Stay With Me 12
降車駅で降りると
本格的に雨が降ってきた
理奈ちゃんに渡されていた傘を鞄から取り出そうとしたら
さっきの原さんの切なそうな顔が浮かんだ
この感覚は空虚感 ーー
その言葉がしっくりくる
僕は傘を広げ
家路に向かって歩いた
ーー 理奈ちゃんと顔を合わせづらいな
そんな後ろめたさを悟られぬよう
いつものように玄関のドアを開けた
風呂上がりだったのか
頬が赤い理奈ちゃんが顔だけ出した
「おかえりなさい(笑)」
「ただいま。」
「楽しかった? 久しぶりだったでしょ? 会社の人との飲み会。」
「あぁ、楽しかったよ。」
僕は理奈ちゃんの顔をまともに見られないまま
着替えるため直ぐに自室に入った
僕が風呂から上がると理奈ちゃんは僕のシャツにアイロンをかけていた
その慣れた手つきに
一緒に暮らした月日を感じる
「できたっと… 」
アイロンを片付け始めた
…… 僕のぎこちなさを悟られないよう普段通りにふるまう
こんな思いの原因を作ったことが
そもそもいけないんだ
僕は原さんに恋愛感情がある訳ではない
雰囲気に流され …
いや、違う
流された訳じゃない
あの場所で あの瞬間は
僕は彼女に恋をしていた
たった数回
偶然 出会っただけなのに
初めて会った時
彼女はガチガチで会話もままならなくて
僕もどうしたら良いものかと戸惑った
彼女はどんな時も自分の感情に素直な子だった
女性から僕を好きになってくれて
アプローチをされたことで
戸惑いながらもモテるってこういうこと? と高揚感も感じた
僕は昔から器用な男じゃなくて
隠し事をしていてもわかってしまう
「どうしたの?」
顔を覗きこんできた
「あ、いや、斎藤が君に会いたいって言ってたなって思い出して… 」
とっさに誤魔化した
「私も会いたかったの~ 嬉しいな(笑) 」
最近 ゆず茶に凝ってるのか
ゆず茶を入れて隣に座った
「斎藤のことを好きにならないでくれ。」
あっ、しまった…
ずっと懸念していた言葉がつい出てしまった
「え?どういう意味?」
「いや… えっと… 」
「なに?どういうこと?」
また顔を覗きこんできた
「あいつ 昔からモテてたんだよ。」
するとクスクス笑いだした
「それで?(笑)」
「心配で…」
楽しそうに笑った
「なんで心配するの?(笑)」
「もしかしたら、君も斎藤をって… 」
「そんなに素敵な人なの?でもそんな心配することないよ(笑)」
「そうだな(笑)」
原さんを気にしながら
僕は初めて理奈ちゃんを見た時、いきなり惹かれた
人生で初めての一目惚れだった
ーーーー
「理奈ちゃん。最近また眠れないの?」
朝食を食べている理奈ちゃんに問いかけた
「え?」
いつも僕が先に眠ってしまうから気がつかなかったけれど
またこっそり精神安定剤を病院からもらっていたことに今朝 気付いた
「引き出しに安定剤が入ってるね。」
「ごめん…(苦笑)」
「 …悩みでもあるの?眠れるようになっていたのに何故また眠れなくなったんだろうと思って。」
真面目に聞いてきた僕の顔を見て
理奈ちゃんも箸を置いた
「布団に入ったらついつい考えごとしちゃって頭が冴えてしまって(笑)」
「考えごとって?」
「 …んー、仕事のこと、とか?(笑)」
仕事で悩みがあるなんて今まで一度も聞いたことない…
「何があったの?」
「え? まぁ、うん、色々(笑)」
また箸を持って食事を始めた
理奈ちゃんは一人で抱えこむところがあった
そんなに僕は頼りない男なのだろうかと情けなく感じていた
「眠れなくなるほどのこと、どうして一人で抱えこむんだ? 僕じゃ頼りにもない?」
理奈ちゃんは目をクリクリさせた
「大袈裟だよ(笑) どうしたの? いつもはそんなに私のこと気にしてないのに(笑)」
ふふっと笑って味噌汁を飲む彼女
ーー その言葉は
僕の胸を射さした
君はそう
「痩せたらダメだってあれだけずっと言ってただろ? 僕はずっとぽっちゃりな理奈ちゃんが好きだって言ってたのに。」
「そんな、、痩せてない、、」
「もっと食わせないといけないな!」
「これ以上 太れと?」
