MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2121 性差によって縛られることの不自由さ

2022年03月29日 | 社会・経済

 2月18日のCNNが、LGBTQを自認する米国人の成年が過去10年で3.5%から7.11%にまで倍増し、1990年代の後半から2000年代に生まれたZ世代では21%に及ぶことが判ったと報じています。

 米国の世論調査会社ギャラップ社による最新の調査によれば、増加に寄与しているのは(いわゆる)Z世代で、概ね5人に一人の割合で性的少数者であることを自認しているとされています。一方、1981年~96年生まれのミレニアル世代では自認率が10.5%で(Z世代の)約半分、それより前の世代では割合が徐々に減少していくということです。

 自らをLGBTQとする米国人成人のうち、半数を超える57%近くがバイセクシュアル(両性愛者)であると述べており、これは米国人成人全体の約4%に当たると記事は説明しています。前述の調査によれば、自信をLGBTQだと回答した者のうち20.7%が男性の同性愛者で、13.9%が女性の同性愛者。また10%がトランスジェンダー(出生時に身体で割り振られた性が自身の性同一性と異なること)を自認しているということです。

 記事によれば、専門家らはこうした結果について、LGBTQの権利や表現の向上を指し示すものと説明しているといいうことです。特に、ここ10年ほどでLGBTQの自認に対するレッテル貼りが減り権利が拡大したことから、Z世代以降はより多くの人々がLGBTQを自認する状況となる可能性が高いと指摘しているとしています。

 さて、翻ってわが国における状況はどうなのでしょうか。2019年に、株式会社LGBT 総合研究所が行った(ネットを通じた)意識行動調査では、LGBTQなど、性的少数者に該当すると自認している人は全体の約10%と、約10人に一人がLGBTQに該当するという結果が出ています。

 一方、同年に「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生研究チーム」が実施した調査では、LGBTQに該当する人のみの割合は約3.3%で、「決めたくない・決めていない」など、他の性的少数者も含めた結果が約8.2%と、異なる結果が報告されています。さらに、株式会社電通が2020年12月に全国20~59歳の計60,000人を対象に行った大掛かりな調査では、自らをLGBTQ層に該当すると回答した人は、2018年に行った前回調査と変わらず全回答者の8.9%を占めたということです。

 いずれの調査もインターネットを使ったアンケート形式を採用しているため、(興味のある人しか回答しないことから)数字はある程度高めに出ることはやむを得ないとしても、(この日本でも)概ね8%前後の国民が自身の性になんらかの特殊性があると感じていることになるようです。

 さて、それにしても、世界の新しい価値観をリードする存在と目されている米国のZ世代において、LGBTQの自認率が20%を超えているというのは驚きと言えば驚きです。調査を実施したギャラップによれば、その後の世代ではさらに割合が増える兆候が見られるというのですから、こうした動きは時間の経過とともに加速度的に広がっていくとも考えられます。

 このまま行けば、(まずは意識の上で)人間を「男性」と「女性」とに区別すること自体が意味を失うことになるかもしれません。少なくとも、現在の「性的少数者」という枠組みを見直す必要が出てくることは必至と言えるでしょう。

 そもそも、性に関する意識を、「ストレート」か「LGBTQ」かに分けて考えることが適切なのか。個人個人が様々な感覚を持ち合わせている中で、全く異なる属性の人たちをひとつに括ってしまうこと自体に無理があると考える人も(これから先)増えてくるような気がします。

 生物学的な「性差」の仕組みによって人が生を受けているのは事実としても、少なくとも意識の上では(いわゆる正規分布とはいかなくとも)ひとりひとりの個人がグラデーションの下に置かれているのは事実です。そうした人々を「マイノリティ」の名の下に同じ入れ物の中に閉じ込めて、「彼らに人権を」と叫ぶのも、とても不自由なものの考え方のような気がしてなりません。

 我々が暮らす社会が、(基本的に)「マジョリティ」が暮らしやすいようにデザインされていることは恐らく事実でしょう。で、あればこそ、そのマジョリティの幅を広げることで、社会のシステムはより多くの人々が暮らしやすいものになるのではないか。多様性を重んじる「ダイバシティ」とは、(まさに)そういうことを意味しているのではないかと、こうしたデータを読んで私も改めて考えさせられたところです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