岸田文雄首相が「異次元」と称する政府の少子化対策。その中核をなす「改正子ども・子育て支援法」が今年の6月に成立しました。児童手当の支給額アップや所得制限の解消などに必要な財源として(新たに)「子ども・子育て支援金」が創設され、2026年度から徴収が始まるとされています。
(もちろん)その背景にあるのは、持ち直しの気配すら見せない日本の少子化です。2023年に生まれた日本人の子どもの数、そして合計特殊出生率も過去最低を更新中。そして、この少子化の加速に大きな影響を与えているとされるのが、結婚する人たちの減少です。
ピークだった1970年頃は年間100万組を超えていた婚姻数も、2011年以降は年間60万組台で推移。コロナ禍に見舞われた20~23年には、戦後初めて50万組を割り込むまでに減少しています。
よく言われるように、婚外子が(極端に)少ないこの日本では、少子化の主な要因としてこの「未婚化」が挙げられることが多いようです。実際、(国立社会保障・人口問題研究所によれば)、2020年の「生涯未婚率」(50歳時の未婚率)は男性が約28%、女性が約18%に上昇しており、結婚しない人は増加傾向に歯止めがかかる様子は見られません。
なぜ日本の若者たちは「結婚」に二の足を踏むようになったのか?…こうした疑問に対し、8月29日の総合経済サイト「DIAMOND ONLINE」が、中央大学教授で家族社会学者の山田昌弘氏へのインタビューを踏まえ『「あえて結婚しない女性」が増えた真の理由、実は「仕事や趣味」のせいではなく』と題する記事を掲載しているので、参考までに(2回に分けて)その概要を当欄に残しておきたいと思います。
「多様性」という言葉が強く意識されるようになった日本の現代社会において、男女ともに結婚しない人生を選ぶ人が増えている。実際、1990年と2020年の国勢調査を見ても、25歳~29歳の女性の未婚率は40%から65%、30歳~34歳の女性の未婚率は14%から39%と、大幅に上昇していることがわかると記事はその冒頭に指摘しています。
自由な選択が可能な世の中へと変化して久しいが、一方、それでも依然として、結婚適齢期と呼ばれる20代後半~30代の女性たちは、周囲からの「結婚しないのか」というプレッシャーに晒されている。結婚するかしないかは個人の自由であるはず。しかし、それでも社会にはいまだ古くからの価値観が残っているというのが記事の認識です。
これをより正確に表現するならば、日本社会は『きちんとした相手と結婚する』ことへのプレッシャーが強い社会だということ。なので、例えば非正規雇用の男性と結婚しようとすれば、「そんな相手とは結婚するな」というマイナスのプレッシャーを周囲から与えられることも多いということです。
しかし、男性間の所得格差が広がる中、世間で言うところの「結婚に適した男性」の数自体が減っているという現実も(一方で)存在している。そしてそれゆえに、この日本は結婚しにくい社会になっているのではないかと、山田氏はインタビューで語っているということです。
実際、2022年の就業構造基本調査によると、正規雇用の男性の所得を比較した場合、既婚男性の25~29歳と55~59歳では、年収中央値が424万円から667万円へと約1.6倍増になっている由。これに対し、未婚男性は、同366万円から458万円へと約1.2倍増にとどまっていると記事はしています。
まずは収入の面で結婚の「条件」をクリアできなければ、競争の土俵にも上れないということでしょうか。実際、ネット上に公開されているアンケート調査(「結婚で重視したいことに関する調査」タメニー2026.2)などを見ても、「自分より収入が高い」パートナーを重視する割合は男性19.1%に対し女性は66.1%と、「外で稼ぐ夫」を期待する女性はまだまだ多いようです。
「衣食足りて礼節を知る」「幸せな家庭生活は、まずは家計の安定から」という、若い女性たちの本音をどう受け止めるのか。現役世代からお金を徴収し、子育て世代にバラ撒くことも(時には)必要かもしれませんが、政府には若者や社会の実態を踏まえた「異次元の」対策を打ってほしいと、改めて感じるところです。
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