気まぐれ徒然なるままに

気まぐれ創作ストーリー、日記、イラスト

Stay With Me 5

2018-12-13 23:15:00 | ストーリー
Stay With Me 5







『吉野さん、書類のチェックして欲しいからLINE ID 教えて 』


ちょうど帰宅した頃
後輩の野村くんから電話がかかってきた




「明日、確認じゃダメなの?」


『ウチは休みだけどどうしても先方が急ぐらしくて。』


「わかった… じゃあ… 」



LINE IDを教えてからPDF送信先のアドレスを教え

野村くんから書類の画像と添付書類がPDFで送られてきた




『届いた? 見れる? 確認して直ぐに連絡ちょうだい。』


「わかった。」


電話を切った



もっと早くチェックしてれば良かったのに!

いつもギリギリに慌ててやるからこんなことになるんじゃない!


もう!


私は書類のチェックをして連絡を返し直ぐに食事の支度を始めた


早くしないと寺崎さん帰ってきちゃう



「ただいまー 良い匂い(笑)」


あー 帰って来ちゃった

「まだできてなくて、もうちょっと待っててくださいね!」



鞄をテーブルの横に置きコートを脱ぎながら


「僕も手伝おうか?」

私の傍に来て何を作ろうとしてるのかを覗きに来た


顔が近い!



ーーー LINEの受信の音がした



「理奈ちゃんにLINE入ったよ?」


「さっき仕事の書類で確認してたんです。

きっとその件だと思うから。チェックしてOKだったから多分大丈夫。後でいいです。」


「そう?」


彼は私のスマホの画面に視線を落とした



LINEのポップアップ表示を見て

「 “野村くん” からだよ 」



「あ、じゃあやっぱりOKの返事だけだと思う。」




「 …そう、なんだ。」


私のスマホの画面を見て

コートと鞄を持って部屋に着替えに入って行った





一緒に晩御飯の準備をしてテーブルにつく





「腹減ったなぁ(笑) さっきのLINE。チェックした方がいいんじゃない?」



あ、忘れてた



「急ぎみたいだったけど」



え?

おかしいな…

あれだけちゃんとチェックして大丈夫だったのに




「ちょっと見てみます。」


LINEのメッセージを読んだ


『書類ありがと!これで大丈夫!』


やっぱり確認済みのメールだった(笑)



ーー あれ?




『それと!大事なことがもう1つ!』


『明日デートしよ!この返事も早くちょうだい!(^-^)』




なにこれ!!
しかも連続で入ってる!!


びっくりして彼の顔を見たらちょうど彼と目が合った



「早く返事欲しいって書いてなかった?」



えっ!! 寺崎さんこれ見たの!!


「返事なんてしない! 全く何ふざけて送ってきてるんだか!」


ぷんぷん怒っている私を見て彼は笑った



「もしかしてあの時の後輩?」


あの時のって…


そうか、寺崎さんはロビーで野村くんを見たんだった




「そう!あの後輩!私とは何でもないですよ!?」



「彼、男前だったね 」

ご飯を食べながら微笑む彼




「そうですかぁ?そんなこと無いですよっ。
寺崎さんの方が絶対に素敵です!何でいきなりこんなの送ってくるのかしら!」



「そんなに興奮する理奈ちゃん、初めて見た(笑)」


楽しそうに笑った




あっ、なんだか言い訳みたいに聞こえた?
誤解してないよね!?




…って

誤解どころか
ヤキモチすら妬いてくれないんだ…


今まで野村くんに憤慨してたのに急にガッカリした



「寺崎さん… 心配にならないですか?」


「え?」 私の顔を見た








「理奈ちゃん可愛いからモテてもおかしくないか、と思うよ 」



違うよ…

そういうことが聞きたいんじゃないよ



「ちょっとは… ヤキモチ妬いて欲しいな… 」


私は我慢できずに拗ねた





「そっか(笑)」

何も気になってない様子…



ーーー たまに私は寺崎さんがわからない



だって普通なら

彼女が他の男性からデートに誘われたらヤキモチを妬くものじゃない?

