2023年の日本人の出生数は70万人台前半と8年連続で過去最少を更新するなど、少子化に歯止めがかからない状況が伝えられています。
厚生労働省の人口動態統計によれば、23年1〜9月の出生数(外国人含む速報値)は56万9656人で前年同期比5.0%の減。(出生数を左右する)婚姻数も4.4%減の36万5478組で、上向く兆しが見えないとされています。今後もこのペースが続けば、日本人の23年の出生数は前年から5.5%減少し、統計開始以来、過去最少の72万9000人程度になる見込みだということです。
また、1人の女性が生涯に産む子どもの人数を示す合計特殊出生率も昨年(22年)の1.26を下回り、過去最低になると推測されています。社会の孤立化が進む中、家族が助け合いながら安心して子どもを産み育てられる、安定した家庭を築いていくことが(かなり)難しい世の中になっているようです。
そんなことを感じていた折、11月26日の経済情報サイト「PRESIDENT ONLINE」が (自身もイスラム教に改宗された)フィルダウス出版代表の森田ルクレール優子氏の近著『イスラムと仲よくなれる本』(秀和システム)の一部を紹介していたので、参考までに概要を小欄に残しておきたいと思います。(『なぜイスラム教では「一夫多妻」が合法なのか…イスラム教徒の日本人女性が考える「男性だけOK」の理由』)
イスラムの特徴のひとつに「一夫多妻」が挙げられる。イスラムでは、1人のパパが4人までのママと同時に結婚することが許されているが、これには深い理由があると森田氏はこの著書に綴っています。
実はイスラムが誕生する前の時代、男性は何人の女性とでも結婚できた。そこで「4人まで」と制限をもうけたのがイスラムだったということです。しかし、だからと言ってムスリムでも、一夫多妻を実践している男性は少数派。それは、妻を正しく、完全に公平に接することができなければ、複数の女性と結婚することができないからだと氏は説明しています。
例えば、2人目の妻と結婚したい場合、1人目の妻が許さなければ結婚はできない。1人に指輪を贈ったら、同等のものをほかの妻にも贈らなければならない。家を買っても同じこと。すごす時間も同じで、ひとりのところで今週7日間すごしたら、次の7日間は次のところと…と順番にすごす必要もあるそうです。
こうしてムスリムの男性は、自分の妻をみんな(平等に)大切にすると氏は話しています。もちろん複数の妻を娶るためには、体力も、時間も、お金も、何より努力が必要となる。多妻が許されるムスリムの男性を羨ましがる人もいるが、当人に話を聞けば「そんなことないですよ」と返されるのが普通だということです。
外で仕事をしていることが多く、家を空けている時間が長い父親。その一方で、妻が何人もの子どもを出産し、さらに仕事まですることになると女性の負担が重すぎる。そうした環境の中で、イスラムの一夫多妻は男性のためというよりも家族のため、そして女性の負担を少なくする合理的なルールだというのが(ムスリムの代弁者として)森田氏の指摘するところです。
アラブのような厳しい環境の下では、人間は1人では生きていけない。自分だけではどうにもならない時に、(たとえ異母兄弟とは言え)手を差しのべてくれる兄弟がいると、とても心強いことだと氏は言います。人間が支え合うことはとても大切なこと。イスラムでは、このような教えをのもとで信頼関係を培い、異母兄弟でも仲よく暮らしているということです。
人間を絶やさないため、そしてムスリムが増えるためにも、若い人たちが安心して成長できるように守り育てていかなければいけないと氏は話しています。そしてそのためには、大家族、特に多くの兄弟の中で力を合わせて成長していくというのは、(きっと)重要な要素だということだったのでしょう。
もちろん、一夫多妻が認められるならば、その逆「一妻多夫」もOKとしなければバランスが取れません。いずれにしても、(普段は考えもしませんが)本気で少子化対策を講じようと思うなら、この日本でも「既存の価値観を捨てても構わない」くらいの覚悟が必要となる。時と場合によっては、様々な家族形態の許容も「あり」なのかもしれないと、私も興味深く読んだところです。
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