「何言ってるんだ、痩せ過ぎだ。確かめる。」
「体重計に乗れって?」
理奈ちゃんを抱き上げた
明らかに軽い…
降車駅で降りると
本格的に雨が降ってきた
理奈ちゃんに渡されていた傘を鞄から取り出そうとしたら
さっきの原さんの切なそうな顔が浮かんだ
この感覚は空虚感 ーー
その言葉がしっくりくる
僕は傘を広げ
家路に向かって歩いた
ーー 理奈ちゃんと顔を合わせづらいな
そんな後ろめたさを悟られぬよう
いつものように玄関のドアを開けた
風呂上がりだったのか
頬が赤い理奈ちゃんが顔だけ出した
「おかえりなさい(笑)」
「ただいま。」
「楽しかった? 久しぶりだったでしょ? 会社の人との飲み会。」
「あぁ、楽しかったよ。」
僕は理奈ちゃんの顔をまともに見られないまま
着替えるため直ぐに自室に入った
僕が風呂から上がると理奈ちゃんは僕のシャツにアイロンをかけていた
その慣れた手つきに
一緒に暮らした月日を感じる
「できたっと… 」
アイロンを片付け始めた
…… 僕のぎこちなさを悟られないよう普段通りにふるまう
こんな思いの原因を作ったことが
そもそもいけないんだ
僕は原さんに恋愛感情がある訳ではない
雰囲気に流され …
いや、違う
流された訳じゃない
あの場所で あの瞬間は
僕は彼女に恋をしていた
たった数回
偶然 出会っただけなのに
初めて会った時
彼女はガチガチで会話もままならなくて
僕もどうしたら良いものかと戸惑った
彼女はどんな時も自分の感情に素直な子だった
女性から僕を好きになってくれて
アプローチをされたことで
戸惑いながらもモテるってこういうこと? と高揚感も感じた
僕は昔から器用な男じゃなくて
隠し事をしていてもわかってしまう
「どうしたの?」
顔を覗きこんできた
「あ、いや、斎藤が君に会いたいって言ってたなって思い出して… 」
とっさに誤魔化した
「私も会いたかったの~ 嬉しいな(笑) 」
最近 ゆず茶に凝ってるのか
ゆず茶を入れて隣に座った
「斎藤のことを好きにならないでくれ。」
あっ、しまった…
ずっと懸念していた言葉がつい出てしまった
「え?どういう意味?」
「いや… えっと… 」
「なに?どういうこと?」
また顔を覗きこんできた
「あいつ 昔からモテてたんだよ。」
するとクスクス笑いだした
「それで?(笑)」
「心配で…」
楽しそうに笑った
「なんで心配するの?(笑)」
「もしかしたら、君も斎藤をって… 」
「そんなに素敵な人なの?でもそんな心配することないよ(笑)」
「そうだな(笑)」
原さんを気にしながら
理奈ちゃんを取られたくない僕は
随分身勝手だ…
でも理奈ちゃんを手放したくないのは本心だ
でも理奈ちゃんを手放したくないのは本心だ
僕は初めて理奈ちゃんを見た時、いきなり惹かれた
人生で初めての一目惚れだった
ーーーー
「理奈ちゃん。最近また眠れないの?」
朝食を食べている理奈ちゃんに問いかけた
「え?」
いつも僕が先に眠ってしまうから気がつかなかったけれど
またこっそり精神安定剤を病院からもらっていたことに今朝 気付いた
「引き出しに安定剤が入ってるね。」
「ごめん…(苦笑)」
「 …悩みでもあるの?眠れるようになっていたのに何故また眠れなくなったんだろうと思って。」
真面目に聞いてきた僕の顔を見て
理奈ちゃんも箸を置いた
「布団に入ったらついつい考えごとしちゃって頭が冴えてしまって(笑)」
「考えごとって?」
「 …んー、仕事のこと、とか?(笑)」
仕事で悩みがあるなんて今まで一度も聞いたことない…
「何があったの?」
「え? まぁ、うん、色々(笑)」
また箸を持って食事を始めた
理奈ちゃんは一人で抱えこむところがあった
そんなに僕は頼りない男なのだろうかと情けなく感じていた
「眠れなくなるほどのこと、どうして一人で抱えこむんだ? 僕じゃ頼りにもない?」
理奈ちゃんは目をクリクリさせた
「大袈裟だよ(笑) どうしたの? いつもはそんなに私のこと気にしてないのに(笑)」
ふふっと笑って味噌汁を飲む彼女
ーー その言葉は
僕の胸を射さした
君はそう
思ってたの?