妬かない人もいるのかな


私のこと心配してないってことだよね
信頼されてると思えばいいのかな



それでも…


「理奈ちゃん?」


なんだか
悲しい



「何でもないです…」

私は箸を手に取った




寺崎さんはそれ以上この件には触れず

いつものように私が洗った食器を拭いて食器棚に片付けている



その姿を見ながら

彼の私への気持ち、本音はどうなんだろうと知りたくなった




「あの… 寺崎さん」



「んー?」

いつもと何も変わらない彼





「私のこと… 好きですよね?」


食器を持ったまま少し驚いた表情で私の方を向いた




「え?なんでそんなこと聞くの?」


なんでって…

質問した私の気持ちわからない?



「もういいです。忘れてください」



あぁ、ダメだ
涙が出そう…



黙って洗濯物を畳む


彼は食器を全て棚に片付けて
私の横に座り一緒に洗濯物をたたみだした





「理奈ちゃん」


多分 今
私の顔を見てる…



「理奈ちゃん?」

凄く優しい口調だから涙がこみ上げてきた



私のこと
好きなんだよね


うん…
わかってるよ


でも…


「たまにあなたがわからないです。不安になる。」



「僕なりに伝えてるつもりだったんだけど… ごめん…」




こんなに優しい人に
“ごめん” なんて言わせてしまった



「私の方こそ ごめんなさい」

どうしても心のモヤモヤが抑えられない



こういう時

ただ黙って抱き締めてくれるだけでいいのに




「先にこれ、しまってきますね 」

畳んだ洗濯物を持って立ち上がった



あなたはいつも淡々としていて情熱的ではない


クールと思えばいいんだろうけど

それが私には凄く寂しい時がある



甘えていいよって言ってくれるけど

あなたから私に甘えてくることはない



思い返せばハグするのも私からが圧倒的に多い

甘い言葉をかけてくれることもあまり無い




優しい人柄は充分なほど伝わる



その優しさはあなたの人間性であって
愛情の深さではないんじゃないかとか

本当に私は特別な存在なのだろうかとか


そんな風に思えてくる時がある




元々 言葉は少なめの彼だけど

たまには言葉が欲しい時がある



せめてこんな時は
ただ抱きしめてくれるだけでもいいのに…




こんなに傍にいるのに

凄く寂しい…




あなたはとても優しい人だから

良い人だから

切なそうな表情は見たくない




そんな想いもあるからこんな想いを言い出せない





「理奈ちゃん…」



そんな優しい声で話かけないで

余計に悲しくなる



私の頬を大きな手で包み自分の方に向けさせると驚いた表情をした



「どうして泣いてるの?」

戸惑いの表情に変わった




「僕 なんで泣かせちゃったのかな、、」




ーー わからないんだ



「私は… 寺崎さんが好きです。」



私の心を読もうとして私の目を見つめる



「僕もだよ?」


こんな風に私から言えばあなたも同じように応える


私達はずっとそうだった…




「僕… 鈍感だから、君の気持ちを察してあげられなくて本当にごめん… 」





それでもヤキモチすら妬いてくれないなんて

寂しいよ…




ずっと困った表情で私の顔を見つめてる

なんでこんな時に抱き締めてくれないの ?




