Stay With Me 19
グループで社内コンペに出す企画をまとめていて
来週明けの提出に間に合わせるため
締切最終日の今日はグループみんなで残業をした
仕上がり終わった頃はもう22時になっていた
「 やっと終わったねぇ(笑) 」
「 お疲れさまでした~!(笑) 」
みんな 疲れた笑顔で帰っていった
帰宅は23時は回るかもと行さんには事前にLINEは送っている
晩ご飯は食べててねと送ってるから
当然もう食事も終わって
ルーティングの早朝ジョギングもあるから
いつもなら寝ようとする時間
以前なら私が残業の時は
車で迎えに行くよ って言ってくれていた
でも今は …
“ 帰りは気をつけて。”
たったこれだけ …
ううん!
ちゃんと返事をくれるだけでもマシなんだから!
最後に残っていた三年先輩の篠原さんが声をかけてきた
「 吉野さん、晩ご飯食べて帰らない? 」
「 私はもう … あ、やっぱり行きます(笑) 」
帰っても何もないなと思い出し
一緒に食事をして帰ることにした
会社に近い居酒屋に入った
篠原さんはとても気さくな人
コミュ力も高い
「 あれ(企画) 通るといいね(笑) 」
「 そうですね。結果が出るまでドキドキです(笑) 」
ご飯食べて帰るからと行さんにLINEを …
スマホをバッグから取り出そうとした
「 彼氏? 」
「 はい、あ、でも 」
スマホをそのままバッグにしまった
「 やっぱりやめておきます。多分もう寝てる頃だろうし (笑) 」
「 上手くいってる? カレシと。」
篠原さんの顔を見た
「 え? 」
「 いや、なんか。吉野さん、最近暗くない?(笑) 」
暗い … かな
「 ごめん(笑) ハッキリ聞き過ぎ?(笑) 」
ビールをゴクゴク飲んで
仕事終わりのビールは旨いなー!と笑った
私もつられて笑った
「 飲みなよ(笑) 仕事が終わった後のビールは最高だよ?(笑) 」
表情筋がよく動くから
顔全部で思い切り楽しそうに笑うから
見てるだけで私も笑ってしまう
「 終電までまだ時間あるからしっかり飲んで食おう(笑) 」
「 私お酒控えてたんですけど1杯だけ(笑) 」
「 君はさぁ~ 優しーい勧め方だと遠慮するだろ?
このだし巻き卵、旨っ! 食べてみ?(笑) 」
… え?
「 どうして、、」
わかったのかな 私の性格
「 二年も同じ部署で一緒に働いてたら大体わかるでしょ(笑) 」
行さんとは三年も一緒に暮らしてるけど
優しく勧めるタイプだよ
君が決めていいよ って
私の意思を尊重する人
行さんがこの人みたいに
少し強引なくらい引っ張っていってくれるタイプだと私も違ったのかな …
あっダメダメ! 比べたらダメ!
それにそれじゃ他力本願じゃない
「 おかわり来た来た! 」
ニカッと笑って篠原さんはもう2杯目のビールに口をつけた
相当ビール好きなんだなぁ(笑)
私もビールを飲んだ
ほんと久しぶり
「 美味しい … (笑) 」
篠原さんの笑顔が、でしょ!?と言ってる
会社でもいつも元気で面白い篠原さん
一緒にいると自然と明るい気持ちになる
「 みんな気にしてたんだけどさ。吉野さん結婚やめたの? 」
この人は 他の人が聞いてこないことを
本当にストレートに聞いてくる
「 一応延期 … (笑) 」 苦笑いになった
「 一応延期? 」
「 あ、えーっと、、いろいろ事情がありまして、少し先に延ばしただけです(笑) 」
「 ふぅん … 」
焼き鳥に口に入れモグモグしながら
何か考えてる
「 仕事中はそんな歯切れ悪くないのに。
あっ、もしかして俺セクハラ発言した?モラハラだった?
ごめん(笑)
つい気になったらストレートに聞いてしまうんだよな、俺。
その内 処分されるかな(笑) 」
「 そんな、セクハラだとは思ってないです(笑) 」
「 良かった(笑) 腹減ってるだろ? もっとちゃんと食え!
最近、ずっと顔色悪いし痩せてきたんじゃない?