僕が君を気にしてないって…
「理奈ちゃん 。僕は君のことを何も気にもかけない冷たい男だとか、気づけない鈍感な男だと思ってたの?」
理奈ちゃんはキョトンとした表情で僕に視線を向けた
「前も何かで悩んでたろ? 聞いても何も教えてくれなかった。なんなんだよ!何でいつもそうなんだ? そんなに僕は君にとって頼りにならない男なのか?」
つい強い口調で攻め立ててしまい
困った表情になる理奈ちゃんにハッとした
「そんなこと思ってないよぉ(笑) ありがとう、行さん。」
困ったような笑顔を向けた
…理奈ちゃん
「眠れなくなるほどのことって… 一体何なんだ… それに僕は君にとってなんなんだ。僕達 結婚、するんだろ?」
本気で心配している僕に
困った表情で笑いかけてきた
「んー。人事異動のことで、ちょっとね(笑) 」
「人事異動?それなら隠す必要ないじゃないか。」
「そんな、隠してた訳では…」
社内の人事異動があって
新人の社員教育を任されて理奈ちゃんが教えていると聞いた
今までの業務も行いながら
新人に対しての社会人としての基本から教えなくてはならなくて
伝えても なかなか実行されなくて
どう伝えたらちゃんと伝わり理解してもらえるのだろうかと
毎日最近頭を悩ませていたようで
それでストレスが溜まっていたようだ
僕達にはそんな悩みを吐き出せる信頼関係すらなかったのだろうかと
いたたまれなくなった
「今までも誰にでもそうなの?」
「え?」
「誰かに悩みを相談したりしなかったの?」
「まぁ…うん」
「どうして僕に相談してくれない? 僕は自分が凄く情けないよ。一番君の傍にいるつもりなのに。」
眉尻を下げて悲しそうな表情になって黙りこんでしまった
「あ… ごめん、君を責めてる訳じゃ… 」
しまった、と思った
「 …あのね 」
「うん。」
「恵美のことなんだけど… 」
急に心臓の鼓動が早くなってきた
「恵美があなたのこと好きだって聞いた… 」
「原さんが… ?」
友達同士なのに
彼女はそんなことを理奈ちゃんに話したって言うのか… ?
「大丈夫だよね?」
「大丈夫って… なにが?」
複雑そうな表情で僕を見る理奈ちゃんに胸が痛い…
一人でそれを抱えてたのか
何か気付いているのだろうか
それでも ーー
僕の心が揺れたことは理奈ちゃんには言わない
「 行さんは … 」
何かを言いかけてそのまま黙りこんでしまった
「 心配してる?(笑) ははっ 」
笑ってごまかしたものの ーー
ぎこちない笑いになっていたかもしれない
食器を持ってキッチンで洗いだした彼女
の様子を伺った
いつもと変わらないけど
やっぱり原さんのことを気にしてたのか …
僕はテーブルを拭いて理奈ちゃんの元に台拭きを持って行った
「 ありがと。」
食器を拭いてるのを手伝う
「本当に心配しなくてもいいから。それを昨日言いかけたんだな。」
「ずっとモヤモヤして眠れなくて(笑) ふふっ
でも もう眠れるかなぁ(笑)」
拭き終えて布巾をかけて珈琲をいれようとした
「ごめん… 」
原さんより小柄な理奈ちゃんを抱き締めると
少し痩せているような気がした
いつの間にか僕は理奈ちゃんを抱かなくなっていた
理奈ちゃんも求めて来なくなってたことに気づいた
こうして抱き締めることも …
「痩せただろう。」
肩も腰も以前より痩せてる
それも気づかなかった
「え~?痩せてないよ(笑)」
確かに明らかに細くなってる…
僕が君を気にしてないって…
「理奈ちゃん 。僕は君のことを何も気にもかけない冷たい男だとか、気づけない鈍感な男だと思ってたの?」
理奈ちゃんはキョトンとした表情で僕に視線を向けた
「前も何かで悩んでたろ? 聞いても何も教えてくれなかった。なんなんだよ!何でいつもそうなんだ? そんなに僕は君にとって頼りにならない男なのか?」
つい強い口調で攻め立ててしまい
