MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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#2726 The personal is political

2025年01月28日 | 日記・エッセイ・コラム

 なんだかんだ言っても「社会経済研究所」を標榜する以上、現代社会を象徴するようなこの会見に触れておかないわけにもいきません。

 1月27日、引退を表明した元SMAPの中居正広さんと女性のトラブルに局員が関与していたと報じられた問題で、フジテレビは東京・台場の本社において、港浩一社長らによる「やり直し会見」を行いました。

 敢えて制限時間を設けなかった会見は(実際)8時間を超える長時間に及び、日付が28日に突入しても終わらなかった由。X(ツイッター)上では「オールナイト・フジ」がトレンド入りしたほか、「実録27時間テレビ」「月曜日から夜ふかし」「フジテレビで朝まで生テレビ」「生でダラダラ記者会見」など、まるで「大喜利」のような状態になったということです。

 共同通信の報道から経過を追うと、会見の冒頭でフジ・メディア・ホールディングス会長の嘉納修治氏とフジテレビ社長の港浩一氏が引責辞任を表明。「対応に至らないところがあった」と述べるなど会見は謝罪や反省の弁に染まったが、同社で大きな影響力を持つフジサンケイグループ代表の日枝久氏の責任について言葉を濁したことで、参加者からは厳しい声が続出したとされています。

 今回の会見には、外国メディアやフリー記者を含め約430人が参加。前回会見の反省から時間制限が設けられなかったため、混乱や長期戦は免れない様相に。5時間を超えたところで、男性記者が中居さんと女性とのトラブルの事実関係について30分以上、仁王立ちして質問した際には、怒号が飛び交う展開もあったということです。

 中には、フジテレビの自局や系列局の記者からの質問もあり、情報の隠蔽や局員の関与についての厳しいやり取りがあった由。ネット上では、「すごい核心ついてる」「大した覚悟」「フジ記者、がんばれ!」などの盛り上がりを見せたとの報道もありました。

 私自身はこの問題自体にさほどの驚きや興味はありませんが、「テレビ局」や「芸能界」といった閉鎖された特別の空間(社会)の中に、権力の専横を許す、そして女性の人権を軽視するような空気が(濃厚に)あったのはおそらく事実なのでしょう。

 権力の乱用を正し、弱い立場の人々の権利擁護を旨とする報道機関としての立ち位置を慮れば、今回のフジテレビの対応が批判されてもやむ無しとは思いますが、(個人的には)「女性のプライバシー」を盾に事件の経緯や問題の所在を明らかにする姿勢を見せない局側と、感情に任せるばかりで本質に迫ることのできない質問者のダラダラとしたやり取りに、「これ以上付き合いきれないな」とパソコンの電源を落としたのも事実です。

 後の報道(毎日新聞1/28)によれば、会見の模様をリアルタイムで見守る視聴者も多かった由。SNS上では局側の姿勢に疑問を抱く声がある一方で、「腹は立つけど、記者がキレるのは違うでしょ」「(回答の内容より)記者の質が気になる」「一部民意がややフジに同情した感ある」と報道陣の姿勢を批判する声も多く見られたとされ、不用意な発言や訂正の連発に加え、紛糾した場を収拾させることもできない時間無制限のサバイバルレースに、「残ったのはただ疲労感だけ」と感じた人も多かったようです。

 28日の「日刊スポーツ」紙によれば、国際政治学者の三浦瑠麗氏は27日にX(旧ツイッター)を更新。「当事者女性から聞いた話をアウティングする許可を得ていない経営陣に対して、吐け、吐けと責めるショーに見えてしまうけれど、その結果フジテレビに同情が集まってもいい、というのが質問者の判断なのだろうか」と言及したとされています。

 確かに、記者たちの「やった感」の醸成や「疲労待ち」が(会見を設定した)局側の目論見であれば、時間制限を設けず参加メディアも限定しないまま、不明瞭な質問や無駄に長い質問も受け、怒号すら放置するという手法自体は間違っていなかったのかもしれません。

 正に、(今流行りの)パーソナル・イズ・ポリティカル。質問者もメディアの一員であるのなら、自らも属する集団の倫理観が(決して)健全とは言えないことをわかっていないはずはないというもの。誰もが片棒を担いでいる…そうした現実にほっかむりをしたまま、正義漢の仮面をかぶり安全な場所からただフジの経営陣だけを問い詰めても、問題の本質に迫ることができようはずがありません。

 それにしても、どちらがキツネでどちらがタヌキやら。(少なくとも)やたら「正義」を振りかざし、感情に任せて警察官の取り調べのように振舞う質問者と、もぞもぞごそごそと(彼らから)時間と元気を奪うことに成功した局側のやり取りに、辟易としたのは私だけだった訳ではなかったようです。



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