よし!次は何注文するかなぁ。 何でもいける? 」
メニュー表を広げた
あぁ 篠原さんのこのさっぱりした気さくな性格
気持ちが楽になる
病気のこと
公にしてないから知らないもんね
篠原さんは勧め上手だから
結局 私はビールを2杯も飲んでしまった
店を出て駅まで一緒に向かった
久しぶりのアルコールで
歩くと酔ってるのがわかる
足取りもふわふわする
「 仕事終わった後の1杯が何より旨いんだよなぁ(笑) 」
1杯? 中ジョッキで4杯は飲んでたよ?(笑)
「 ふふっ(笑) 飲むと更に陽気ですね(笑) 」
「 いつもと変わんないでしょぉ? あはははっ(笑) 」
酔うと笑い上戸の度が増すんだなぁ(笑)
やっぱりどうしてもつられ笑いしてしまう
「 はははっ(笑) 」
私もこんなに笑ったの久しぶり
行さん
もしまだ起きてたら心配してるかな …
スマホを取り出して確認した
でも LINEも電話も入ってなかった
ーー 急に殺伐とした現実に引き戻された
「 (彼氏) 心配してた? 」
「 いえ … 何も来てないです 」
「 … なんだ。やっぱカレシと上手くいってないじゃん。
んー、あのさ! カレシといて気負いせず自然体でちられて、幸せだなぁとか、思う?
もし思えないなら … 」
「 思えないなら? 」
「 結婚は “ 無し ” だな。」
胸にチクッと刺さった
「 “ 無し ” ですか、、」
いつもの陽気な篠原さんの表情に変わった
「 そりゃーそうでしょ?(笑) そんなの一生続かないでしょ? いつかは必ず疲れてくる。 」
ちょうど駅についた
「 じゃ、また月曜!お疲れさん!(笑) 」
「 あ、お疲れさまでした 。」
片手を軽く上げて満面の笑顔で駅の雑踏の中に消えていった
行さんの笑顔が浮かんだ
最近 … 笑顔を見てない
マンションの前に着いて時計を見ると
もう0時半を回っていた
早朝ジョギングをしている行さんはいつもなら既に寝てる時間
鍵を開けて静かにドアを開くと
まだ部屋の灯りがついていた
「 ただいま。まだ起きてたんだね 」
寝ててくれれば良かったのに と内心思った
その方が気が楽だった
連絡もなく遅くなって怒ってはいないかと
彼の顔色を伺う
「 遅かったね。晩飯外で食べてきた? 」
その声と話し方が少し冷ややかに感じた
「 あ、うん。職場の人と仕事帰りに。」
「 そう。メール無かったから心配した。」
心配してたような口調じゃない
「 ごめんなさい … 」
「 最近仕事大変そうだったし。気晴らしになった? 」
行さん …
「 うん。じゃあ お風呂入るね。 」
「 ん 。」
メイクを落としてお風呂に入った
「 はぁ~ 」
辛い …
私は ここで独り泣く習慣がついた
お風呂から出ると行さんはもう寝室に入る所だった
「 先に寝るから。おやすみ。」
あ …
「 待って。」
とっさに引き留めてしまった
寝室のドアノブを開きかけた彼が私の方を見た
「 え? 」
どうしよう
引き留めて私は何をいうつもりだったのだろう
「 なに? 」
「 何でもない … 」
「 … じゃあ寝るから。 おやすみ。」
一瞬悲しそうな表情をしたような …
気がした
ドアが閉まった ーー
閉まったドアが
心の扉が閉ざされたように思えて
辛い …
ーーー
それから翌週の手術日
手術前日からの入院にも付き添ってくれた
完全看護の総合病院だから行さんが泊まることはできない
入院手続きから主治医や看護師さんからの説明なども
一応私の婚約者だから “ 身内 ” として
きちんと対応してくれた
それはまるで “ 長年連れ添った夫 ” のような感じだった
本来なら結婚前ならラブラブな時期
でも私達は到底そうは見えなかっただろう
術後も順調に回復してきて
ゆっくりと体力も戻ってきた
なにより
子宮を取らなくて済んだことが何よりだった
これで行さんへの負い目にも似た思いが晴れて軽くなった
でも …
行さんの素っ気なさは変わらなかった
“ 今夜、会社の子の付き合いがあって遅くなるかも。”
LINEが届いた
会社の子 … ?
子って … 年下かな
どこに行くの?と問うと
ライブハウス。ヴォーカルしててライブを見に行く約束してたの忘れてたから。と返ってきた
私は
連れていってくれないんだ
行さんは以前から会社の人に私を会わようとはしなかった
仕方ないよね …
また返信が入った
『 一緒に行く? 』
えっ!?