困った表情になる理奈ちゃんにハッとした
「そんなこと思ってないよぉ(笑) ありがとう、行さん。」
困ったような笑顔を向けた
…理奈ちゃん
「眠れなくなるほどのことって… 一体何なんだ… それに僕は君にとってなんなんだ。僕達 結婚、するんだろ?」
本気で心配している僕に
困った表情で笑いかけてきた
「んー。人事異動のことで、ちょっとね(笑) 」
「人事異動?それなら隠す必要ないじゃないか。」
「そんな、隠してた訳では…」
社内の人事異動があって
新人の社員教育を任されて理奈ちゃんが教えていると聞いた
今までの業務も行いながら
新人に対しての社会人としての基本から教えなくてはならなくて
伝えても なかなか実行されなくて
どう伝えたらちゃんと伝わり理解してもらえるのだろうかと
毎日最近頭を悩ませていたようで
それでストレスが溜まっていたようだ
僕達にはそんな悩みを吐き出せる信頼関係すらなかったのだろうかと
いたたまれなくなった
「今までも誰にでもそうなの?」
「え?」
「誰かに悩みを相談したりしなかったの?」
「まぁ…うん」
「どうして僕に相談してくれない? 僕は自分が凄く情けないよ。一番君の傍にいるつもりなのに。」
眉尻を下げて悲しそうな表情になって黙りこんでしまった
「あ… ごめん、君を責めてる訳じゃ… 」
しまった、と思った
「 …あのね 」
「うん。」
「恵美のことなんだけど… 」
急に心臓の鼓動が早くなってきた
「恵美があなたのこと好きだって聞いた… 」
「原さんが… ?」
友達同士なのに
彼女はそんなことを理奈ちゃんに話したって言うのか… ?
「大丈夫だよね?」
「大丈夫って… なにが?」
複雑そうな表情で僕を見る理奈ちゃんに胸が痛い…
一人でそれを抱えてたのか
何か気付いているのだろうか
それでも ーー
僕の心が揺れたことは理奈ちゃんには言わない
「 行さんは … 」
何かを言いかけてそのまま黙りこんでしまった
「 心配してる?(笑) ははっ 」
笑ってごまかしたものの ーー
ぎこちない笑いになっていたかもしれない
食器を持ってキッチンで洗いだした彼女
の様子を伺った
いつもと変わらないけど
やっぱり原さんのことを気にしてたのか …
僕はテーブルを拭いて理奈ちゃんの元に台拭きを持って行った
「 ありがと。」
食器を拭いてるのを手伝う
「本当に心配しなくてもいいから。それを昨日言いかけたんだな。」
「ずっとモヤモヤして眠れなくて(笑) ふふっ
でも もう眠れるかなぁ(笑)」
拭き終えて布巾をかけて珈琲をいれようとした
「ごめん… 」
原さんより小柄な理奈ちゃんを抱き締めると
少し痩せているような気がした
いつの間にか僕は理奈ちゃんを抱かなくなっていた
理奈ちゃんも求めて来なくなってたことに気づいた
こうして抱き締めることも …
「痩せただろう。」
肩も腰も以前より痩せてる
それも気づかなかった
「え~?痩せてないよ(笑)」
確かに明らかに細くなってる…
「痩せたらダメだってあれだけずっと言ってただろ? 僕はずっとぽっちゃりな理奈ちゃんが好きだって言ってたのに。」
「そんな、、痩せてない、、」
「もっと食わせないといけないな!」
「これ以上 太れと?」
「何言ってるんだ、痩せ過ぎだ。確かめる。」
「体重計に乗れって?」
理奈ちゃんを抱き上げた
明らかに軽い…
こんなに痩せていたとは
「ほら、やっぱり。」
「降ろして、、ちょっと 」
びっくりした表情になる
「イヤだ。」
理奈ちゃんの白い脚が朝の光に当たりやけに白く見えて…
「抱きたくなった」
ーーーーーーーーーーーー
「ほら、やっぱり。」
「降ろして、、ちょっと 」
びっくりした表情になる
「イヤだ。」
理奈ちゃんの白い脚が朝の光に当たりやけに白く見えて…
「抱きたくなった」
ーーーーーーーーーーーー