MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1172 幸せな人生を全うするには

2018年09月23日 | 社会・経済


 日本銀行が6月27日に発表した今年1~3月の資金循環統計(速報)によると、国内における昨年度末の家計の金融資産は、前年度末より2.5%多い1829兆円に達しています。

 株価の上昇などで資産の評価額が膨らんだことなどにより、年度末としては過去最高水準を記録しているということです。

 内訳は、現金・預金が2.3%増の961兆円、株式等は11.7%増の199兆円と(相変わらず)預金の割合が高く、投資信託は1.4%増の73兆円だったということです。

 因みに、金融機関を除く民間企業が持つ金融資産は8.5%増の1178兆円で、株式等が16.1%増、対外直接投資が8.6増と(こちらも)大きく伸びています。

 こうした状況からは、政府・日銀の長期にわたる金融緩和策などを背景に、好調な企業業績によって生み出された資金が設備投資などに回らず、金融市場にお金が滞留している状況が見て取れます。

 金融広報中央委員会がまとめた2017年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、1世帯当たりの金融資産保有額の平均は前年比73万円増の1151万円と、2年ぶりに増加する一方で、その中央値は同20万円減の380万円と4年ぶりに減少しています。

 この数字が示すのは、「持てる」世帯と「持たざる」世帯との格差が、より一段と広まったという現実でしょう。

 実際、2人以上の世帯のうち、将来に備えた預貯金や株などの金融資産を持たない世帯の割合は、(前年の30.9%を上回る)31.2%で過去最高を更新したということです。また、単身世帯で資産を持たない割合は実に46.4%に達しており、単身世帯の半数近くが全く貯金がない状態であることが判ります。

 一方、総務省が5月18日に発表した「家計調査報告(2017)」によれば、国内に暮らす高齢世帯(二人以上の世帯のうち世帯主が60歳以上の世帯)の貯蓄現在高(預金、保険、株式、債券信託党を含む)の平均値は2384万円に及んでいます。

 平均で2000万円以上というのはある意味驚くべき数字ですが、中央値は1639万円ということですから、この数字が貯蓄を持っている世帯に引っ張られていることも計算に入れる必要はあるようです。

 しかしながら、それでも高齢者世帯の3分の1、34%は平均値である2384万円以上の預貯金等を保有しているのが現実であり、2500万円以上を超える世帯も全体の3割を超える水準にあるということです。

 さらに驚かされるのは、高齢者世帯では、貯蓄現在高が4000万円を超える世帯が約18%もあるということでしょう。ざっくりいってしまえば、高齢者世帯の5世帯に1世帯は4000万円以上の貯蓄があり、恐らくそういう世帯の多くが不動産なども所有しているでしょうから、(そうしたものも合わせれば)高齢世帯ではかなりの世帯が「億」を超えるような資産を所有していると考えてもよさそうです。

 このような数字を直視すると、年金を受給する高齢世帯の恵まれた状況ばかりが目に浮かびますが、これから先の世代のことを考えれば、そう楽観視ばかりもしてはいられなさそうです。

 5月31日のPRESIDENT Onlineに掲載された三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林庸平主任研究員らの寄稿(「これから高齢者の半数は預貯金ゼロになる」)によれば、同社が昨年行った「退職後の資産形成に関するアンケート調査」において「退職後の生活にはいくらかかるか心配である」と回答した20~59歳の人の割合は35.6%。「できる限り早く退職後の生活資金の準備をすべきだ」とした人も27.2%と、現役世代では老後の資金面での不安が高まっていることが改めてわかったということです。

 こうした退職後の不安の背景には、「自分自身・配偶者の医療費・介護費が多くかかること」(55.6%)、「公的年金の毎月の受給額が減少すること」(46.0%)などがあり、少子高齢化が社会問題として声高に叫ばれる中、社会保障制度の将来を悲観的に見ている人が過半を占めているようです。

 さて、厚生労働省の試算によれば、2050年時点での年金受給額は、現役世代の保険料をベースとした「マクロ経済スライド」により、現在(2014年時点)の受給額に比べて約2割、金額にして年間約40万円程度減少する可能性があるとされています。

 マクロ経済スライドは、公的年金財政の破たんを防ぐ(つまり公的年金の収支尻を合わせる)ための実に良くできた制度ですが、(少子高齢化が進むことを前提とすれば)実質的な受給額は(恐らく)確実に減少していくということです。

 今後、長寿化が進み人生100年時代が現実のものになれば、医療費や介護費用などを含む高齢期の「支出」がより長く続くことになり、そのための資金確保がさらに必要になるのは否めません。

 公的年金などが期待できない以上、当然ながら現役世代のうちからより多くの金融資産をため込んでおくか、そうでなければ(これはかなり不確実な投資ですが)子供の教育に投資して老後の面倒を見てもらうことくらいしか、幸せな老後を担保する術は見出せません。

 結局のところ、いつまでも長く現役として働き続けられるよう健康に気を使いながら意欲的に生活し続けることこそが残された最大の「防衛策」であることを、我々は肝に銘じておく必要があるようです。




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