『 行く! 』
嬉しくて即答したら場所と時間が送られてきた
ーーー
待ち合わせ場所に向かうと
もう行さんは先に着いていた
「 行こうか。」
ふと背中に触れる癖は変わってはいない
「 行さんの会社の人と初めてお会いするから少し緊張する(笑) 」
「 あぁ、そうだったな。」
考え事をしているような生返事が返ってきてそのまま黙ったまま歩く
行さんの手をチラッと見た
「 手を繋いでもいい? 」
「 … ん? え? 」
聞こえなかったようだった
何度も言うのが恥ずかしくて
「 なんでもない(笑) 」
そう誤魔化した
「 どうして “ なんでもない ” でごまかすんだ。」
聞こえてたことが恥ずかしい
行さんから手を握ってきた
ドキドキして
嬉しい
「 君から言うなんて、、ちょっと驚いただけだ。」
口を固く閉じたけど
前を向く優しい眼差しに見えた
暖かくて大きな手
綺麗で長い指が私の手を覆った
「 私のこと 、、」
「 あの店だよ。」
看板を指差した
好き?って聞こうしたんだけど
着いてしまった
年期の入った店の扉を開くと
結構お客さんが入っていてもうライブは始まっていた
カウンターの入口近くの席に座った
歌っている女性が会社の人 …
なんだかセクシーな人だな
注文を取ってくれたお店のマスターが聞いてきた
「 あなたは、ゆみちゃんの親戚? 」
ゆみちゃんとはヴォーカルの人のことだった
違うと答えると 逆に少し驚いた表情をした
なんとなく
似てるかもしれないけど
舞台にいるあの女性の方がずっと輝いていて綺麗
行さんはずっと女性を見ている
というより 見つめている
女性は行さんに気付き
たまに行さんに視線を向けた
ただ それだけのことなのに妬けてしまう
怪しい関係じゃないから私を連れて来たんだろうし
そんなことぐらいで気にしないようにと
思ってはいたんだけど …
「 そろそろ出ようか。」
「 あの方にご挨拶しなくてもいいの? 」
「 ん … いいんだ。 」
店を出て
ライブの感想もなく
黙って歩く行さんの少し後ろを歩く
見上げる程 身長差のある彼の背中は
少し寂しそうに見えた
「 飯食って帰るか。」
チラッと私に振り返った行さんは
穏やかな表情をしていてほっとした
「 そうだね(笑) 」
食事をしながらも
ライブの感想を話さないのが不自然に感じる
私から話しかけてみた
「 さっきのライブ良かったね(笑) 同僚の方、凄く上手いし。当たり前か(笑) ヴォーカルだもんね! 」
「 そうだね。良かった。会社での印象と随分違っていたから別人みたいに見えたけど。」
少し微笑みながらそう言った
「 会社ではどんな感じの方? 」
「 とてもおとなしくて固い感じだな。あまり笑わないし、誰とも親しい感じはなくてプライベートが見えない、」
そう言いかけて話を変えてきた
「 君に似てるだろう? 容姿が(笑) 」
え?
「 似てた? 」
「 あぁ、そうか。そうだな。今日はライブ用だったから似てないか(笑) 普段は似てるんだよ。」
「 そうなの? そういやマスターさんにも親戚かと聞かれたなぁ(笑) 」
「 きっとマスターも似てると思ったんだろう(笑) 」
久しぶりに前の穏やかな行さんだ
ああ、、久しぶりに会話らしい会話をしてる
嬉しい
「 行さん、あの、聞いても良いかな、、 」
「 なに? 」
「 行さんなんだかあまり笑わなくなった気がするんだけど … どうして? 」
本当は どうして素っ気なくなってしまったののか知りたい
「 そう、かな。」
それまでは私を真っ直ぐ見ていた視線が反れた
気まずい空気になった
「 私達 冷めちゃった? 」
いつも心の中で思っていたこと
ゆっくり私に視線を戻した
その視線は少し厳しいものだった
それが嫌な予感をさせてた
心臓の鼓動が早くなってくる
「 出よう。」
そう言って立ち上がった
ーーー
店を出ると帰る方向とは違う方向に向かって歩きだした
「 どこに行くの? 」
その問いかけにも答えてはくれず
隅田公園の川沿いを歩いた
「 理奈ちゃん。病気も回復したよね。」
少し前を歩く行さんの足が止まった
「 えっ? うん … 」
「 僕が … “もう君への気持ちが冷めた” と言ったら? 」
背中を向けたまま問いかけてきた
まさか …
行さんが?
「 さっきの女性に恋をしたと言ったら? 」
「 えっ …? 冗談 … 」
… 今までずっと私だけを見て
私のことが大好きだとわかる愛情を沢山注いでくれていた行さんが
他の女性を … ?
「 君の病気も改善したことだし、君はもう何の気兼ねもなく誰ともでも恋愛も結婚もできるだろう?」
肩越しに冷たく言う行さんは
見たこともない他人の背中に見えた
行さんがそんなこと
急に目頭が熱くなって涙が溢れ流れ出した
「 なんで … 急にそんな 」
私を一切見ようともせず
川沿いの柵に手をついて河を眺めている
「 なんでって 、理由はわかっているんだろう?
