MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯18 グローバル人材ってだれ?

2013年06月17日 | 社会・経済
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 朝日新聞の日曜日のコラムに、論説主幹の大野博人氏が「グローバル人材ってだれ?」という面白い論評を書いています。(6月16日朝刊「日曜に想う」)

 安倍首相は、先月発表した成長戦略(第1弾)の一つに、今後、国際社会の中で活躍できる「グローバル人材」の育成を掲げています。具体的には、語学力や問題解決能力などの「世界で勝つ」ためのスキルを身につけた若者を国として強力に育成し、日本の成長のために世界で活躍してもらおうという長期的な戦略です。

 単純に聞けば、「ああ、そういうところへの税金の投入も必要なのかな…」とも思うのですが、ここに生じる大野さんの疑問は、そもそもこの戦略によって育成しようとしている「グローバル人材」ってどういう人のことを指してるの?という、極めてシンプルなものです。

 安倍首相が思い描く「グローバルに活躍することができる」彼や彼女は、一体何のために戦おう(そして「勝とう」と)する人材なのか。

 グローバル時代の国際感覚やスキルを身につけた人材が、これからの国家という枠組みを国民とどこまで共有できるのか…これは非常に興味深い問いかけです。

 大野さんの言葉を借りると、「そこで育つのは、例えば多国籍企業が「勝つ」ために能力を発揮する個人」であって、多国籍企業の利益には貢献するかもしれないが、「それが日本という国の「勝ち」にはならない」のではないかということです。

 確かに、グローバル企業の目指すところは国民国家の成長や繁栄ではなく、ましてや国民の幸福でもありません。それは、国家の枠組みを超えたところにある「市場」という空間で、他の様々なグローバル企業との競争に勝つことの一点にあるということができます。

 そもそも公教育というものは、共同体で生きる人々を育てるために存在していた仕組みであって、ビジネス界の要請に応えて「勝てる」人材を育てるものではなかったのではないか、と大野さんは言います。

 ここで、国際感覚を持った人材を育てることを否定するわけではありません。しかし、市場で勝つための人材育成を国家として進めるという政策には、何か違和感を感じるのもまた事実ではないでしょうか。

 日本で普通に暮らす人々を幸せにしてくれる人材とは、一体どういう人たちなのか?…そういう基本的な部分から、この辺で改めて考えてみる必要があるのかもしれません。


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