MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2655 選択的夫婦別姓と、なんだかんだ言って決められない自民党

2024年10月22日 | 社会・経済

 10月22日の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」が、今回の衆議院議員選挙における政策の目玉ともなっている「選択的夫婦別姓」導入問題に触れています。(「選択的夫婦別姓を決められない政治」2024.10.22)

 1996年に法制審議会が導入を盛り込んだ民法の改正要綱を答申したものの、与党内の意見がまとまらないまま議論が先送りされてきた選択的夫婦別姓制度。2021年になって再び自民党内にワーキングチームが立ち上げられ、さらなる検討を行うとこととされたが、ここでも結局意見交換の場は持たれず仕舞い。そして今年、ようやく中断していた議論が再開されたものの、いまだ「期限を設けず丁寧に議論を進める」ことが確認されたにすぎないと、筆者は経緯を綴っています。

 そんな折、今回の自民党総裁選で再び選択的夫婦別姓の導入に日の目が当たったが、なぜかそれもここにきて、政府は再び及び腰になっているというのが筆者の認識です。

 石破首相は就任前のテレビ番組で「やらない理由がよくわからない」と発言するなど、導入に前向きな考えを示していた。しかし、就任後は「国民各層の意見や国会における議論の動向等を踏まえ、さらなる検討をする必要がある」と政府の従来見解を繰り返し、さらに「自民党内で結論を得たい。反対を押し切って結論を得ることはしない」と述べるにとどめているということです。

 この問題について、「石破政権では結論は出さない」という意思表示とも見えるこの発言。民法改正の答申から約30年。世の中が大きく変わる中で、今や婚姻時に夫婦同姓しか選択できない国は日本だけだと筆者は厳しく指摘しています。

 政治家は国民的議論が必要というが、国民の認識は既に深まっている。選択的夫婦別姓に賛成は62%、反対は27%という世論調査もあるし、別の調査では「積極的に結婚したいと思わない理由」として、「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」と答えた女性が3割程度に達しているということです。

 今年になって、経団連は改めて、選択的夫婦別姓制度の早期実現を政府に求める提言をとりまとめた。民法改正案を一刻も早く国会に提出するように促したと筆者は話しています。

 経済界がこうした提言をするのは異例のこと。旧姓の通称使用では様々なトラブルが生じており、企業にとってビジネス上のリスクになっているとも指摘しているということです。

 さて、石破首相としては(前述の発言からして)おそらく夫婦同姓にそれほどまでのこだわりを持っているわけではないのでしょう。実際、海外の多くの国では(選択的)夫婦別姓は当たり前で、それが家族を分断するような大きな問題になっているという話は聞きません。

 一方で、これほどまでに世論が盛り上がっているのに、政府は何故、呆れるほどに及び腰になっているのか。

 国会にしばしば提出されている「選択的夫婦別姓の法制化反対に関する請願」には、①夫婦同姓制度は、夫婦でありながら妻が夫の氏を名乗れない別姓制度よりも、より絆の深い一体感ある夫婦関係・家族関係を築くことのできる制度、②結婚に際し同じ姓となり、新たな家庭を築くという喜びを持つ夫婦の方が圧倒的多数…といった文言が並んでいます。

 しかし、国民の動向を見ても別姓を否定する意見は既に少数派となって久しく、増してやこの制度自体、(「選択的」の言葉どおり)これまでどおり夫婦同姓を名乗れなくなるわけでもありません。このような現状を鑑みる限り、選択的夫婦別姓についてここで議論を避け結論を出さないのは、もはや政治の怠慢ではないかと筆者はコラムの最後に綴っています。

 いまだ「昭和」の空気を引きずり、経済的にも閉塞的な状況にある現在の日本。結婚しない若者たちが増え、少子化が進んでいる現状にもいまだ打開策は見えてきません。

 看板となる総裁が変わっても、中身は変われない自民党。このままでは、この一点をもって「政権交代」の引き金を引くことにもなりかねないと感じるのは果たして私だけでしょうか。

 結論の先送りが続く選択的夫婦別姓問題は、様々な課題に直面していながら改革の先延ばしを続ける、変われない日本を象徴しているのではないかとコラムを結ぶ筆者の指摘を、私も興味深く読んだところです。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