私に視線を向けた
瞳が潤んでいるように見えるけど
声と表情は冷たい
「 私は、、 」
“ 別れたくない ”
その言葉が … なかなか出せない
静かに私の言葉を待っている
20分近くは二人の沈黙は続いただろう
「 やっぱり君はそういう人なんだよな。
大切なことや本当の気持ちを伝えてはくれない。」
「 もうダメだな。 僕達、もう別れよう。」
「 別れたくない!! 」
「 もう、、行さんは、私に、冷めちゃったかもしれないけど、私は、私は、、 」
突然 ふわっと温かくなった
「 待ってた … 待ってたよ。やっと心の扉が開いた… 嬉しい … 」
「 … えっ 」
「 時間、かかりすぎ(笑) 」
それって
グループで社内コンペに出す企画をまとめていて
来週明けの提出に間に合わせるため
締切最終日の今日はグループみんなで残業をした
仕上がり終わった頃はもう22時になっていた
「 やっと終わったねぇ(笑) 」
「 お疲れさまでした~!(笑) 」
みんな 疲れた笑顔で帰っていった
帰宅は23時は回るかもと行さんには事前にLINEは送っている
晩ご飯は食べててねと送ってるから
当然もう食事も終わって
ルーティングの早朝ジョギングもあるから
いつもなら寝ようとする時間
以前なら私が残業の時は
車で迎えに行くよ って言ってくれていた
でも今は …
“ 帰りは気をつけて。”
たったこれだけ …
ううん!
ちゃんと返事をくれるだけでもマシなんだから!
最後に残っていた三年先輩の篠原さんが声をかけてきた
「 吉野さん、晩ご飯食べて帰らない? 」
「 私はもう … あ、やっぱり行きます(笑) 」
帰っても何もないなと思い出し
一緒に食事をして帰ることにした
会社に近い居酒屋に入った
篠原さんはとても気さくな人
コミュ力も高い
「 あれ(企画) 通るといいね(笑) 」
「 そうですね。結果が出るまでドキドキです(笑) 」
ご飯食べて帰るからと行さんにLINEを …
スマホをバッグから取り出そうとした
「 彼氏? 」
「 はい、あ、でも 」
スマホをそのままバッグにしまった
「 やっぱりやめておきます。多分もう寝てる頃だろうし (笑) 」
「 上手くいってる? カレシと。」
篠原さんの顔を見た
「 え? 」
「 いや、なんか。吉野さん、最近暗くない?(笑) 」
暗い … かな
「 ごめん(笑) ハッキリ聞き過ぎ?(笑) 」
ビールをゴクゴク飲んで
仕事終わりのビールは旨いなー!と笑った
私もつられて笑った
「 飲みなよ(笑) 仕事が終わった後のビールは最高だよ?(笑) 」
表情筋がよく動くから
顔全部で思い切り楽しそうに笑うから
見てるだけで私も笑ってしまう
「 終電までまだ時間あるからしっかり飲んで食おう(笑) 」
「 私お酒控えてたんですけど1杯だけ(笑) 」
「 君はさぁ~ 優しーい勧め方だと遠慮するだろ?
このだし巻き卵、旨っ! 食べてみ?(笑) 」
… え?
「 どうして、、」
わかったのかな 私の性格
「 二年も同じ部署で一緒に働いてたら大体わかるでしょ(笑) 」
行さんとは三年も一緒に暮らしてるけど
優しく勧めるタイプだよ
君が決めていいよ って
私の意思を尊重する人
行さんがこの人みたいに
少し強引なくらい引っ張っていってくれるタイプだと私も違ったのかな …
あっダメダメ! 比べたらダメ!
それにそれじゃ他力本願じゃない
「 おかわり来た来た! 」
ニカッと笑って篠原さんはもう2杯目のビールに口をつけた
相当ビール好きなんだなぁ(笑)
私もビールを飲んだ
ほんと久しぶり
「 美味しい … (笑) 」
篠原さんの笑顔が、でしょ!?と言ってる
会社でもいつも元気で面白い篠原さん
一緒にいると自然と明るい気持ちになる
「 みんな気にしてたんだけどさ。吉野さん結婚やめたの? 」
この人は 他の人が聞いてこないことを
本当にストレートに聞いてくる
「 一応延期 … (笑) 」 苦笑いになった
「 一応延期? 」
「 あ、えーっと、、いろいろ事情がありまして、少し先に延ばしただけです(笑) 」
「 ふぅん … 」
焼き鳥に口に入れモグモグしながら
何か考えてる
「 仕事中はそんな歯切れ悪くないのに。
あっ、もしかして俺セクハラ発言した?モラハラだった?
ごめん(笑)
つい気になったらストレートに聞いてしまうんだよな、俺。
その内 処分されるかな(笑) 」
「 そんな、セクハラだとは思ってないです(笑) 」
「 良かった(笑) 腹減ってるだろ? もっとちゃんと食え!
最近、ずっと顔色悪いし痩せてきたんじゃない?
