MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

 伊皿子坂社会経済研究所のスクラップファイルサイトにようこそ。

#2740 市場では条件のいい物件から先に売れていく

2025年02月10日 | 社会・経済

 1970年ごろは年間100万組を超えていた日本の婚姻数。2011年以降は年間60万組余りでしばらく推移していましたが、コロナ禍に見舞われた2020年に前年比12.3%減と大きな減少を見せ、気が付けば2023年にはさらに6.0%減の47万4717組と、戦後初めて50万組を割り込む水準に減っています。

 一方、結婚した夫婦が持つ子どもの数(→完結出生児数)は、1970年代から2.2前後で推移し、21年も最低値を更新したものの1.9と大きくは変わっていない由。こうしたデータからは、昨今の少子化の(直接の)原因が、若者の「未婚化」にあることが見て取れます

 2020年の国勢調査によれば、「50歳時の未婚率」は(既に)男性が約28%、女性が約18%に達しているとのこと。昭和生まれの世代ですらこうなのですから、30歳半ばを迎える平成生まれが、今さらそう簡単に結婚してくれるとは思えません。

 そうした中で昨年話題を呼んだのが、東京都が提供する婚活サービスがかなりの人気を博しているという話。「TOKYO縁結び」と銘打たれたサイトに登録するとAIが信頼性の高い相手を紹介してくれるということで、(2年で11000円という登録料にもかかわらず)申し込みが殺到しているとの話を聞きました。

 そういえばこの年末に、地上波テレビの娯楽番組に小池百合子都知事が出演し同事業をPRしているのを見かけましたが、(知事の人気取りにはなるとしても)こうした官製マッチングアプリが少子化対策の「切り札」になると見るのは楽観に過ぎるというものでしょう。

 (いわゆる)適齢期の独身男女は多いのに、彼ら。彼女らはなぜ結婚に踏み出せないのか。参考になるかどうかは分かりませんが、少し前のYahoo newsに、マーケティングディレクターの荒川和久氏が『男の結婚は「年収の高い方から売れていく」が、決して婚活市場には登場しない』(2023.7.26)と題する一文を寄せていたので、指摘の一部を小欄に残しておきたいと思います。

 氏によれば、国の基幹統計では、初婚時点での年収がいくらだったかについての調査は存在していないとのこと。このため、氏が独自に「5歳単位での年収別の未婚率の逆数の累積値」を使って推計(←ご苦労様です)したところ、20-24歳で結婚している男性というのは最低でも年収400万円以上であった由。さらに、初婚のボリューム層である25-29歳では、年収500万円以上の未婚男性の4割以上が、29歳までに結婚していることがわかったということです。

 30-34歳になってもその傾向は一緒で、年収500万円以上だと累積で7割以上が既婚者となっていると氏は話しています。しかし、そうした動きも35歳までのこと。その年齢を超えるとどの年収帯でも既婚割合は一気に下がり、当然、未婚のまま生涯を過ごす可能性が高まるということです。

 これをどう見ればいいかというと、①そもそも高年収の男性自体の絶対数は少ない、②若ければ若いほど少ない、③その「ただでさえ少ない年収の高い男から順に売れていく(結婚していく)」ということ。男性の生涯未婚率は2020年時点で28.3%。約3割なので(残りの)7割は結婚するということになるが、44歳までの累積値で70%を超えるのは年収400万円以上だと氏は言います。

 もちろん、年収400万未満でも結婚している男性は勿論いるが、400万未満から下の層は一気に既婚率が下がっている。かくして、結果として生涯未婚率対象年齢の45歳以上で未婚である男性の年収は低くなるというのが氏の指摘するところです。

 婚活をしている女性から(しばしば)「結婚相談所でもアプリでも500万以上の年収の未婚で若い男なんてほぼいない。いたとしても、その年収が大嘘か既婚者が偽っている場合しかない」という声を聴く。しかし、それは当たり前のことだと氏は話しています。

 理由は、「若くして高年収の男性は早くに売れてしまう」から。婚活市場などに流れ、広く公開される前に「売約済み」だというのが氏の見解です。それでも、34歳くらいまでなら可能性があると思う人(←特に女性)もいるかもしれないが、結婚に至るまでの平均交際期間はおおむね4年間(出生動向基本調査)とされる。つまり、34歳で初婚する男性も結婚相手とは既に30歳の頃から付き合っていて、ある意味「売約済み」の状態だということです。

 さて、「そうね、年収はだいたい〇〇円以上」といった条件を譲らない婚活女性が一向にマッチングしないのは、婚活の現場そのものにそんな男はいないからだと氏は(ここで)厳しく指摘しています。

 それは、魚のいない釣り堀で釣り糸を垂れているようなもの。もしも本当に結婚したいなら、相手の年収云々はさておき、少なくとも相手男性が25-29歳の間に結婚しておくこと。そのためには最低25歳までには結婚対象と交際していないといけないと、この論考で氏は断じています。

 30歳を過ぎてから婚活しても既に遅すぎる。そして、同様のことは男性側にも言えることで、もし結婚したいと思っていて、40歳すぎて「結婚したかったなあ」などと不本意未婚の苦しみに陥らないためには、20代のうちに結婚に向けて邁進しておいた方が可能性が高いということです。

 一方で、年齢を重ねれば重ねる程、それだけ「選ばれる」ための年収のハードルも上がってしまう。データを見る限りでは、35歳を過ぎて年収400万円を超えてももう相手は見つからない可能性が高いと氏は見ています。

 「聞いてないよー」「そんなこと今更言われても…」と言う声が(あちこちから)上がりそうですが、実際の数字がそれを物語っているということなのでしょう。幸せのためには「早め早め」の準備が必要ということ。白馬に乗った王子さまやガラスの靴を履いたお姫様は、努力しない者には決して微笑まないという現実を、私たちは受け止めなければいけないのかもしれません。