消費者物価の高騰が続く中、ガス料金や電気料金に加え、生活上の最も重要なインフラである水道料金の値上げが各地で進んでいるようです。
日本水道協会が2020年4月に実施した調査によると、一般的な家庭の水道料金は全国平均で3306円(家庭用20トン)で、10年前と比べて210円(約7%)上がっているということです。その背景には人口減少や設備の老朽化などがあり、20年後の2043年にはさらに40%上昇すると推計されています。
因みに、現在の水道料金を都道府県別に見ると、青森県が4518円で最も高く、最も安いのは神奈川県の2181円とのこと。市町村別では、北海道夕張市が最高の6966円で、最も安い兵庫県赤穂市の869円の8倍となっており、特に市町村では、地域条件により(想像以上の)大きな違いが生じていることが判ります。
このため、各市町村では水道事業経営の効率化が喫緊の課題となっており、国が求める経営の広域化は、深刻化する地域間の料金格差が障壁となってなかなか思惑通りには進んでいないようです。
それぞれの家庭が支払う水道料金にこれほどまでの地域格差が生じる理由には、人口密度や設備老朽化の違い、地形や水源までの距離などの地理的条件などが考えられます。少子高齢化などにより世帯当たりの水道使用量が減っている中、今後人口減少がさらに進めば事態が深刻化するのは明らかでと言えるでしょう。
厚生労働省によると、全国の水道管の総延長は2018年度で約72万キロ。耐用年数を超える老朽管路の割合は17.6%とされ、今後20年間のうちに全体の約4分の1を更新する必要が生じる見込みだということです。
政府はこうした状況の打開策のひとつとして、2019年にコンセッション方式の導入を柱とする水道法の改正を実施。生活の最重要インフラを民間に委ねることに対する様々な反発はあったものの、民間の経営ノウハウを活用した水道の維持や補修の効率化が期待されてきたところです。
こうした制度改正を受け、政令市で水道管の老朽化が最も進んでいる大阪市では、2022年4月を目標に水道管交換事業を民間移譲する計画を進めていたということです。
ところが、大阪市の公募に応じた事業者2グループが、2021年9月の時点で、いずれも採算が取れないと判断して辞退を表明。全国の市町村に先駆けて水道事業を民間移譲するコンセッション方式を導入する試みだっただけに、その影響は他の自治体にも波及していく気配です。
大阪市の計画は、コンセッション方式を導入(事業計画の策定から施工までを一括して民間事業者に移譲)して、2022年度からの16年間で計1800キロ以上の水道管を交換しようというものでした。同市は当初、事業費の総額を16年間で上限3750億円と想定していたようですが、応募していた2つの企業グループが細かく試算したところ、目下の条件では採算が取れないと判断した模様です。
もとより、設備の更新や経営改善が、民間事業者に委ねれば(それで)進むというものではないでしょう。
地方自治体が設備更新のための財源をしっかりと投じなければ設備更新は進まない。もとより、財政基盤の弱い市町村に維持管理を丸投げし、「ちゃんとやってね」と命じるばかりでは、(特に条件の悪い地方部における)公営水道の将来は危機的なものになりかねません。
安全・安心な水道水の安定供給は、国民が生活をするうえでの最も基本的なインフラであるはず。そもそも水道設備の維持更新は、地方自治体が自らの財政力で負担すべきものなのか、そうした基本に立ち返った本質的な議論が必要な時が来ているのではないかと改めて感じているところです。
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