よし!次は何注文するかなぁ。 何でもいける? 」
メニュー表を広げた
あぁ 篠原さんのこのさっぱりした気さくな性格
気持ちが楽になる
病気のこと
公にしてないから知らないもんね
篠原さんは勧め上手だから
結局 私はビールを2杯も飲んでしまった
店を出て駅まで一緒に向かった
久しぶりのアルコールで
歩くと酔ってるのがわかる
足取りもふわふわする
「 仕事終わった後の1杯が何より旨いんだよなぁ(笑) 」
1杯? 中ジョッキで4杯は飲んでたよ?(笑)
「 ふふっ(笑) 飲むと更に陽気ですね(笑) 」
「 いつもと変わんないでしょぉ? あはははっ(笑) 」
酔うと笑い上戸の度が増すんだなぁ(笑)
やっぱりどうしてもつられ笑いしてしまう
「 はははっ(笑) 」
私もこんなに笑ったの久しぶり
行さん
もしまだ起きてたら心配してるかな …
スマホを取り出して確認した
でも LINEも電話も入ってなかった
ーー 急に殺伐とした現実に引き戻された
「 (彼氏) 心配してた? 」
「 いえ … 何も来てないです 」
「 … なんだ。やっぱカレシと上手くいってないじゃん。
んー、あのさ! カレシといて気負いせず自然体でちられて、幸せだなぁとか、思う?
もし思えないなら … 」
「 思えないなら? 」
「 結婚は “ 無し ” だな。」
胸にチクッと刺さった
「 “ 無し ” ですか、、」
いつもの陽気な篠原さんの表情に変わった
「 そりゃーそうでしょ?(笑) そんなの一生続かないでしょ? いつかは必ず疲れてくる。 」
ちょうど駅についた
「 じゃ、また月曜!お疲れさん!(笑) 」
「 あ、お疲れさまでした 。」
片手を軽く上げて満面の笑顔で駅の雑踏の中に消えていった
行さんの笑顔が浮かんだ
最近 … 笑顔を見てない
マンションの前に着いて時計を見ると
もう0時半を回っていた
早朝ジョギングをしている行さんはいつもなら既に寝てる時間
鍵を開けて静かにドアを開くと
まだ部屋の灯りがついていた
「 ただいま。まだ起きてたんだね 」
寝ててくれれば良かったのに と内心思った
その方が気が楽だった
連絡もなく遅くなって怒ってはいないかと
彼の顔色を伺う
「 遅かったね。晩飯外で食べてきた? 」
その声と話し方が少し冷ややかに感じた
「 あ、うん。職場の人と仕事帰りに。」
「 そう。メール無かったから心配した。」
心配してたような口調じゃない
「 ごめんなさい … 」
「 最近仕事大変そうだったし。気晴らしになった? 」
行さん …
「 うん。じゃあ お風呂入るね。 」
「 ん 。」
メイクを落としてお風呂に入った
「 はぁ~ 」
辛い …
私は ここで独り泣く習慣がついた
お風呂から出ると行さんはもう寝室に入る所だった
「 先に寝るから。おやすみ。」
あ …
「 待って。」
とっさに引き留めてしまった
寝室のドアノブを開きかけた彼が私の方を見た
「 え? 」
どうしよう
引き留めて私は何をいうつもりだったのだろう
「 なに? 」
「 何でもない … 」
「 … じゃあ寝るから。 おやすみ。」
一瞬悲しそうな表情をしたような …
気がした
ドアが閉まった ーー
閉まったドアが
心の扉が閉ざされたように思えて
辛い …
ーーー
それから翌週の手術日
手術前日からの入院にも付き添ってくれた
完全看護の総合病院だから行さんが泊まることはできない
入院手続きから主治医や看護師さんからの説明なども
一応私の婚約者だから “ 身内 ” として
きちんと対応してくれた
それはまるで “ 長年連れ添った夫 ” のような感じだった
本来なら結婚前ならラブラブな時期
でも私達は到底そうは見えなかっただろう
術後も順調に回復してきて
ゆっくりと体力も戻ってきた
なにより
子宮を取らなくて済んだことが何よりだった
これで行さんへの負い目にも似た思いが晴れて軽くなった
でも …
行さんの素っ気なさは変わらなかった
“ 今夜、会社の子の付き合いがあって遅くなるかも。”
LINEが届いた
会社の子 … ?
子って … 年下かな
どこに行くの?と問うと
ライブハウス。ヴォーカルしててライブを見に行く約束してたの忘れてたから。と返ってきた
私は
連れていってくれないんだ
行さんは以前から会社の人に私を会わようとはしなかった
仕方ないよね …
また返信が入った
『 一緒に行く? 』
えっ!?