こんな時、海人くんだったらきっと…


「お風呂の準備してきます」

立ち上がりお風呂のお湯を貯める





なんで今更また海人くんのこと思い出しちゃったんだろう

寺崎さんはあんなに優しいのに


私は物凄くわがままなんだろうか…

いたたまれない寂しさでいっぱいになった




私がお風呂から出て
次に彼がお風呂に入った



スマホに受信のランプが点滅していた


開いてみるとまた野村くんからLINEが入っていた



『返事ぐらいくれよー! 待ってるのに 』



返信をする気になれなくて
深いため息が出た


野村くんのせいで気付きたくなかったことに気付いてしまった


一緒にいるのに孤独を感じていたことを


それは恋愛の温度差みたいな感じ…

きっと私はずっと心のどこかでこれに引っ掛かっていたんだ

心の距離感で孤独を感じていたんだ




“既読” を見たのかまた野村くんからLINEが入った



『俺 本気で吉野さんが好きなんだ。ほんとはずっと前から想ってた。

新入社員で入った時は先輩としか見てなかったけど

一緒に仕事していく内に吉野さんのさりげない気遣いに沢山救われてたことを知って

次第に気になる人になってた。


いつも俺、冗談ばっか言ってたから信用してくれないかもしれないけど、この前 吉野さんの彼氏を見て悔しくなった。

なんでもっと早く告白しなかったんだろって。

諦めた方が良いんだろうけどやっぱり俺の想いをどうしても伝えたくなった。

吉野さんに彼氏がいてもやっぱり俺の気持ちは変わらない。

俺、本気で好きなんだ。

会ってくれるなら今直ぐにでも向かう。一言でもいいから返事が欲しい。』




ーーー なんでよ

なんで寺崎さんよりも情熱的なの


なんで彼から言われたい言葉をあなたが言うの!


また涙が溢れた

彼と過ごすこの空間がいたたまれなくて
あの優しい笑顔が辛くて

私は彼がお風呂に入っている間に黙って部屋を出た



ーーー



部屋を出た私は目的もなく電車に乗り
普段降りることのない3つ隣の駅で降りた




「あれ!理奈ちゃんじゃん!」

声の方を振り向くと修司くんが友達3人といた



「うわ、ひっさしぶり!なに?こんな時間にどこ行くの?」



修司くん…


「なんだ?どうした??」

辛そうな表情になっていた私に修司くんは戸惑った

修司くんは駅で友達と別れる所だった



「理奈ちゃん 飯食った?カフェでも行く?酒がいい?あ、ちょっと待ってて。」


修司くんは友達に挨拶をして私と近くの居酒屋に入った


「どうしたの?今にも泣きそうな顔だったけど(苦笑)」

「そう…だったかな(笑)」


修司くんとは引っ越しの手伝いをしてもらった以来会ってなかったからしばらくぶり

だから寺崎さんのことは知らない


彼氏ができたことを伝えると修司くんは喜んでくれた


修司くんと元彼の海人くんは親友だから今でも二人はよく会ってるんだろうな



海人くんは…
今どうしてるんだろう

聞いてみたいけど 聞かないことにした



「で?彼氏と喧嘩でもしたの?スッピンでこんな時間に街ウロウロしてたし(笑)」


修司くんのこの明るい性格に気持ちが救われる


「喧嘩ではないよ(笑) 喧嘩はしたことないよ。喧嘩にもならない… 」



「まぁ喧嘩した方が本音がわかることもあるからなぁ。相手の本音も自分の本音も。

俺なんかしょっちゅうツレとしょーもないことで喧嘩してはまた直ぐ元通りたけど(笑) 」


あぁ 修司くんは確かにそうだね (笑)


「彼女がいた時も 彼女と喧嘩しては俺が謝って元通り(笑)

俺は悪くない!と思っててもツレと違って彼女の場合は必ず最後 俺が謝ってきたな(笑) あははっ!」



「彼女が好きだから?(笑)」




「と言うより、あとあと考えたら彼女の言う方が正しいことばっかだったから(笑)」


「そうだったの(笑)」


「俺ってほら、考え無しで言う所があるじゃん?それで彼女に叱られてたんだわ(笑)」


「あはははは!(笑)」


修司くんと話しをしてたら辛さを忘れてた



「ところでさ、今、彼氏と一緒に住んでるんだろ? 黙って出て来たんだから心配してるんじゃないの?

電話とかメールとか来てるんじゃない?」



スマホの電源はOFFにしていた




「どうかな… 」

「見てみなよ。」


スマホの電源をONにしたら何回かの着信履歴とLINEメッセージが入ってきた


「ほら。心配してんだろ?理奈ちゃんの本心ちゃんと話してみなよ。なんで言いにくいんだ?彼氏なのに。」


LINEを開いてみた




『理奈ちゃん 何処に行ったの?』

『心配だよ 迎えに行くから 連絡ちょうだい 』


心配…
してくれてるんだ



「電話して迎えに来てもらいなよ。な?」


既読になったのを見たのか
直ぐに彼から電話がかかってきた



「…
出ないの?」



躊躇している私を見ていた修司くんが


「理奈ちゃん、悪い!」

私の電話を手から奪って電話に出た







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