経済学者で上武大学教授の田中秀臣氏は、12月17日の夕刊フジ「zakzak」において、今や「国民の敵」は緊縮主義の権化として減税を増税で取り返す、自民税調や財務省の幹部たち「懲りない面々」だと断じています。
氏によれば、日本経済を長く低迷させてきた要因の一つは、財政政策の緊縮スタンスとのこと。不況から完全に立ち直るのを待たずに、増税や負担増をしてしまう。あげくには不況に苦しむ中小企業などを「ゾンビ企業」呼ばわりし、その淘汰を押しする。緊縮主義者たちは、中小企業が淘汰されれば日本の国際競争力が増すといっているが、それは単にトンデモだ…とその舌鋒に容赦はありません。
こうして元気のよい積極財政論者に対し、(近ごろでは)財政のひっ迫を懸念し緊縮政策を唱える(ある意味真面目な)論者は「ザイム真理教」信者などと誹られ、批判の的となることも増えているようです。
そこで今回は、そんな彼らに光を当てるべく、財政緊縮派の主張を敢えて正面から取り上げてみたいと思います。日本外国特派員協会(FCCJ)に所属するジャーナリストで作家の山田順(やまだ・じゅん)氏はニューヨーク発の情報メディア「DAILYSUN NEW YORK」に『「年収103万円の壁」合意は子ども騙し。バラマキ政治を続ける限り衰退は止まらない!』と題する一文を寄せ、もはや日本の政治の基本と化している経済対策としての「バラマキ」を強く批判しています。
日本の政治家は、右派、左派、リベラル、保守、与野党を問わず、すべてバラマキ政策しか言わない。私たちが「窮状に陥っているあなたを助けます」と言って、自分のものではないカネ(つまり税金)を勝手に分配することを公約する。そうして選挙戦を行うのが既に常とう手段だと氏はその冒頭に綴っています。
失業対策、企業支援、生活補助、子育て支援、教育無償化など、すべてがバラマキ。 バラマキばかりになると、それを獲得するための争奪戦が起こり政治家は「口利き」で儲けられる。また、官僚は采配を振るえるうえに、業者からの接待が増え天下り先も確保できると氏は言います。
こうして縁故資本主義(クローニーキャピタリズム)は強化され、本来の資本主義が持つ競争によるダイナミズムは失われ、同時に自由市場も侵害される。本来、バラマキの恩恵に預かるのは一般国民のはずだが、(それも過ぎれば)いくら働いても給料が上がらないという社会ができ上がるというのが氏の認識です。
このバラマキ政治を後押ししているのは、全政党に存在する「積極財政派」と、国民の間に蔓延する「積極財政世論」というもの。積極財政派は、財政支出を増やせば消費や投資が喚起され、景気は上向き、雇用創出にも繋がり、(それに伴い)税収も増えると説く。また、社会インフラ整備に予算を投じれば、国土も強靭化され、まるでいいことずくめであるかのようだと氏はしています。
財源がなければ国債をどんどん発行すればいい。国債は国内で消化されている限り問題ないというのが彼らの主張。しかも、最近では日本が成長しなかったのは緊縮財政を続けてきたからで、その元凶は財務省であるという「ザイム真理教」陰謀論を信じる信者まで増えているということです。
(しかし、この主張は)まさに“お花畑”でしかない。積極財政論は、それ自体は経済的に間違っているといは言えないが、それを国債という借金でまかなうのは間違っていると氏はここで断じています。
バブル崩壊後の1990年以来、日本が続けてきたのは(緊縮財政ではなく)バラマキのために国債を大量発行するという「放漫財政」に外ならない。しかし、いつまでも放漫財政が続けられるはずもなく、もうこれ以上赤字国債を発行できない瀬戸際に来ていることを現在の超円安が示していると氏は言います。
日本は財政規律を重視していない、無視しているのだということが世界の共通認識になれば、市場の円に対する信頼は失われる。ただでさえ国家債務のGDP比が世界第2位の252.36%(2023年度)に上る「借金大国」が国債を発行して補正予算を組むというのは、さらに借金を重ねていくと世界に公言しているようなものだということです。
現在、スタグフレーションに陥っている国が、これ以上、中央銀行が国債を引き受ける「財政ファイナンス」を続けていけばどうなるのか。円安に歯止めがかからなくなり、ドル円はすぐにでも200円になるだろう。もちろん、物価上昇も止まらない。そしてその先にあるのは、国債暴落、ハイパーインフレだと氏はこの論考の最後に記しています。
厳しい状況から目を背け、無責任に現状を肯定しても、外から見る目は厳しいもの。日本全体が「茹で蛙」になる前に、常識に立ち返る必要があるということでしょうか。
(兎にも角にも)“お花畑”に暮らす積極財政派は、国民を地獄に導こうとしている。そんな地獄が来る前に、富裕層から有為な若者たちまで、この国を出ていくだろうと話す山田氏の指摘を、私も襟を正して読んだところです。
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