『 行く! 』
嬉しくて即答したら場所と時間が送られてきた
ーーー
待ち合わせ場所に向かうと
もう行さんは先に着いていた
「 行こうか。」
ふと背中に触れる癖は変わってはいない
「 行さんの会社の人と初めてお会いするから少し緊張する(笑) 」
「 あぁ、そうだったな。」
考え事をしているような生返事が返ってきてそのまま黙ったまま歩く
行さんの手をチラッと見た
「 手を繋いでもいい? 」
「 … ん? え? 」
聞こえなかったようだった
何度も言うのが恥ずかしくて
「 なんでもない(笑) 」
そう誤魔化した
「 どうして “ なんでもない ” でごまかすんだ。」
聞こえてたことが恥ずかしい
行さんから手を握ってきた
ドキドキして
嬉しい
「 君から言うなんて、、ちょっと驚いただけだ。」
口を固く閉じたけど
前を向く優しい眼差しに見えた
暖かくて大きな手
綺麗で長い指が私の手を覆った
「 私のこと 、、」
「 あの店だよ。」
看板を指差した
好き?って聞こうしたんだけど
着いてしまった
年期の入った店の扉を開くと
結構お客さんが入っていてもうライブは始まっていた
カウンターの入口近くの席に座った
歌っている女性が会社の人 …
なんだかセクシーな人だな
注文を取ってくれたお店のマスターが聞いてきた
「 あなたは、ゆみちゃんの親戚? 」
ゆみちゃんとはヴォーカルの人のことだった
違うと答えると 逆に少し驚いた表情をした
なんとなく
似てるかもしれないけど
舞台にいるあの女性の方がずっと輝いていて綺麗
行さんはずっと女性を見ている
というより 見つめている
女性は行さんに気付き
たまに行さんに視線を向けた
ただ それだけのことなのに妬けてしまう
怪しい関係じゃないから私を連れて来たんだろうし
そんなことぐらいで気にしないようにと
思ってはいたんだけど …
「 そろそろ出ようか。」
「 あの方にご挨拶しなくてもいいの? 」
「 ん … いいんだ。 」
店を出て
ライブの感想もなく
黙って歩く行さんの少し後ろを歩く
見上げる程 身長差のある彼の背中は
少し寂しそうに見えた
「 飯食って帰るか。」
チラッと私に振り返った行さんは
穏やかな表情をしていてほっとした
「 そうだね(笑) 」
食事をしながらも
ライブの感想を話さないのが不自然に感じる
私から話しかけてみた
「 さっきのライブ良かったね(笑) 同僚の方、凄く上手いし。当たり前か(笑) ヴォーカルだもんね! 」
「 そうだね。良かった。会社での印象と随分違っていたから別人みたいに見えたけど。」
少し微笑みながらそう言った
「 会社ではどんな感じの方? 」
「 とてもおとなしくて固い感じだな。あまり笑わないし、誰とも親しい感じはなくてプライベートが見えない、」
そう言いかけて話を変えてきた
「 君に似てるだろう? 容姿が(笑) 」
え?
「 似てた? 」
「 あぁ、そうか。そうだな。今日はライブ用だったから似てないか(笑) 普段は似てるんだよ。」
「 そうなの? そういやマスターさんにも親戚かと聞かれたなぁ(笑) 」
「 きっとマスターも似てると思ったんだろう(笑) 」
久しぶりに前の穏やかな行さんだ
ああ、、久しぶりに会話らしい会話をしてる
嬉しい
「 行さん、あの、聞いても良いかな、、 」
「 なに? 」
「 行さんなんだかあまり笑わなくなった気がするんだけど … どうして? 」
本当は どうして素っ気なくなってしまったののか知りたい
「 そう、かな。」
それまでは私を真っ直ぐ見ていた視線が反れた
気まずい空気になった
「 私達 冷めちゃった? 」
いつも心の中で思っていたこと
ゆっくり私に視線を戻した
その視線は少し厳しいものだった
それが嫌な予感をさせてた
心臓の鼓動が早くなってくる
「 出よう。」
そう言って立ち上がった
ーーー
店を出ると帰る方向とは違う方向に向かって歩きだした
「 どこに行くの? 」
その問いかけにも答えてはくれず
隅田公園の川沿いを歩いた
「 理奈ちゃん。病気も回復したよね。」
少し前を歩く行さんの足が止まった
「 えっ? うん … 」
「 僕が … “もう君への気持ちが冷めた” と言ったら? 」
背中を向けたまま問いかけてきた
まさか …
行さんが?
「 さっきの女性に恋をしたと言ったら? 」
「 えっ …? 冗談 … 」
… 今までずっと私だけを見て
私のことが大好きだとわかる愛情を沢山注いでくれていた行さんが
他の女性を … ?
「 君の病気も改善したことだし、君はもう何の気兼ねもなく誰ともでも恋愛も結婚もできるだろう?」
肩越しに冷たく言う行さんは
見たこともない他人の背中に見えた
行さんがそんなこと
言うなんて ーーー
想像してなかった
足から力が抜けるような感覚と
見える風景が知らない風景のように見えて
想像してなかった
足から力が抜けるような感覚と
見える風景が知らない風景のように見えて
現実じゃないように錯覚する
急に目頭が熱くなって涙が溢れ流れ出した
「 なんで … 急にそんな 」
私を一切見ようともせず
川沿いの柵に手をついて河を眺めている
「 なんでって 、理由はわかっているんだろう?
