療人材の確保対策、診療報酬の引き上げなど、政府の支援策が様々に打ち込まれてきました。
一方、こうして国庫から矢継ぎ早に補助金や交付金の交付が行われた結果、国公立病院の経営が大幅に改善していることがわかったと4月13日の朝日新聞(デジタル版)が伝えています。(「国の支援手厚すぎた? コロナで国公立病院の経営が大幅改善」2022.4.13)
財務省が財政制度等審議会の分科会で示した資料によれば、全国853の公立病院全体の経常損益は(それまでの赤字から)2020年度に一気に1251億円の黒字に転換。この1年で現預金などの流動資産も2732億円増えているということです。
また、全国に140ある国立病院も、経常黒字が前年比25倍の576億円となり、流動資産は749億円増えたとされています。医療現場への支援は不可欠とはいうものの、赤字体質やむなしとされてきた公的病院がこれほどまでに儲かっているという現実に、4月13日に開かれた財務省の審議会では、支援が手厚すぎたかどうかの検証を求める意見が相次いだということです。
新型コロナ対策で苦境に立たされたとされる病院経営。医師会等からの(そうした)訴えを受け、これまでにない(きわめて)多額の税金が投入されたわけですが、蓋を開ければ「儲けすぎ」の声が上がっているというのも皮肉な話です。
医療機関に配られた膨大なお金はいったいどこへ行ってしまったのか。4月13日の日本経済新聞に「コロナ対策、病院に8兆円 無駄排除へ実態検証欠かせず」と題する記事が掲載されていたので、参考までに小欄で概要を紹介しておきたいと思います。
財務省の発表(4月13日)によれば、新型コロナウイルス対応の医療体制強化にこれまでに約16兆円(赤ちゃんからお年寄りまで、国民一人当たり約13万円)の国費が費やされ、半分の8兆円は医療機関への支援だったと記事はその冒頭に記しています。
コロナ対策では、病床確保の補助金を受け取りながら患者を受け入れない「幽霊病床」の問題が浮上したが、実際、予算の無駄をなくすためには経営実態の解明が欠かせないというのが記事の認識です。
病床確保の補助金や医療従事者の慰労金など、直接医療機関に支給するものに限定しても約8兆円。つまり、国内最大の自治体である東京都の22年度の一般会計予算(7.8兆円)並みの額が、市中の病院や診療所に振り向けられたことになると記事はその規模感を説明しています。
公的病院に限ってもその経営は改善している。国立病院機構傘下の病院の経常収益は20年度に前年度の25倍に拡大し、地域医療機能推進機構(JCHO)傘下の病院も5倍に増えた。公立病院は赤字から黒字に転換し、民間病院や診療所の経営も堅調だということです。
「金額が問題だ」というわけではない。焦点は、巨額の支援が適切に使われたかどうかだと記事は指摘しています。2021年夏の感染第5波では「幽霊病床」の存在が浮き彫りとなり、政府は都道府県に運用状況を把握するよう要請する事態となった。そしてその後も、実態が明らかになったとは言いにくい状況が続いていると記事はしています。
こうした状況を受け、財務省は少なくとも公的病院は補助金の受取額と患者の受け入れ実績を公表すべきだと改めて注文している。医療機関の経営状況が把握しにくいという現状を踏まえ、医療法人の事業報告書の公表義務づけも求めたということです。
因みに、(記事によれば)医療体制に関するコロナ関連支出16兆円のうち2.4兆円はワクチン購入費で、8.8億回分を確保したとされています。そのほかに2.3兆円がワクチン接種費用として積み上げられ、1回あたり税込み2277円、時間外や休日対応などの加算分も含めると、実際には1回の接種で3700円程度が医療機関に支払われているということです。
この8.8億回分は全国民が4回目まで接種しても必要な量を上回っており、足元では英アストラゼネカと契約を結んだ1億2000万回分のうち4000万回分の購入を取り消すなどワクチンの過剰感も出始めていると記事はしています。
一度決めてしまうと、必要もないのにずるずると予算消化に走ってしまうのがお役所仕事の悪い癖。世論の切迫感もあって、「コロナだから」「緊急事態だから」「医療を守るためだから」と慌てて決めた事業であればこそ、費用対効果の検証は欠かせないとする記事の指摘を、私もしっかり受け止めたところです。
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