いつだって君は自分の本心を言わず隠していた。君が何を考えてるかわからなかったよ。
それって僕は信頼されてなかったということだよな。
僕は努力してきたつもりだった。
頑張ったけど 君のことはわからないままだった。」
確かに行さんは努力してくれたことも知ってる
私は何も自分を変えることができなかった
でも、でも …
「 そのままの君でも良いと思ってたよ …
でもやっぱり無理だった。」
過去形で話す行さんの言葉
一言一言が胸に突き刺さる
「 言いたいことは? 何もないのか? 」
それって僕は信頼されてなかったということだよな。
僕は努力してきたつもりだった。
頑張ったけど 君のことはわからないままだった。」
確かに行さんは努力してくれたことも知ってる
私は何も自分を変えることができなかった
でも、でも …
「 そのままの君でも良いと思ってたよ …
でもやっぱり無理だった。」
過去形で話す行さんの言葉
一言一言が胸に突き刺さる
「 言いたいことは? 何もないのか? 」
私に視線を向けた
瞳が潤んでいるように見えるけど
声と表情は冷たい
「 私は、、 」
“ 別れたくない ”
その言葉が … なかなか出せない
静かに私の言葉を待っている
20分近くは二人の沈黙は続いただろう
「 やっぱり君はそういう人なんだよな。
大切なことや本当の気持ちを伝えてはくれない。」
そう言うと溜め息をついた
「 もうダメだな。 僕達、もう別れよう。」
「 別れたくない!! 」
やっと言葉が出た
それから堰を切った水のように想いが
それから堰を切った水のように想いが
涙と共に溢れ流れはじめた
言葉が上手く出なくて
話は支離滅裂だったけれど
行さんに愛されて幸せだったことや
素っ気なくなって寂しかったこと
今夜 少し嫉妬したことや
恵美のことで嫉妬して悩んだこと
子供の頃から嫌なことも我慢して言わずにやりすごす癖がつき
なかなか言いたいことも、感情を表すことも苦手になったこと
そんな自分が嫌いなことーー
本当は ずっとずっと
行さんが思っているより私が行さんのことを愛しているということ
時間がかかったけれど
行さんに愛されて幸せだったことや
素っ気なくなって寂しかったこと
今夜 少し嫉妬したことや
恵美のことで嫉妬して悩んだこと
子供の頃から嫌なことも我慢して言わずにやりすごす癖がつき
なかなか言いたいことも、感情を表すことも苦手になったこと
そんな自分が嫌いなことーー
本当は ずっとずっと
行さんが思っているより私が行さんのことを愛しているということ
時間がかかったけれど
彼はずっと黙って聞いてくれた
「 もう、、行さんは、私に、冷めちゃったかもしれないけど、私は、私は、、 」
突然 ふわっと温かくなった
包み込むように抱き締めてくれた
「 待ってた … 待ってたよ。やっと心の扉が開いた… 嬉しい … 」
「 … えっ 」
「 時間、かかりすぎ(笑) 」
それって
じゃあ …
「 最後の賭けだったんだぞ!(笑)
“ 別れよう ” って言葉出すの。
わかったって言われたらと考えると恐かった。」
… 胸が痛んだ
「 じゃあ … 別れようって話は … 」
私の目を覗き込んだ行さんの優しい微笑み
目は泣きそうに潤んでいた
「 別れるなんて本気で思ってないよ(笑) 」
「 ひどい … 」
また号泣した私の涙をコートの内ポケットに入れていたハンカチで優しく拭った
「 ごめん、殴ってもいいよ(笑) 」
「 そんな、ぶたないよ!」
「 これからは溜め込まず、抑え込まず、必ず話して欲しい。その都度!だよ。約束してくれ。」
「 ごめんなさい。約束 … 」
大きく暖かい両手で頬を包まれた
「 冷たくするの、本当にキツかった。
風呂で君が密かに泣いているのを知った時
胸が張り裂けそうだった。
それが毎晩だとわかった時は本当に辛くて悩んで葛藤した。
“ ごめん、本当は違うんだ! ” と言いたくなる衝動を抑えて、僕も君が風呂に入ってる時、毎晩泣きたい想いだった。」
泣きそうな瞳で微笑む
「 行さん … 」
行さんのそんな想い
全くわからなかった
「 ずっとこうして触れられなくて我慢してた。
でもね、毎朝必ず寝てる君に気付かれないよう抱き締めたりこっそり何度もキスしてた(笑)
はははっ(笑) 知らないだろう?(笑) 」
その姿を想像してキュンとした
気付かなかった …
「 寝てる時にしかできなかったからな(笑) でもこれからは … 」
行さんの唇が私の唇に何度も触れ
次第に求めてくるような熱いキスに変わった
身体が熱くなるような感覚が久しぶり …
行さんは “ はぁ~ ” と大きく深呼吸をした
「 コート着てて良かった … 」
「 えっ 」
「 いや、さぁ!早く帰ろう!で、帰ってイチャイチャしたい。もう我慢したくない(笑) 」
私が笑うと目を大きくさせた
「 なんだなんだ? 笑い事じゃないぞ!もう何ヵ月もずっと抱きたい衝動を抑えて我慢してたんだからなっ!
それも十分な努力と認めてくれるだろう!? 」
拗ねるように口を尖らせて言うのが可愛くてまた笑ってしまった
「 うん、うん(笑) 」
「 浮気なんてしてないし、他の女性に気持ちが動いたとか、そういうことは一切無いってこと … 」
恥ずかしそうに視線を反らして頭をかいた
「 … わかるだろう? 」
行さんも身体が反応していたようだった
年齢の割りに照れ方がとても可愛い行さんが愛おしい
「 そうだね(笑) 」
「 あ、理奈ちゃん!ホテル入ってみる? 」
「 急いで帰るんでしょ?? 」
「 (そう) だな … (笑) 」
手を繋いで駅に向かった
金曜日の夜だから駅周辺は人が多かった
いつもなら人が多い所では繋いだ手を自然と離す
自然と手を離そうとしたら
離さないよう強く握り返してきた
「 もう離さない。離したくない。」
真っ直ぐ前を向き
低い声で呟いた行さんの綺麗な横顔は
いつもよりも男らしく見えて
バーで初めて手を握られた時の照れくさい想いが甦る
やっぱり行さんが大好き
愛してる
その夜は
愛を確かめ合って
幸せで眠れなかった
ーーーーーーーーーーー
「 最後の賭けだったんだぞ!(笑)
“ 別れよう ” って言葉出すの。
わかったって言われたらと考えると恐かった。」
… 胸が痛んだ
「 じゃあ … 別れようって話は … 」
私の目を覗き込んだ行さんの優しい微笑み
目は泣きそうに潤んでいた
「 別れるなんて本気で思ってないよ(笑) 」
「 ひどい … 」
また号泣した私の涙をコートの内ポケットに入れていたハンカチで優しく拭った
「 ごめん、殴ってもいいよ(笑) 」
「 そんな、ぶたないよ!」
「 これからは溜め込まず、抑え込まず、必ず話して欲しい。その都度!だよ。約束してくれ。」
「 ごめんなさい。約束 … 」
大きく暖かい両手で頬を包まれた
「 冷たくするの、本当にキツかった。
風呂で君が密かに泣いているのを知った時
胸が張り裂けそうだった。
それが毎晩だとわかった時は本当に辛くて悩んで葛藤した。
“ ごめん、本当は違うんだ! ” と言いたくなる衝動を抑えて、僕も君が風呂に入ってる時、毎晩泣きたい想いだった。」
泣きそうな瞳で微笑む
「 行さん … 」
行さんのそんな想い
全くわからなかった
「 ずっとこうして触れられなくて我慢してた。
でもね、毎朝必ず寝てる君に気付かれないよう抱き締めたりこっそり何度もキスしてた(笑)
はははっ(笑) 知らないだろう?(笑) 」
その姿を想像してキュンとした
気付かなかった …
「 寝てる時にしかできなかったからな(笑) でもこれからは … 」
行さんの唇が私の唇に何度も触れ
次第に求めてくるような熱いキスに変わった
身体が熱くなるような感覚が久しぶり …
行さんは “ はぁ~ ” と大きく深呼吸をした
「 コート着てて良かった … 」
「 えっ 」
「 いや、さぁ!早く帰ろう!で、帰ってイチャイチャしたい。もう我慢したくない(笑) 」
私が笑うと目を大きくさせた
「 なんだなんだ? 笑い事じゃないぞ!もう何ヵ月もずっと抱きたい衝動を抑えて我慢してたんだからなっ!
それも十分な努力と認めてくれるだろう!? 」
拗ねるように口を尖らせて言うのが可愛くてまた笑ってしまった
「 うん、うん(笑) 」
「 浮気なんてしてないし、他の女性に気持ちが動いたとか、そういうことは一切無いってこと … 」
恥ずかしそうに視線を反らして頭をかいた
「 … わかるだろう? 」
行さんも身体が反応していたようだった
年齢の割りに照れ方がとても可愛い行さんが愛おしい
「 そうだね(笑) 」
「 あ、理奈ちゃん!ホテル入ってみる? 」
「 急いで帰るんでしょ?? 」
「 (そう) だな … (笑) 」
手を繋いで駅に向かった
金曜日の夜だから駅周辺は人が多かった
いつもなら人が多い所では繋いだ手を自然と離す
自然と手を離そうとしたら
離さないよう強く握り返してきた
「 もう離さない。離したくない。」
真っ直ぐ前を向き
低い声で呟いた行さんの綺麗な横顔は
いつもよりも男らしく見えて
バーで初めて手を握られた時の照れくさい想いが甦る
やっぱり行さんが大好き
愛してる
その夜は
愛を確かめ合って
幸せで眠れなかった
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